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その男とは森で知り合った。
短く刈り上げた金髪と、こぼれるような白い歯が印象的な青年冒険者。
彼が魔獣の群れに蹂躙されかけたところを、私が救ったのが出会いのきっかけだった。
それからというもの、私たちは互いの宿屋の部屋を行き来し、夜更けまで語らうほどに親密な時を重ねた。
そんなある夜、彼は真剣な眼差しで切り出してきた。
「みんな、君の仮面の下ばかり噂しているね。でも僕は、たとえその下にとんでもない醜女が隠れていたとしても気にしない。僕は君の心の美しさに惹かれたんだ。……君の素顔が見たい」
その言葉は、「この人なら、私の顔を受け入れてくれるかもしれない」という期待を抱かせるのに十分だった。
細く美しい指で、震えながら銀の仮面を解く。
露わになった、暗い空洞。
彼は顔色一つ変えなかった。
驚きも、嫌悪も、同情すら見せず、ただ穏やかに微笑んだ。
「……見せてくれてありがとう。また明日の晩も、ゆっくり飲もう」
その夜、ベッドに入ったアリアナの胸は、数年ぶりの高鳴りに支配されていた。
(……ああ、あの方なら。あの方だけは、私を一人の女性として見てくれる)
顔の下半分を布団に埋め、抑えきれない笑みが漏れる。
今この瞬間だけは、どこからどう見ても恋に落ちた美しい乙女そのものだった。
◇
しかし、翌晩。
いつもの酒場に彼の姿はなかった。
怪訝に思う私に、宿の女将が非情な事実を告げる。
「ああ、あの男の人かい? 夜明けと同時に、大急ぎで街を発って行ったよ」
部屋に戻った私は、糸が切れたように泣き崩れた。
「ああ、私は馬鹿だ。やっぱり、人間は中身なんて見ていない。……見た目がすべてなんだ」
鼻のない私は、鼻水を啜ることさえできない。
ポッカリと開いた穴からは、止めどなく醜い液体が垂れ流され続けた。




