第65話 狂戦士ーバーサーカー
16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗は、
勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。
自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、
人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。
「さぁて……」
颯斗は蒼き刃を肩に担ぐ。
「この剣がお前に何をもたらすのか――試してみようか」
颯斗がゆらっと歪んだ。
次の瞬間、もう邪神の目の前にいるー
〝ズシャッ!〟
〝グワァ〜〜!〟
邪神の絶叫。
颯斗はわざとらしく首を傾げる。
「何だ?神でも痛みは感じるのか?」
「痛みなど……感じるはずが……!」
〝ズシャッ!〟〝ズシャッ!〟〝ズシャッ!〟〝ズシャッ!〟
四方八方から斬撃。
〝グワァ〜〜!〟
あまりのスピードに、
周りのクローン軍団は一歩も動けずにいた。
「や、やめろォォォ!!」
「ハハハ……やっぱ痛いんだ?」
「バカめ、よく見よ!傷一つ付いておらぬ!」
確かに、肉体は裂けていない。
「貴様はただ、私が痛みに苦しむのを見たいだけなのか?
悪趣味であろう」
「あ、認めた……やっぱ痛いは痛いんじゃない。
それになんか、血飛沫みたいの飛び散ってるし……
血……じゃないな……続きいくよ?」
〝ズシャッ!〟〝ズシャッ!〟〝ズシャッ!〟〝ズシャッ!〟
〝グワァ〜〜!〟
邪神の動きが次第に鈍る。
「ん……わ、私は……?」
突然あたりを見回す邪神。
「ま、まさか……融合した神剣の効果で、正気を?」
無防備に歩み寄る颯斗。
「き、君……こ……これを……」
邪神が手を伸ばす。
「えっ?何?」
「こ……これを……喰らえ〜!!」
手のひらを颯斗の眉間に叩きつける邪神。
〝パァンッ!!〟
透明な結晶体が眉間に貼り付く。
〝クッ……クッ……グギャァァァァ〜〜〜〜!〟
突如、頭を抱え叫びだす颯斗。
「グァ〜ハハハ!油断したな?
これでお前も終わり……」
空中でのたうちまわる颯斗。
「リック……どうしちゃったの……?」
顔を歪めるエレーナ。
「何だあの苦しみようは……」
ジェブは息を呑んだ。
一瞬、髪の長さが戻り、いつもの姿に戻る颯斗。
しかし今度は顔面に黒い紋様が浮かぶ。
その瞳が濁る。
〝ハアハアハアハア…………〟
珍しく荒い息づかい。
「よ〜し、私の声が聞こえるか?」
邪神が囁く。
「地上の人族……軍隊を殲滅せよ」
〝ギィャァァァ〜〜〜〜!〟
叫びとともに颯斗が消える。
次の瞬間、クローン軍団へ突撃。
見境なく襲いかかる颯斗。
狂ったように不規則にジグザグに……空間を裂く。
「そっちではない!向こうの軍隊にだ!」
〝グッギャァァァァ〜〜〜〜!〟
その声は颯斗には届かない。
しかし、個々がS級に匹敵する軍団も、
落ち着きを取り戻す。
黙って、やられはしない。
次から次へと颯斗に襲いかかりはじめた。
幾千もの剣が颯斗に降りかかる。
しかし、颯斗には掠りもしない。
まるで剣の方から避けているようだ。
軍団はみるみる殲滅されていく。
「やめろ〜!そっちではない!」
邪神の命令は颯斗に届かない。
むしろ――
邪神へ向き直る。
〝グギャッ?〟
〝ズッシャッ!〟
瞬きする隙さえ与えない。
〝グワァ〜〜!〟
「く、くそ〜、まるで制御できん……」
ヤケクソ……と、ばかりに剣を振り回す邪神。
でもそれも、剣の方から颯斗を避けた。
「くっ、くそ〜なぜ刃が逸れる…… 理が拒む」
くるっと振り向き地上を見る颯斗。
狂気の瞳だ。
「おい、まさか……今度は俺たちか?」
〝グギャァグギャァグギャァ!〟
「あれって狂戦士化?まずいな……
俺たちじゃ一瞬でやられる……」
こちらに向かうかと思われたその時……
「リック〜‼︎」
我を忘れている颯斗にエレーナが抱きついた。
「あ、危ない!姫さん!」
〝グギャァグギャァグギャァ!〟
「リック!」
「グゥ?」
〝スンスン……〟
「ウゥ……良い匂い……」
「えっ?」
颯斗の瞳に、徐々に光が戻る。
「リック?」
「エレーナ?」
「正気にもだった……のね?」
「あ、俺、大暴れしてた……よね?
薄っすら覚えてる……」
颯斗は眉間の結晶を掴んだ。
〝パキッ〟
そして握り潰す。
「こいつかよ?くそ〜。ごめん……俺……」
「ううん。見て。
クローンの軍団ほぼ全滅してるわよ。
邪神ももうフラフラじゃない?」
「だ、誰が〜……フ〜ラフラだと〜?」
邪神は膝をつく。
「声までフラフラじゃないか……」
〝ズシャッ!〟〝ズシャッ!〟〝ズシャッ!〟〝ズシャッ!〟
〝グワァ〜〜!〟
颯斗が、神剣で切り裂く度に血……ではなく、
ドス黒いものが飛び散った。
ついに白目を剥き崩れる邪神。
「気を失った?こんなもんかな?」
邪神を抱え地上に戻る颯斗。
「ジェブ、この人見てて」
「まだ何かあるのか?」
「あれ……」
空高くを指差す颯斗。
「何も見えんが?ん?
空が震える。遥か雲の上、遠く。
巨大な黒霧が漂う。
「何だ……あれは……」
空に浮かぶのは大陸のような瘴気だった。
〝ズオォォォゥゥ〜〜ズゥゥゥゥン〜〜〟
「リック、何なの?あの気味悪い声?音?」
「あれが、人々の邪気が創り出した瘴気……
この人を乗っ取っていた正体だよ?」
血飛沫に見えていたものは、
大賢者に取り憑いていた瘴気だった。
「これが、神剣の本当の効果か……」
「あの遠くの空一面の霧が瘴気?
まるで空に浮かぶ大陸……
大き過ぎるわ……あんなものが放たれたら……
地上は大混乱するわ」
「あれを、古の大賢者は取り込んで浄化していたんだよ。
人々の不満と欲望が膨らみ続け、
最後は浄化しきれず、乗っ取られた……」
「えっ?今なんんて?」
それは後で……
とばかりに手のひらをエレーナに向けた。
「さて……と……」
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