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第68話 あれはリックではありません……

16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗りくとは、

勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。

自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、

人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。

 突然空間が歪む。

「み~つけた」

 破壊神――シヴァ。


 その目は、真っ直ぐにサイモンへ向けられていた。

「お前……見た目変わって、わかんなかったよ」

 シヴァは首を傾げながらサイモンを眺める。

「ふ~ん……邪気も消えちまったんだな」

「……破壊神……」

 サイモンの声が僅かに震える。

「どうした?今日はシヴァ様と呼ばないのか?

 まあ……〝様〟はいらんけどな……」

 颯斗が一歩前に出る。

「師匠から離れろ」

 シヴァの視線が、ゆっくりと颯斗へ向く。

「なんだお前は?」

 しばらく眺め――

「ああ……お前か」

 思い出したように笑った。

「なんだっけ……ああ~……〝リック〟だったか?」

 どうでもいいように言った。


「お前、どうやって狂戦士(バーサーカー)化から逃れたんだ?

 あの時、確か……」

 颯斗の目が鋭くなる。

「お前……見ていたのか?一体どこから?」

 シヴァは軽く肩をすくめた。

「ああ、サイモンの目を通してな」

「お前、ずいぶん流暢に喋るじゃないか?

 〝グギャ~〟とかしか言わないのかと思ったよ」

 シヴァは軽く肩をすくめた。

「お前もそうじゃなかったか?

 ……そうか……その娘だったな?」

 視線がエレーナへ向いた。

「俺ですら、解けなかった狂戦士(バーサーカー)化。

 お前が一体どうやって?興味深い……」

 シヴァはニヤリと笑う。

「連れて帰って色々実験でもしてみようか?」

 エレーナに向かって歩み寄るシヴァ。

 颯斗は一切の躊躇もなく、

 破壊神に飛び掛かる。


 〝ドッカ~ン‼︎〟

 勢いのまま、その手を首に絡ませ、

 破壊神と共に、空高く舞い上がる。

「カイゼル!お前の異空間借りる!」

 そう叫びながら、

 颯斗は破壊神と共に消えた。


「リック……

 あれ程1人では行くなと言うたのに……」

「颯斗……」

「リック……」

 誰もが、空を見上げたまま言葉を失った。


ーーーー


〝ドッカァァァン!!〟

 凄まじい衝撃音。

〝ビリビリビリビリ……〟

 空気が震え、大地が微かに揺れた。


「なんだこれは?」

 居合わせた全員が顔を見合わせる。


「カイゼル」

 創造神が振り向く。

「おぬしの異空間は、どこかでこの世界に通じておるのか?」

「いえ、創造神様」

 カイゼルは首を振る。

「俺が作った、完全な異空間です」

「なのにここまで衝撃波が届き、空気が震えるとは……」

 創造神の顔が険しくなる。

「リックは……いったいどんな戦いを?」


「創造神様。ご覧になりますか?」

「なんと!見ることができるのか?」

「はい、監視のため、魔道具を仕掛けてあります。

ただ……俺の頭の中でしか……」

「構わぬ」

 創造神がカイゼルの肩に手を置いた。

「わしが映像化しよう」


 瞑想し、魔道具にアクセスするカイゼル。

 創造神がその頭に手を乗せた。

 すると――

 空に、巨大な映像が浮かび上がる。


ーー


「なんだ……誰もいないのか?」

「うわっ!雷が横に走った」

「いや……これは雷ではないぞ。

 何かが衝突した衝撃……

 ほれまた……」

 雷のような衝撃が無数に走りはじめる。

「いったい何を見せられているんだ?

 俺たちは……」


「わからんのか?」

 低い声……

 いつのまにか威風堂々とした男が後ろに立っていた。

「おお……第5宇宙の剣神――ローランド殿か」

「……破壊神と、何者かが戦っている。

 いったい誰なんだ?この小僧は……」

「おぬしには、この戦いが見えるのか?」

「はっきりとではないが……朧げに……」

「さすがは、()宇宙一と言われる剣神……」

「この戦いは……私が宇宙一と言われるのが、

 恥ずかしくなるほどの戦いです。

 第1の創造神様……」

「今戦っておるのは、わしの孫じゃ……

 破壊神と、戦えておるのじゃろうか?」

「〝戦えている〟?

 それどころではありませんぞ……

 破壊神の攻撃を、なんなく躱し、

 ごく自然に受け流しております。

 お互い武器も持たず……素手で……」

「破壊神も長年の封印で、力が落ちたのか?」

「逆です……」

 剣神は断言した。

「1万年前より、

 はるかに力をつけているようにみえます」

 創造神は息を呑んだ。

「そんなものとリックは、互角に戦えておると?

 神剣も持たずに?」

「信じられん……互角以上……破壊神を圧している……

 恐ろしい……」

「そんなはずは……いくらリックといえど、

 到底破壊神の域には届くまい……

 ついさっきまで神界で、

 修行していたのを見ていたのじゃぞ?」

「創造神様、あれはリックではありません……

 まるで別人……」

「おお、お前も来たのか……

 我が宇宙の剣神ラインハルトよ」

「創造神様、リックに何があったのですか?」

 視線は戦闘から一瞬たりとも離れない。

「神界で身につけたものが全て、

 一つに纏まって自然に繰り出せている……」


 空の映像に閃光が走った。

 〝ドォン!!〟

 耳の奥まで届く、

 雷のような衝突音。

 しかしそこには雷など存在しない。

 あるのは――

 人と神の、超高速の衝突。


「この短時間で……」

 ラインハルトの声が震える。

「リックの身に何が起きたのか……」


 ーーーー


「動きが止まった……いた……

 あれはリックと破壊神……

 本当だ……神剣を持っていない…… なんで?」

「お嬢さん、彼は剣を使うのかな?」

「はい、幼少の頃から剣一筋です」

「なるほど……それで合点がいく……」

「どういうことじゃ?」

「いえ、創造神様……破壊神は元は武神。

 それに比べて、

 彼の動きは武の動きではなかった……

 剣の者だとすれば合点がいきます。

 私もそれですから」

「剣神――ローランド様、

 なぜリックは剣を使わないのでしょう?」

「分からんな……だが……」

「……?」

「ものの数十分……無心で拳を合わせる内に、

 武の動きを自分のものにしている……

 それが、楽しくてしょうがない……

 そう言う顔をしておるな……」

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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