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デモンズキャッスルパークへようこそ!――たこ焼きに釣られた魔王の孫は、謎の美少女(自称)たちと街づくりに励む  作者: いか墨ドルチェ


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第7話 魅惑のチョコバナナのために……

 珍しく真剣な面持ちで話があると告げてきたアンジェラ。一体全体どのような話だというのだろうか。


「実はこのわたし、アンジェラは……。ごほんっ。心して聞いてください」

「あ、ああ」


 随分ともったいぶって何だと言うのか。


「このわたし、アンジェラは……料理が苦手です」

「……はぁ?」


 二人の間に沈黙が流れる。


「いやいやいや、だって朝食べさせてくれた目玉焼きトーストはお前が作ったのだろう?」

「そうです」

「十分おいしかったぞ?」

「あれは、ただ割った卵を焼けば出来上がりだからです。ただ焼くぐらいのことはわたしでもできます。ですが!」

「ですが?」

「2つ以上の素材を混ぜて作るような超複雑な料理は一切できません!」

「…………それ、偉そうに言うことか? しかも、今? このタイミングで?」


 魔王城はすでに夕日に赤く染まり、空にはねぐらへ帰る渡り鳥が飛ぶ様が見えた。さすがに今日、今から街に戻ることは現実的ではない。


(この小娘、自らと俺の退路を断ったうえで、降伏を迫ってきたという訳か……)


 またしても小娘にしてやられたことになるサミュエル。わなわなと震えながら文句を言おうとするが、何と言葉にすべきか。


「だけど! 悲観することはありません!」

「……いや、悲観するしかないだろう……」

「わたしには、超絶すばらしいアイディアがあるのです!」


 サミュエルは「それ、めっちゃ疑わしいんですけど」という眼差しをアンジェラに向けている。


「聞いて驚くなかれ! なんとわたしには、料理が得意な従兄がいます!」

「……で?」

「まぁ、簡単に言うと、従兄を呼んで、料理をしてもらえばいいかなって」

「いやいやいや、もう帰ろう、たこ焼きの街に。それで全部解決するじゃないか!」


 どう考えてもそれが現実的だ。たこ焼きの街に戻り、報酬をもらい、たこ焼きを思う存分食べる。それがサミュエルにとっての幸せなのだ。


「ミュくん、待って! 一生のお願いだから! だってさ、この島、超貴重な食材の宝庫なんだよ。食べてみたくない、チョコバナナを? 食べたいよね?」


 アンジェラ、本日二度目の一生のお願いをされる。


「チョコバナナ?」

「そう! さっき食べたこのバナナにしびれるほどあまーい魅惑のチョコをたーっぷりかけるの! もうそれはこの世のモノとは思えないお・い・し・さ!」


 アンジェラは瞳を潤ませながら、チョコバナナの魅力を語って聞かせた。


(あのね甘いバナナよりもさらに甘いだと! そんなものがこの世に存在するのか!)


 サミュエルは、自然と口の中が唾液で満たされるのを感じていた。


「……た、食べたいかもしれん……」

「でしょでしょ! チョコバナナを知らないまま死ぬなんて、人生損しまくりだよ! でもさ、チョコの原料のカカオって貴重でさー、大陸でもなかなか取れないんだよ! 王様しか食べられないスイーツなんだから!」


 人間の王しか食することができないほど貴重な食材がこの島では簡単に手に入る。そう言われると、確かにこの島は食材の宝庫なのだろう。その貴重な食材も存在しているだけでは食べられないとなると、その料理が得意なアンジェラの従兄とやらを掌中に収めるのは悪い選択ではない気がする。


「わかった。その従兄とやらを連れてくるがいい。ただし! 俺もたこ焼きの街に行くぞ。ここに一人残されて報酬ももらえないままだと困るからな」

「了解! ただね、ミュくん、一つ問題が……」

「今度はなんだ!?」

「実はこのわたし、アンジェラは……」

「いや、もうそれいいから、早く言え! もう何を言われても覚悟はできている」

「それはよかったです! まぁ、簡単に言うとですね、わたしが飛行魔法で運べるのは自分ともう一人までなんです! だから、ミュくんを連れて行くとなると、ミュくんには崖を自力で上ってもらわないといけなくなります!」


 今度はどんな爆弾発言が飛んでくるのかと思ったらそんなことか。それだったら、自分も飛行魔法で飛んでいくから全く問題ない。のだが、現状、飛行魔法をつかえることはまだアンジェラに伝えていない。少し思案していると、アンジェラがまた別の提案をしてくる。


「だから、ミュくん、これはマジで一生のお願いなんだけど。今日来た時に襲ってきたドラゴンを仲間にできないかな?」


 アンジェラの一生って一体何度あるのだろうか? サミュエルはそんな疑問を抱きながらも、今はチョコバナナに夢中だったので、そこは流すことにした。


「ワイバーンをか?」

「うん、あの竜が仲間になってくれたら、この島と舟との間も自由に行き来できるじゃん! 大丈夫、あの竜、わたしに恐れをなしていたからね。ちょっと脅せばきっと簡単に仲間になってくれるはず!」


 脅して仲間にするって、魔族みたいな発想だ。しかも、脅されてなった仲間は、果たして仲間といえるのだろうか……。


「それは、お前にしては名案だな」


 ワイバーンはすでにサミュエルの仲間ではあるが、公式にも仲間にできるのであれば確かにいろいろと楽になるのは事実だ。


「じゃあ、これからドラゴンを脅しにいくよ! ミュくん、覚悟はいい?」

「大丈夫だ」


 二人はワイバーンがねぐらにしている、城の東側の崖に足を運んだ。ワイバーンは丸くなって休んでいたが、二人の姿を見ると顔を上げ、キーキーと鳴き声をあげた。主の来訪を喜んだのである。


「ぐわあああああ! ぎょおおおおおお! げへへへへへっ! ぎゃはははははっ!」


 と、急にアンジェラが奇声をあげだす。


 ワイバーンも、サミュエルも驚きのあまり目を丸くして、ビビって固まる。


(こ、この小娘、一体何を!?)


 彼女はワイバーンを脅すと言っていた。どうやって脅すのかと思ったら、それがこれか!?


「はい、もう大丈夫。この子は仲間だよ!」

「えっ……?」

「ほら、見て! このアンジェラ様の実力に恐れおののいているでしょ?」

「あ、ああ、そう、だな……」


(に、人間の小娘というのは、かくもとらえどころのない生き物なのか……)


 確かにサミュエルも別の意味で、アンジェラという人間に恐れおののいていた。

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