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異世界創造神は女子高生  作者: 斉凛
第3章 帝国編
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血まみれ皇子と茨の道2

 一夜あけて翌日。私達は宇治に向けて出発する事になった。当初は馬車で行く予定だったのだが、突然エドが良い物があると言って明石の街の郊外に案内してくれた。

 そこにあったのは不可思議な乗り物だった。4輪のついた箱の様なもので前方にハンドルがついている。そして前輪側が大きく肥大していた。


「これはなんだ?」


 アルが不思議がるのも無理は無かった。私にも良く分からない代物だ。


「現在開発中の最新の蒸気自動車だ」

「蒸気自動車!?」


 蒸気機関車は聞いた事があるが、自動車ははじめてだ。それでも何となく私にはわかった。しかしアルやジルは不思議そうな表情で見つめている。

 無理もない。エドは説明するより乗った方が早いとばかりに私を乗せた。

 2人乗りなので私とエドだけ乗ってみる。エドは昨日の恐ろしい表情と打って変わって上機嫌だ。

 まるで昨日の事など忘れてしまいたいかのように。だから私もあえて触れなかった。


 エドが準備して石炭をいれると次第に車は蒸気の煙を出して、ゆっくりと動き出した。日本で車に乗り慣れた私にはかなり遅いスピードだったが、舗装されていない道でサスペンションが効いていないためひどく揺れる。

 しばらく走って止まると勝ち誇ったように振り返った。


「どうだ」


 エドは嬉しそうだったが私は素直に感想を言った。


「たぶん馬車の方が早いよ。それに燃料の事考えるとそんなに長距離走れないよね」


 私の冷静なつっこみにエドは肩を落とす。しかしあとから追いかけてきたアルとジルの反応はすごかった。


「馬もなくどうやって走っているんだこの車は」

「これが科学技術という物なのですね。帝国の科学はすごいですね」


 私がばっさりきって捨てた自動車を褒められて、エドは純粋に嬉しそうだった。

 そういえば皇子じゃなかったら職人になりたいって前に言ってたな。きっと自動車工場の職人とかそういうのに憧れているのかな……。

 昨日感じたエドの将来に関する不安がもう一度わき上がる。彼をこのまま玉座につけていいのだろうか? 静かな人生を歩ませる道はないのだろうか?

 私の心配など気づいてないみたいで、男3人が熱く蒸気自動車について語り合った。



 そして結局馬車の方が早いという事で、みんなで馬車に乗って宇治へ向かう事になった。蒸気自動車で私を驚かせられなかったのが悔しかったようで、エドは「宇治にはもっと凄い物がある」と期待を煽っていた。

 私はなんとなく想像できたけど、あえて水をささないように口出ししなかった。


 そうして日暮れ時には宇治に到着した。宇治には明石のような無国籍な活気はない。人は多い大きな街だったが静かな所だった。まるでひなびた温泉街のような古い日本を思わせる街並みは見ていて落ち着く。

 宇治で一番の大旅館に宿をとってその日は一泊した。明朝出発する予定だったのだが、肩すかしをくらうことになった。

 エドが案内してくれたのは駅のプラットホームのような場所で、予想通り蒸気機関車が止まっていた。だがその鉄のかたまりは冷たく全く動く気配がない。


「この蒸気機関車で京までいくつもりだったのだが……」


 なんでも華無荷他国との戦争のため、華無荷他国からの石炭の輸入がストップしてしまったらしい。冬の燃料としての備蓄を考えて、今まで毎日運行していた蒸気機関車を2日に1度に制限しているそうだ。


「馬車で行くより1日待って明日蒸気機関車で行くほうが速いだろう」

「じゃあ今日は1日暇って事だよね」


「そうなるな。明。宇治の街を案内しようか?」


 エドの提案に頷きかけてとまった。毬夜の事が気になったのだ。毬夜はたぶんエドの事が好き。そしてきっとずっとエドのそばにいて支えてくれる人だろう。そう考えたら二人きりにしてあげた方が良いんじゃないだろうか?


「私はいいよ。アル達と遊びに行くから。エドは毬夜と一緒に町歩きしなよ。ね、アル」

「よし行くか。明」


 私とアルがさっさと歩き始めてしまったので、エドは取り残されたようにぽかんとした表情で立ち止まっていた。しばらく歩いた所でアルはご機嫌な表情から不機嫌な表情に変えた。


「誘われるのは嬉しいが、当て馬にされるのは気に食わん。どうせあの女とエドガーをくっつけようとかお節介な事を考えているのだろう」


 アルに見抜かれて言葉につまる。私のやってる事はお節介かもしれない。それでもエドのためなら……。


「まあこうなったらとことん二人きりを楽しんでやろう」


 にやけるアルにしまったと思った。ヤバイ。野獣モードに入ったらどうしよう。


「こほん。私もいるのですが……」


 気づけばジルがそばにいた。いつのまに……。アルは忌々しそうに追い払おうとした。


「一人でふらふらしていろ」

「私はそれでも構いませんが、他国人の私達には、護衛と称した監視がつくようですから、どちらにしても二人きりにはなれませんよ」


 アルの悔しそうな表情を見ながらほっと胸をなで下ろした。

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