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たこ焼きで釣られた魔王の孫と人間たちの大魔王すぎる街づくり――デモンズキャッスルパークへよくぞきた!  作者: いか墨ドルチェ
第一部 領地建設編

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第53話 心頭滅却すれば火もまた涼し――無の境地に至れる至高の山岳地帯

 さて、最後は南の山岳エリアである。


 峻厳な山々に、深々と降り積もる雪。時折、峰に木霊する、魔物たちの嘶き――。


 ここは手つかずの美しくも厳しい自然と強力なモンスターの生息するエリアである。


 山伏修験道倶楽部の面々は、エリア内の確認と称しつつ、深い山に分け入った。そして、山に入ったっきり、一向に戻ってこない。何の音沙汰もない。


「もう、しばらく経つがアイツら大丈夫だろうか?」

「モンスターに食われてねえといいんだけどな……」

「確かにあそこは魔獣が多いからなあ……」


 実際にエリアに足を踏み入れたことのあるサミュエルと、そこで過酷な生活を強いられていたオーガ&ドワーフたちが心配する。


 このまま放置するわけにもいかず、彼らの生存確認のために捜索部隊を送り込むことになった。隊長は、自然を愛する心優しきオーガの男・オーガグリーンで、副隊長は山に詳しいドワーフのガクガクだ。ガクガクの名前を仮に漢字で書くならば、おそらく「岳学」となる。


 まずは彼らが築こうとしていた要塞に赴き、そこを拠点に捜索をするつもりだった。が、要塞に近づくと、どこからともなく怪しげな儀式の声が聞こえてくる。


「おい、何か聞こえないか……?」

「ああ、そうじゃの……とにかく、この珍妙な声のする方に行ってみるか……」


「ナウマク サンマンダ バザラダン センダ マカロシャダ ソワタヤ ウンタラタ カンマン……」


 声を頼りに歩みを進めると、作りかけの要塞の中に大規模な薪が組まれ、燃え上がる炎が目に飛び込んできた。その周りを取り囲むように男たちが腰を下ろして、汗をダラダラ流しながら先ほどの怪しげな呪文を唱えているのだ。


「な、なんだこれは!? 悪魔召喚でも行っているのか!?」


 呪文を唱えている男たちは一心不乱な様子で、こちらにもまるで気が付かない。

 

「お、おい」

「カーーーーツッッ!!」

「ひぃぃーー!」


 恐る恐るオーガグリーンが声を掛けたところ、その中の一人が大声を上げた。ビビるオーガグリーン。


「あっ、これはこれは、オーガグリーン殿ではないですか? このようなところまで一体何をしに?」

「いや、何をしにではないでしょうが! あなた方がここに行ってから、何の連絡もないのでこうして心配して見に来たのですよ」

「これは、失敬! いや、この地はまさに荘厳な自然が我々の心に巣食う煩悩を洗い流してくれる素晴らしい場所です」

「そうですな。この環境の中に身を置き、厳しい修行を重ねていると、つい時を忘れます……」


 彼らは普通にこの霊山の魅力に取りつかれてしまい、勝手に修行を進めていたのだった。


「まあ、それはわからなくはないのぉ」

「確かにな……」

「そうだ! せっかくです! オーガグリーン殿やガクガク殿も、我々と一緒になって少し修行をしていかれませんか?」

「そうですぞ! 心頭滅却すれば火もまた涼し! 己を鍛え上げましょうぞ!」

「そうだな……せっかくだから、少し修行していくか……」


 こうして、ミイラ取りがミイラになった。


 オーガグリーンたちが旅立ってから早一週間。何の音沙汰もない。


「あれから一週間経つが、オーガグリーンたちは、だ、大丈夫だろうか?」

「グリーンとガクガクだったら心配ないとは思うのだが、モンスターに食われてねえといいんだけどな……」

「確かに、あの二人だったら負けることはないだろうが、あそこは魔獣が多いからなあ……」


 再び心配するサミュエルとオーガにドワーフたち。


 そして、再び派遣される探索部隊。


 彼らが目にした光景は、山伏修験道倶楽部の一員に混ざって、滝に打たれるオーガグリーンたちの姿だった。


「えー、ということで、誘われたので、俺も少し修行して行こうと思いますので……」


 第二次捜索隊は、その伝言だけ残して消息を絶った。


「あいつらは戻ってこないのか……」

「なんつーか、ここはもうこれでいいんじゃねえのか?」


 オーガレッドが発言する。


「ふむ、確かに、あそこは美しいながらも、険しい。となると、このままでは一般の観光には向かないだろうからな」


 そのエリアで長らく生活していたドワーフたちもそう主張する。


「だが、完全にご自由にどうぞというのもなんだかな……」

「確かに、どっかでモンスターに食べられちゃってても困るよねー! そんでもって、人間やオーガを食ったモンスターが強力化して、この街を攻めてきちゃったりしちゃったりして!?」


 アンジェラがとんでもない発想の発言をする。


「冗談でもそういうのやめろ……」

「だったら、ルールを決めたらいいべさ! おらたちマタギだって無計画に山に入ったりしねえだべさ」


 ということで、山に入る修行者は、修行計画書の提出を義務付けることとなった。それからこまめな連絡も必須とされた。それを怠ったものは、島から退去してもらうというシンプルな規則を定めた。


 また、いざという時に備えて、救援信号ともなる烽火の購入も義務とされた。


 滞在場所は自由ながらも、快適な滞在が可能な休憩所兼宿泊施設として、ドワーフたちの集落やオーガの砦が解放された。というか、むしろ山伏修験道倶楽部のメンバーや、山の魅力に取りつかれてしまったオーガグリーンやガクガクなどはそこに居住することが決まった。


「あの砦は作りかけだぞ?」

「そこがまた良いのです。未完成であるからこその美しさもある!」

「我々でその砦を完成させようではないか! これぞ、修行の一環ぞ!」


(いや、さきほど未完成の美を語っていたのに、結局は完成させるつもりか……)


 とにかく、山岳エリアは一部のオーガにドワーフと山伏修験道倶楽部の共同管理となった。


 リゾートスキー場として開発を進めるつもりだった「ドリーミングアイランドカンパニー」は残念がっていた。そちらは折を見て、少しずつ調査をすることで落ち着いた。


 こうして、エビルアイランドの多くのエリアが特徴ある観光地として、人々の余暇には欠かせない場所となったのだ。

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