戸惑いの日々と不思議な家2
「ど、どうして? ここは200年前の施設のはずでしょ! なんで現代日本とネットが繋がっているの?」
「言い伝えによれば『始原の家』は突然草原に出現し、この200年間まったく姿を変えていないそうじゃ。何故? と言われてもわからぬ。そもそも異世界の技術じゃからな。代々の帝に引き継がれているのも、ネットの使い方だけで、その仕組みはわからぬ」
それは不自然で不思議な話だった。現代日本で200年前からネットがあったはずがない。たぶんネットのある時代の日本人が家ごと異世界召喚され、家のライフラインは現代日本と繋がったまま時が止まっている。
そう考えなければつじつまがあわない。
「現状がご理解いただけたようじゃの。さてネット環境はある、しかし今まではIDとパスワードがわからなかった故、読む事しかできなかった。あなた様なら、この物語を変える事ができるのではございませぬか?」
そう言われて私はまたパソコンを見る。試しに私のIDとパスワードでログインすると、『異世界創造神は女子高生』の物語を見る事が出来た。そして物語の初めから見る。そこには私が書いた内容と全く違う物が書かれていた。
だがそれは記憶に違わぬ、この世界に来てからの私の記録だった。しかも私の一人称だ。私の心情駄々漏れだ。すべて読むのに時間がかかったが、目を皿のようにしてチェックする。
こうして客観的な目で見ると、私超逆ハーじゃない? いや、逆ハーっぽいなとは思っていたけど、文字にして読むと破壊力抜群の威力がある。これ悶絶するぐらい恥ずかしいんだけど? というか今こうして考えている事も現在進行形に駄々漏れになるの?
嫌だ−。と思わずうずくまってごろごろしたい衝動に刈られる。
「母上もこれをご覧になったのですか?」
気づけばいつのまにかエドが横にいて、ディスプレイを見て顔色を真っ青にしていた。やだ、見ないで……私の心の中を覗かないで……と思っても後の祭り。すでに見てしまったからこのような答えになるのだろう。
「うむ。今までのページはすべて読んでおる。閲覧だけならできたからのう」
それを聴いてエドは顔を真っ赤にして、頭を抱えてうずくまった。
……。
そうか……。私への告白シーンもばっちり書いてあるもんね。それを実の母親に見られたんだもんね。痛いね……。母親にラブレター見られるより恥ずかしいわ。ないわー。
自分より可愛そうな人間を見ると、妙に冷静になれる。でも全世界規模で思考内容を公開している状況に変わりはないんだけどね。
頭の中を空っぽにできればいいけれど、そんな器用にできないし、できてもそのまま状況が変わるわけではない。
なぜこの物語は変わってしまったのか? それを究明して元の正常な物語に軌道修正する。それができれば大災害を終わらせる事ができるのだ。
「というわけで、ここに毎日通っていただいて、創造神様に物語の修正をしていただきたいのじゃが、よろしいだろうか」
「了解しました……。でもちょっと衝撃が大きすぎて……今日はもう帰っていいですか?」
『始原の家』の存在。この家の環境。自分の行動思考のネット配信。そのすべてが私を打ちのめして、冷静な思考能力を奪っていた。
「無理もない。では帰るとしよう。エドガーいつまで座り込んでいるつもりじゃ?」
魂が抜けたようなエドと私を連れて、平気な顔して帝は帰っていった。この人全部知ってて今まで何食わぬ顔してたんだ……。帝、怖! そしてエド可愛そうすぎる。
私達が迎賓館にたどり着いた時には日が暮れようとしていた。そういえば昼抜きだったけど、すっかり空腹を忘れるくらいの出来事だったな……。
戻ってきた私達を見てアルとジルは心配そうな顔をした。
「何があったのだ? 二人とも顔色悪いぞ」
アルの不審そうな言葉にエドは力なく呟いた。
「世の中には知らない方が幸せな事もある」
確かにその通りだ。今まで知らなかったから普通に生活出来たけど、これからはいちいち気になって仕方なくなる。それにアルだって私に対して、恥ずかしいくらいのラブシーンを演じていた。
それを他人に見られていたとなったらショックは大きいだろう。
「うん。知らない方が幸せだね」
アルとジルは私達の言葉を首を傾げて目を合わせた。ジルは特に好奇心一杯の目で私達から何があったのか聞き出したがっていたが、私もエドも相手をする気力もない。
結局その日はエドの屋敷に戻って、ご飯を食べてお風呂入って布団に潜り込んだ。そこまで頭真っ白状態。
……ああ。この先どうしたらいいの? もう開き直るしかないのかな?




