第46話 【閲覧注意】たこ焼きラーメンなんてどうだろうか? われらが町のラーメンを!
サミュエルは久しぶりにエビルアイランドに戻った。
旅の疲れを癒すために、サミュエルはウォーターパークのデイベッドに横たわる。そして、彼にとっての癒しのアイテム・たこ焼きとコーラを思う存分堪能していた。
この後は、トロッコに乗って工房エリアに顔を出す予定だ。特に工房に用事があるわけではないのだが、トロッコを楽しむために――。
今、サミュエルの頭の中は、オリジナルラーメンのアイディアで溢れかえっていた。
(オリジナルの具としてたこ焼きを入れたら、最強なんじゃないか? その上、汁がコーラだったら、ぜひ飲み干したいな。いや、待て待て、食べたラーメンは全部汁が甘くなかったぞ。やはり汁には甘みよりも塩気が必要か……塩気となると、やはりソース味のラーメンという結論になるか?)
正直、彼のアイディアが実現したとしても、あまり口にはしたくないラーメンだった。が、サミュエルはクソ真面目にオリジナルラーメンに思いを馳せていた。
エビルアイランドも順調に人口が増えている。しかも、今回は各地からやってきた旅人も多い。
ということで、オリジナルラーメンのアイディアを、例によって公募することにしたのだ。
その中から、これはと思うものを調理担当スタッフでいくつか作ってみて、実食し、ある程度候補を絞ったうえで、住民投票を行う。
自分のアイディアがエビルアイランドの名物の味になるかもしれないということで、島民たちはこぞってゲテモノラーメンの数々を考案するのだった。
オリジナルラーメンのアイディアは全部で三百件以上の応募があった。
島民たちがこの島の政治運営に興味関心を抱いている証だとみると実に喜ばしいのだが、実際に調理担当者が食べてみたいと思えた案は、数十件ほどしかなかった。
「ミュくん……たこ焼きはラーメンとは別に食べればいいのではないかい?」
「なんだと!? 旨いものと旨いものを掛け合わせるのだ! 絶対にイケると思うんだが!」
「まあ、ラーメンとはちょっと違うけれども、同じ中華麺を使った料理に、焼きそばというものがあるのよ? それはたこ焼きと同じソース味なの。今度作ってあげるわね」
「この辺も没ですね。コーラ味のラーメンって……まったく、誰のアイディアですかねぇ……」
ナオミが応募用紙の名前を見ると、大きく「レッド・オーガ」とあった。
「フッ、さすがは脳筋。愚かですね……」
ナオミはオーガレッドを小馬鹿にしたような嘲笑を浮かべていた。
(あっぶねー。俺もコーラ味のラーメンを考案するところだった……。だが、俺は気づいたぞ! ラーメンの汁には塩気が必須なのだと!)
サミュエルは人知れず冷や汗を浮かべていた。そして、五十歩百歩な差でオーガレッドに対し、内心でマウントを取っていた。
こうして多数の島民から送られてきた我が町のラーメン案を吟味し、いくつかのものを実際に実食した結果、投票の土台に上がってきたのは五種類のラーメンだった。
エントリーNo.1
魔王様の冷酷無比ラーメン 雑魚どもよ心して味わえ 魚介醤油味
エントリーNo.2
血の池地獄ラーメン 地獄の釜茹でトマトを添えて
エントリーNo.3
身悶えろ! 超絶激辛ボンバーラーメン
エントリーNo.4
邪神に捧げられし骨と肉の生贄ラーメン 動物骨味
エントリーNo.5
悪魔のささやき 禁断の果実・柑橘満喫け麺
これらのラーメンすべてサミュエルも試食したが、どれも甲乙つけがたい旨さであった。
サミュエル個人的には、No.4の生贄ラーメンがお気に入りだった。ごろっとした三枚肉や骨付き肉と味付け卵が入っていて、ワイルドな見た目とそれ以上の食べ応えがあった。太めのちぢれ麺に、コクのあるまろやかなスープがよく絡んで実に美味だった。
No.3のボンバーラーメンは汁が少なめで、ほかのラーメンとは一線を画していた。食感と味の違う三種類の肉団子と温泉卵という具のインパクトもさることながら、楽しみながら食べることができた。
熱い日差しの下では、No.1のそもそも汁が冷たいラーメンやNo.5のつけ麺がさっぱりとして食べやすい。これだったら、何杯でも食べられそうだと思った。
No.2の血の池地獄ラーメンは、魚介がたっぷり入っているうえ、にんにくが効いた洋風な味付けが斬新であった。
エビルアイランドの住人たちも大いに迷った。
「おっ、ミュのリーダー、リーダーはどれに投票します? 俺はコーラ味のラーメンで応募したんっすけど、ダメでしたね」
「そ、そうか……。それは残念だったな。まあ、そう落ち込むな。俺のたこ焼きラーメンも没だったからな」
「兄貴は本当にたこ焼き好きだなー。俺のチョコバナナラーメンも採用されてねえなあ」
モフオが嘆きの声を上げた。
(それはどう考えてもダメだろう! 何をどうすればチョコバナナとミックスしようと思うんだ!)
「あ、ちなみに、このNo.3の『身悶えろ! 超絶激辛ボンバーラーメン』はおらの案だべさ。皆に今度たこ焼きとコーラさ驕るだんべ。だから、エクスプロージョン8のよしみでこれに投票よろしく頼むべ」
ボムが仲間の票を買収すべく呼びかけを行っていた。
「ボム! 悪いが、それは買収となるぞ! 不正はよくない」
「そうだっぺ! 自分の案だけ採用されてっからって、調子にのんじゃねえだっぺ!」
「なんだとー、このタコスケ!」
「まあまあ、喧嘩はよそう。どれが選ばれても旨いことには変わりないのだから」
「さすがはミュの兄貴だな! 懐が深いぜ」
結局、住民投票の結果、僅差でNo.3のボンバーラーメンがエビルアイランドの一杯に当選した。ボムは大喜びで、すでに億万長者の成金気分だった。
「おらはこれでラーメン御殿を建てるだべさ!」
「いやいや、売り上げ全部お前のもんじゃないから!」
「そうだぞ、材料費や人件費も考えろ!」
しかし、住民たちの熱いラブコールの結果、どのラーメンも各施設の名物として提供することが決まったのだ。
つまりは日替わりで、その日の気分に合わせて好きなラーメンが味わえるのだ。
このオリジナルラーメン誕生の結果、エビルアイランドの食事情はますます充実することになったのだった。




