第49話 リゾート開発始動――エビルアイランド限定世界征服計画
エビルアイランドのホテルもエンタメ施設も、島民はもちろん、観光客にも大人気となった。知名度が上がれば上がるほど人口が増え、商店やレストランなども充実していく。まさに好循環の状態であった。
次なるエンタメ施設として何を作ろうか? 島のどこの地区の開発を進めようか、幹部たちは侃々諤々の議論を重ねる。
「俺は思うんだが、俺たちが住んでいた中央平原にはトロッコが通ってるだろ? あのあたり一帯を獣人サファリパークとしてオープンさせたらどうだろうか?」
モフオたち獣人は、中央の開発を強く主張する。サファリパークがどのようなものなのかよくわからない。だが、このエリアにはトロッコが通っているだけで、開発自体は一から進めなければならないというのが少々引っかかる。
「それだったら、北にある僕たちコボルトの村だってなかなかだと思うんですけど。気候はここよりも落ち着いているし、なんせ村は童話のようにかわいいのですよ! 近くには神秘的な洞窟もたくさんあります。脱現実にはもってこいです!」
コボルトたちの主張ももっともだ。サミュエルは思う。あの時、このコボルトたちの集落をかわいらしくしたのには、きっと後々観光資源としてさらなる開発をするつもりがあったからに違いないと。
「いやいや、ちょっと待て! 俺ら……じゃなくてドワーフたちが作っていた砦だって魅力的なはずだぞ。山岳地帯では、スキーも楽しめるし、山は修行に最適だぞ」
ドワーフ&オーガは南の山岳地帯のリゾート開発を推した。南とこことでは風景も大きく異なり、仮にこのエリアに飽きた者たちであっても満足度は高いであろう。それに、ドワーフたちが居住していた村や砦と言った既存の施設を活用することも可能なのだ。
「なるほど……どの案も魅力的ではないか。是非とも実現させたいな……」
サミュエルは素直にどれも完成させたいと思った。そして、自分が楽しみたいと。
「おっ、さすがはミュの兄貴、わかってんじゃんかよ!」
「ぢゃが、人口が増えたとはいえ、さすがに計画から施工、運営まで同時にこなすのはまだちとエライのぉ」
「ガンじいのいうことももっともだわ。どれも中途半端に進めるよりも、一つずつ完成させていった方がいいような気がするわよね」
「ふーーむ! んじゃ、諸君! こんなんどうかな?」
お金稼ぎに目がないアンジェラがまた突拍子もない案を出すのだろうか。
「どんなんだ?」
「競争入札をさせるのだよ!」
「キョウソウニュウサツ?」
「ミュくん、相変わらずの無知蒙昧な田舎者っぷりサンクス!」
「お前、俺をバカにしてるだろう……」
「ほへっ、なんのことかにゃ? 要は、それぞれの地域の開発計画を運営まで含めて公募するのだよん。その中で各エリアごとに一番心に響くヤツを選ぶってわけ」
「公募は島内の住人限定で? それとも、大陸の町にも宣伝をするつもりかしら?」
「そりゃもちろん、両方だよん!」
「両方って、その選択肢は両立しないだろうが」
サミュエルはもっともなツッコミをする。少しだけ、田舎者扱いされた腹いせを兼ねて。
「うん、だから、まずは住人になって、島のことを理解してもらった上で、開発計画を立てるようにしむけるのだよ。こうすれば、計画を立てたものの選ばれなかった人たちだって、我々にとってはいいカモになるわけだわさ」
「アン、お前ってやつは、いい性格をしているな」
「どもぉ!」
「いや、褒めてないぞ……」
こうして、人間の町にまで、エビルアイランドの三エリアの開発プロジェクトが大募集されることになった。開発だけでなく、施工から運営まで担えるとあって、アンジェラのように金に目がないが優秀な連中が大量に島に移住してくることになった。
特に、エビルアイランドの将来を大きく左右するであろう五つの団体の存在は特質すべきだった。
一つ目は、貴重な種の保護や自然環境を守る活動をしている団体であり、その名も「生物の楽園」だ。過度な開発によって、現在の環境が損なわれることがないように監視することが、主な目的の団体である。
彼らは、過剰な開発によってエビルアイランドの貴重な自然や生態系が失われないように、いわば監督役としてやってきたのだ。
二つ目は、「山伏修験道倶楽部」である。彼らは山岳における厳しい修行によって悟りを開こうとする修験者の集まりである。彼らも開発というよりは、この機会に名山として名高いエビルアイランド南部にある山岳地帯で修行に励むことが目的だった。そのために、理想の霊山を守るのだ。
三つ目は、「ピンキーポップキャンディズ」だ。この団体のメンバーは、とにかく愛らしいものを愛でることが好きなのだ。ということで、目的地は当然コボルトの町になる。
四つ目が世界的なホテルチェーンを経営する「丘豚ファミリーズ」で、五つ目が総合的な地域開発を得意とするディベロッパーの「ドリーミングアイランドカンパニー」である。
さっそく、最初の三団体は各自の目的地を満喫し、残りの二団体は、エビルアイランド全体を把握すべく、各地に調査員を派遣したのだった。




