第66話 ね♡
16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗は、
勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。
自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、
人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。
目を瞑り、胸の前で手のひらを上に向ける。
最大の魔力を手に集める颯斗。
両手が光だしそれが全身を覆う。
長い髪、蒼の瞳。又先程の輝く姿に戻った。
〝バァッ!!〟
手を広げる。
颯斗から溢れ出した光が巨大な霧を包囲する。
程なく光は無数の魔方陣に変わり、
それが眩い光を放ち始める。
「ブラックホール……」
魔方陣が黒い霧の中心に向かって進み出す。
圧縮される黒い霧。
霧の内部で稲妻が暴れる。
邪気が絶叫する。
颯斗の手がわずかに震える。
そしてさらに力を込める。
圧縮……更に圧縮……
巨大だった瘴気が、山から岩へ、
岩から拳大へ、
拳から米粒へ。
ついには、l針の先ほどに圧縮。
次の瞬間ーー
〝ズッドォォォォン!!〟
光の輪が宇宙のように広がる。
衝撃波が地上を揺らす。
〝キャァ〜〜!〟
颯斗が振り向く。
「やばっ!」
「颯斗!何やってるのよ!」
アステリアが叫ぶ。
「あんなに圧縮して爆発させたら、
どうなるか分かるでしょ?
ビックバンを知らないの?」
「あっ……ごめん、母さん……
でもビックバンって……そこまでの事じゃ……」
「何言ってるの?一つ間違えたら、
この星どころか、
この世界が消えていたかもしれないのよ?」
「まあ、その位で……」
創造神が苦笑する。
「リックも予想しなかったんじゃろ……
まあ、何かあったら、ワシが元に戻すからの」
「……お父様、孫に甘すぎます……」
「じいちゃん、ごめん……」
「邪気だけを消滅させるとは……見事じゃったぞ」
「へへへ……」
空が澄む。
瘴気は消えた。
邪神の身体から黒は抜け落ち、
ただの――疲れ果てた賢者が残った。
神を殺さず、瘴気だけを消す。
それが新たな神剣の真価。
〝ウッ……〟
サイモンの身体が微かに震える。
「ちょっと……邪神が復活するんじゃ?」
「大丈夫」
颯斗はニコリとわらい、言う。
「あの人もう邪神じゃないから。
伝説の大賢者サイモンだよ」
「「「「「「エェ〜〜〜〜!」」」」」」
「ちょ……リック……大賢者が邪神だったの?」
〝ウッ……〟
頭を上げキョロキョロするサイモン。
アステリアと目が合った。
「……これは……」
目の前のアステリアを見て、息を呑む。
「女神アステリア様……お久しぶりでござい――」
そこで言葉が止まる。
「……私は……なんということを……」
手が震える。
「聖女達を……多くの命を……」
アステリアが優しく微笑む。
「久しぶりね?サイモンちゃん。
貴方、乗っ取られていた時の記憶があるようね?」
「はい……暗い……動けぬ空間から……
朧げに、全て……」
声が、かすれる。
「私は……自分を……止められなかった……」
「大体の事は理解しているのね?」
「私は……私は……」
颯斗が一歩前に出る。
「気に病まないでください、師匠」
サイモンが顔を上げる。
「師匠……?」
「貴方が浄化し続けてくれなければ、
この世界はもっと早く滅びていたでしょう」
颯斗は、静かに大賢者サイモンを見つめる。
「全ては人々の増長です。
あなたは最後まで、世界を守ろうとしていた」
サイモンの頬に一筋の涙が……
「……君は」
まじまじと颯斗を見る。
「そうだ…… 覚えております。
あの神々しいまでのお姿……
あなた様は……アステリア様の御子息……」
「師匠に攻撃をしてしまい申し訳ありませんでした。
体は大丈夫ですか?何処か怪我でも……」
「神よ、体は……」
自分を見回す。
「大丈夫のようです。
お気遣いありがとうございます……」
「ねえ、貴方達、なんか会話が変よ?」
「そう?」「そうですか?」
「そうよ。
お互いがお互いに……
下の者が上に対して敬う様な敬語?
そんな話し方だから……」
「そう?」「そうですか?」
「やめなさいよそれ……」
「そうかも……だったら師匠……
この姿の時だけでも良いので、
弟子に話す感じで頼みます。
貴方は俺の師匠なのですから」
「そうです……ではなく……そうかね?
分かったよ我が弟子リクト……」
嬉しそうな颯斗。
「ん?弟子?私はいつ君の師匠になったんだろ?
そんな記憶はないのだが?」
「選ばれし者の塔で、ホログラムを残したでしょ?」
「あそこに行ったのかね?
君だったら確かに選ばれるだろうが……」
「あそこで、古代魔法を師匠から、受け継ぎました。
だから貴方は俺の師匠なんです」
「直接ではないし……神を弟子というのも……」
サイモンが困った顔をする。
「ふぉふぉふぉ……大賢者とやら、良いではないか?」
創造神が笑う。
「リックがそうしたいと言っておるのじゃから」
サイモンの視線が創造神へ移る。
「その崇高なるオーラー……
あ、あなた様は……もしや……創造神様……」
「ん?」
創造神は肩をすくめる。
「ワシはリックの爺さんじゃよ?」
「ね、じいちゃん♡」
「ね、リック♡」
「……貴方達……神の威厳が……」
「良いじゃない?家族なんだから。ね、母さん♡」
「人前では……ま、良いか……ね、リック♡」
「うん♡」
「「「「ハハハハ……」」」」
「ハハハハ……ん?どうしたエレーナ?」
「……何あれ?」
エレーナの顔が一瞬で暗くなる。
空に何か動く影が……
見つめるエレーナ。
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