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あの時間をもう一度  作者: ゆうき
始まりの再会
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第4話 冒険者の第一歩

翌朝。

宿の窓から差し込む朝日で目が覚めた。


「……よく寝た。」


異世界へ来て三日目。

昨日はギルドへ登録し、新しい一歩を踏み出した。

まだ分からないことだらけだが、不思議と焦りはない。


まずは、この世界を知ること。


それが今の自分にできる最優先事項だった。

身支度を済ませると、ゆうきはギルドへ向かう。

朝のギルドは昨日とは違い、依頼へ向かう冒険者たちで賑わっていた。

受付へ向かくと、昨日対応してくれた受付嬢がこちらへ気付く。


「おはようございます、ゆうきさん。」


「おはようございます。」


「今日は初心者講習ですね。準備ができていますので、こちらへどうぞ。」


案内されたのは、ギルドの奥にある小さな講習室だった。

室内には十人ほど座れる長机が並び、既に数人の新人冒険者が席についている。

ゆうきも空いている席へ腰を下ろした。

やがて一人の男性が部屋へ入ってくる。

年齢は四十代ほど。

日に焼けた肌に、使い込まれた革鎧。

歴戦の冒険者であることが一目で分かる。


「おはよう。」


穏やかな声だった。


「俺はギルド講師のガレスだ。新人講習を担当している。」


軽く自己紹介を終えると、教壇へ立つ。


「まず最初に覚えておいてほしい。」


部屋の空気が少しだけ引き締まる。


「冒険者は英雄じゃない。」


その一言に、全員の視線が集まった。


「依頼を達成することより、生きて帰ることが一番大事だ。」


静かな口調。

だが、その言葉には重みがあった。


「無茶をするな。

危険だと思ったら逃げろ。

逃げることは恥じゃない。

死ぬことが一番の失敗だ。」


部屋が静まり返る。


「毎年、新人は死ぬ。」


誰も言葉を発さない。


「実力を見誤る。

情報を軽く見る。

仲間任せにする。

その結果だ。」


ガレスは一人ひとりを見渡した。


「だからこそ、生き残れ。」


その短い言葉だけで十分だった。

ゆうきは静かに頷く。

ゲームではない。

命は一つしかない世界なのだ。


「さて。」


少しだけ空気を和らげるように笑う。


「暗い話ばかりでも仕方ないな。」


部屋に小さな笑いが起きた。


「次は魔力について話そう。」


その言葉に、ゆうきは自然と姿勢を正した。


「人には誰しも魔力が宿っている。」


ガレスは掌を開く。


「ただし、その量には個人差がある。」


次の瞬間。

彼の指先へ、小さな火が灯った。

蝋燭ほどの小さな炎。

熱は感じない。


「これは生活魔法だ。」


炎はふっと消え、今度は掌の上へ透明な水が浮かぶ。

水はゆっくりと宙を漂い、やがて床へ落ちることなく消えていった。


「火と水。」


「この二つは生活魔法として最も基本になる。」


「料理、焚き火、飲み水の確保。

冒険者なら覚えておいて損はない。」


ゆうきは食い入るように見つめていた。

魔法。

昨日までは物語の中だけの存在だったものが、今、目の前で当たり前のように使われている。


「ただし。」


ガレスは人差し指を立てる。


「誰でも使えるわけじゃない。」


「一定以上の魔力量がなければ発動しない。」


「一般人でも使える者はいるが、割合としては少ない。」


「だから冒険者には魔力保有者が多い。」


納得だった。

誰もが魔法を使える世界ではない。

だからこそ、魔法を扱える者には価値がある。


「三日後。」


ガレスが黒板へ森の地図を描く。


「新人向けの実践演習を行う。」


部屋が少しざわついた。


「街の近くの森だ。」


「危険な魔物はいない。」


「ベテラン冒険者が同行する。」


「魔物との距離感や、森での立ち回りを学ぶ演習だ。」


ゆうきの胸が少し高鳴る。

いよいよ冒険者らしいことが始まる。


「参加は自由。」


「参加したい者は帰る前に受付へ申し出てくれ。」


ゆうきは迷わなかった。


(参加しよう。)


知識だけでは生きていけない。

実際に見て、学び、経験する。

そのためにも、この演習は必要だった。

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