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冒険者になってしばらく経った頃。
酒場の隅で、私は仮面の口元だけを開け、スープを啜っていた。
「おい、あの口元を見ろよ。絶対、絶世の美女だぜ」
「ああ。隠されてると余計に見たくなるな。きっと、とんでもないお宝が拝めるぞ」
人は、欠落した部分を勝手に想像で補完する。
その仮面の下に、暗い穴が空いているとは夢にも思わずに……。
不意に、背後から無遠慮な手が伸びた。
「……おい、ちょっと面拝ませろって!」
抗う間もなく、銀の仮面が乱暴に剥ぎ取られた。
正面に座っていた男が、食べかけのパンを落とし、口を開けたまま硬直した。
「どうした? 声も出ないほどの美人だったか?」
仮面を奪った男が、ニヤつきながら私の正面へ回り込む。
視線が交差した瞬間、男の顔から血の気が引いた。
「う、うわっ!!」
男の喉から漏れたのは、感嘆ではなく、生理的な拒絶だった。
「あ……ああ、なんか、済まねえ。……そんなつもりじゃなかったんだ」
その謝罪は、どんな攻撃魔法よりも深く、私の尊厳を切り刻んだ。
男は、怯えた手つきで仮面を差し出してきた。
「……期待外れで申し訳ありません。貴方の想像していたお宝は、とうの昔に失われて、ここにはもう、見るに堪えない残骸しか残っていないのです」
私は仮面を奪い取ると、男たちの視線を振り払うようにその場を後にした。




