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たこ焼きで釣られた魔王の孫と人間たちの大魔王すぎる街づくり――デモンズキャッスルパークへよくぞきた!  作者: いか墨ドルチェ
第一部 領地建設編

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第45話 さあ行こう! 一家をあげてエビルアイランドへ!――極楽の地獄島

 エビルアイランドの宣伝部長に選ばれてしまったサミュエル。ファイヤーナイフダンスを披露しながら、エビルアイランドへの観光客と移民を呼び込むという、極めて重要なミッションを仰せつかる。


 島の発展のために。娯楽のために。そして、さらなるうまい飯のために。


 今回のスローガンは、「さあ行こう! 一家をあげてエビルアイランドへ」だった。実は服のデザインがてら絵をかくのが得意なナオミが、ポスターを制作した。


 チョコバナナを始めとする魅惑の南国フルーツ、トロッコにウォータースライダーそして、闘技場(予定)といったエキサイトな娯楽、今ではほとんど目にすることのなくなったコボルトや獣人などの物珍しい種族たち、そして、サミュエルたち麗しのイケメンダンサーズ…………


 この島には人類が渇望する理想が詰まっていた。娯楽の魅惑度を考えると、実に悪魔的なのだが、この島に住む住人たちは、規則正しい生活と適度な労働&休息、娯楽を満喫する、恐ろしく堅実な生活を送っていた。


 サミュエルたちは、まずは始まりの街、トコトンタウンでエビルアイランドの宣伝を行うことにした。この町、地味な小さな地方都市のようでいて、実は交通の要所にあり、元々の住人以上に旅人が多いのだ。旅人というのは格好のターゲットなのだ。


「レディース&ジェントルマン! 我らがエクスプロージョン8の大スター、サミュエルが降臨したぞ! さあ、氷のように眼光鋭い男によるとろけるような熱きダンスをとくとご覧あれ!」


 アンジェラの口上を聞いて、「何だ、何が始まるんだ」と人々が次々と広場に集まってくる。


 唐突に響き渡る太鼓の音。


 そして、沈む夕日を背に、サミュエルたち、若き男たちが登場する。観客たちの歓声に迎えられて、男たちは熱き血潮がたぎるようなファイヤーナイフダンスを披露した。


「おおおっ、すげー! かっけー!」

「うそぉー! あの人、超イケメン!! 惚れちゃいそう」


 人々は炎のような、というか実際に炎が暴れまわっている熱き踊りに沸き立った。


 実は、ここ数十年、魔王が倒されて、魔物の動きも沈静化するとともに、人間たちは平和に慣れ過ぎてしまっていたのだ。淡々と過ぎゆく日々の暮らし。特に山も谷もない波乱万丈とは程遠い人生。平穏に生き、静謐の中に死を迎える。


 それはそれで悪くはないのだろう。


 が、平坦過ぎる人生の中で、人はともすると生きる意義を、生への執着を見失いがちになる。


「心躍るような冒険を! 息をのむようなスリルを!」


 それを人々はどこかで求めているのだ。失われた日々に確かにあったような強烈な生の実感を。


 サミュエルたちのエモーショナルなダンスは、観客たちに忘れかけていた高揚感を思い出させた。


「さあ、君たちもエビルアイランドでイケメンダンサーと握手!」


 この余計とも思われるアンジェラの一言が意外と決定打となる。


「えー! エビルアイランドに行けばあのカッコいい人と握手ができるの!」

「もう行くしかないでしょ!」


 こうして女子たちはわずかな迷いを断ち切り、「そうだ、エビルアイランドへ行こう」とエビルアイランドへの移住をあっさりと即決する。


 それを見て、男たちもその背中を追うようにエビルアイランドへの移住を決意するのだった。


 地方巡業は順調そのものだった。始まりの町トコトンタウンの次は、北上してノンビレッジ、ワイガヤタウンまで足を伸ばした。


 行く先々でサインをせがまれ、握手会は長蛇の列となった。どこに行っても黄色い歓声で歓迎され、人気をほしいままにするサミュエル。


(ああ、なんて気分がいいんだ!)


 サミュエルは今自分が置かれた環境すべてに満足していた。


 人間たちは人間たちで、炎のダンスに熱中し、エビルアイランドにゴールドラッシュさながらの夢を見た。いつしか忘れられていた情熱を、熱き血が湧き、胸が高鳴る日々を取り戻せとばかりに人々は熱狂したのだった。


 この巡業の中で、新しい食との出会いもあった。むしろサミュエルにとっては、それこそが今回の地方巡業の真の目的でさえある。


 それは、ラーメンと総称される食べ物だった。


 人間の町には、一町一ラーメンのように、町のオリジナルラーメンが存在するらしいのだ。トコトンタウンは醤油、ノンビレッジはタンメン、ワイガヤタウンは鶏白湯といった具合に。


 同じラーメンを名乗っているが、味も見た目も使われている材料もまるで異なるのが、サミュエルには不思議でならなかった。


「エビルアイランドにも、オリジナルラーメンを作れないだろうか?」

「お、ミュくん、わかってきたじゃん! いいね、オリジナルラーメン。ぜひ作ろう! んじゃ、そろそろ我らがエビルアイランドに戻りますか!」

「そうだな。移住希望者もかなり獲得できたからな」


 これで、闘技場やトロッコの建設もさらに進むだろう。


 大勢の移住者たちを乗せて、いつの間にか手に入れた新型の大型帆船、エイプリルリーフ号は新天地であるエビルアイランドを目指すのだった。


 最新鋭の帆船はさすがだった。外洋ももろともせずに進み、あっという間にエビルアイランドの東海岸にたどり着いた。


 東海岸にはいつの間にかそこそこ立派な桟橋が完成していた。やってきた人々は、よく飼いならされた暴走ヤクに跨り、切り立った崖を登って行った。


「ちょっと、これ!」

「楽しいー!」


 到着した途端にちょっとしたアドベンチャー気分と、絶叫マシーンを思わせるアトラクションを味わえるとは!


「己の肉体の限界に挑みたい方はこちら。上級の地獄の階段コースに最上級の恐怖の断崖絶壁クライミングコースもございまーす」

「おおおっ、俺は身体を鍛えるために、この地獄の階段コースを行くぞ!」

「俺はこう見えて、登山家として冒険を重ねてきたんだ。この恐怖の断崖絶壁クライミングに挑むぞ!」


 挑戦者たちは、ガイドと共にあえて厳しい道を選ぶ。


 移住者たちはこのエビルアイランドに着いた瞬間から、この極楽のような地獄の島を満喫するのだった。

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