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異世界創造神は女子高生  作者: 斉凛
第3章 帝国編
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戸惑いの日々と不思議な家3

 早く事件を解決したい。世界のためにじゃなく、自分の精神衛生のために。はい、私情が入ってすみません。


 翌日朝ご飯を食べてすぐエドと二人で『始原の家』に向かった。そしてパソコンの前に座って、今度は冷静に小説家になろうのサイト内を見ていく。

 すると最近頻繁に『活動報告』が更新されている事に気がついた。

 私は面倒くさがりで、今まで活動報告書いていなかったのに、不自然だ。それらを順番に見ていく。


『大災害!!! 驚きましたか? これからもっと驚く超展開になる予定だから、ヨロシク!!』


 何この頭悪そうな文。絶対私の書いた物じゃない。というかなんかなんか覚えがあるな……。……あっ!! あの厄介なストーカー信者。あいつの書く文に似てる。

 もしかしてどこからかIDとパスワードを盗み出して、サイトを乗っ取とられた? そして物語を書き換えられた。

 少なくとも大災害なんて馬鹿な設定はコイツの仕業だ。


『碧海帝国? エドガー・フォー? 私の知らない国やキャラが突然出てきた。これが小説が独り歩きするという事なのか? しかし不思議だ?』


 帝国やエドの存在に戸惑っている。つまりヤツにとっても帝国の存在は想定外なのだ。するとこの世界のすべてがヤツの手に落ちたわけではない。その後の活動報告も鬱展開に仕掛けようとして、それが軌道修正されていく事への苛立ちがにじんでいた。

 思えば旅の間にいろんな事件が起こって妨害されていたのも、こいつのせいだったのかもしれない。

 悔しくて、腹立たしい。私の不機嫌を感じ取ったように隣にいたエドが声をかけてきた。


「そろそろ休憩を取ったほうがいい。昼を食べに一度戻ろう」


 気づくとパソコン内の時計は13時をすぎていた。朝1番で来た時も大体こちらの世界の時間と一致していたから、このパソコンに表示される時間とこちらの世界の時間は連動しているようだ。


「うん。わかった。私も一度頭整理したいし。でも明日から昼ご飯持ってきた方がいいね。いちいち戻るの面倒だし」


 パソコンを終了させながら、私は混乱した頭をどうやって整理した物か悩んでいた。こういうのって誰かに相談しているうちに、自然と情報が整理されて見えてきたりするのよね。

 でも……。エドの横顔を見てため息をつく。まずネット自体を理解していないエドにそこから説明するのは面倒だ。かといって帝は忙しそうだから、気軽に相談できる相手じゃないし。

 本当はジルに話ができればな……。というかこういう時のためにジルに来てもらったんだし。


「エド。ジルと今後の事相談したいんだけど、どこまで話しても問題ないか帝に確認してもらえない?」

「わかった」


 私がのんびり昼ご飯を食べている間にさっさと確認をとってくれた。かいつまんで言うと、帝国皇族の先祖が異世界人だというのは言ってはダメ。『始原の家』についてもぼかしてあいまいに伝えて欲しい。それ以外は大体話してもOKらしい。

 意外に自由度が高くてびっくりしたが、どうやら私のいない間にジルがうまく立ち回っていたようだ。帝に気に入られて帝付きの秘書官見習をしているらしい。


 食後のお茶をジルと二人だけでとった。そしてそこで秘書官見習の経緯を聴いた。


「ちゃっかりしてるわね」

「とりあえず帝国での生活基盤が必要ですから。副業で仕事に支障が出ない程度に作家業もしても良いと仰っていただけたので」


 ジルにも私の方の事情を話した。帝国の超技術で日本とネットが繋がっているなんて、かなり無茶なぼかし方したけど、そこはジルも突っ込まずに聴いてくれた。


「なるほど。それでその地の文の心理描写は正確に明殿の心情を表現しているわけですね」

「そうなの。もう心の中駄々漏れで頭痛いわ」


 ジルはカップを置いて、何かを考えるように顎をさすりながら言った。


「失礼ながら明殿は自分が操られている感じはありますか? この世界に来る前と来た後が違うとか」

「操られている? そんなのないわよ。私は今も昔も何も変わらないわ」


 ジルは頷いてしばらく真剣な顔で何かを考えていた。そしてやっとわずかに微笑を浮かべて言った。


「たぶんそこに勝機があります」

「どういう事?」


「たとえ小説を乗っ取ったと言っても、どうやって明殿の心の中を正確に把握できるでしょうか? おそらくその乗っ取った人間は物語の一部しか掌握出来ていない。異世界からこの世界にやってきた異分子である、明殿の行動は規制されずに完全に自由なんです」


 ジルの言葉を頭の中で整理して、私はようやく納得した。確かに今私が考えている事も、する行動も私自身のものだ。それをヤツは止められない。

 帝国だってたぶん異世界人が元になっているくらいだから、ヤツが知らなくて当然なのだ。私は少し希望が見えてきて安心した。

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