第43話 魔王の孫、ウォーターパークでこの世の終わりを味わい尽くす
ウォーターパーク「ブルー・ブラッディ・ポンド・ヘル」、本格始動の初日。今回も抽選で順番を決めて、島民たちはウォーターパークを楽しみつくした。
プレオープンしていた子ども用プール「賽の河原」に加えて、大人用のプール「血の池地獄」、流れるプール「三途の川」に本格的なウォータースライダー「四苦八苦」からジャグジー「煮えたぎる巨釜」まで完備である。
ウォータースライダーには、急遽サミュエルが見た夢を活かした設計――浮き輪に乗って激流を流れ落ちるタイプのモノも取り入れられている。
「……それにしてもなぜこのような物騒なネーミングに?」
「合わせただけだって」
「何にだ?」
「デモンズキャッスルの雰囲気に!」
「ここってそんなに地獄でもないだろう?」
(確かに昔は地獄だったかもしれないが、今はどう考えても天国だ!)
「まあまあミュくん、そこは深く考えない、考えない!」
「このウォーターパークのスローガンもできました。『この世の終わりを味わうがよい!』です」
確かにこのウォーターパークの楽しさは、まさに天国。この世の終わりと言えるかもしれない。
「う、うむ……」
方向性が真逆な気がするが、口出しをしたところで代案があるわけでもない。サミュエルは黙っていることにした。
ウォーターパークは、当然、大盛況だった。この世界に、このような娯楽が存在していいのだろうか、マジでこの世の終わりなんじゃないかというぐらい楽しいのだ。
しいて言うならば、ウォータースライダーの列に並ぶのがプチ地獄と言ったところかもしれない。
「確かに、ただただ並んで待つのはしんどいよねぇ」
「あたしは全然平気よ。ミュくんの美しい肉体を眺めていたら、あっという間に順番がまわってくるもの!」
「でも、ミュくんが見えるところにいないと結構辛いですね……」
「んじゃ、ミュくんにはウォータースライダーの列の前に鎮座していてもらおうか!」
「いやいやいや、待て待て待て、俺は銅像じゃないぞ!」
「そんじゃ、ミュくんの正面には、このわたし、超美少女アンジェラちゃんがセクシー水着を着て立っていてあげようではないか!」
「………………」
「えっ、ミュくん、もしかして、不満?」
(もしかしなくても不満だ!)
「もっと、別の何か、ないのか? もっと、誰もが見ていて楽しいものは?」
「ふむ、ほいじゃ、このわしが一肌脱いで、裸踊りでもするかのぉ」
「えー、がんじぃの裸を見てもなぁ」
「そうよねぇ、筋肉がすごいのは認めるけど」
「やはり、ここはイケメンしか勝たんということで」
「わし、しょぼーんぢゃよ……」
ガンテツの裸踊り、一度ぐらいは見てもいい。二度目はいらん。
「あっ、ってことは、ミュくんが踊ればいいんじゃね?」
「お、俺がか!? お、俺は踊ったことなんてないが……」
「それ、超ナイスアイディアよ! 絶対に見た過ぎるわ!」
「ですね。ただ立っているだけよりもずっと見ごたえがありますよ! 今、神の啓示が下りました! 衣装のデザインはすでに完成しました!」
「ちょっと待て待て! 何を踊ればいいんだ? 本当にどうしたらいいかわからないぞ、俺は」
「それならば、いい人を知っているから、あたしに任せて!」
こうして、サミュエルを始めとするイケメン筋肉部隊は、舞台上で踊ることになった。
「ミュくん、それから初めまして、ダンス講師のアロハマハロよ。よろしくね」
この男も、ジョセフィーヌと同じ種類の生き物らしい。どっからどうみても男なのに、女装をしているのだ。サミュエルは、いまだに人間の男が女装をする意味がよくわからなかった。
だが、彼らは服装だけでなく、性格まで女になり切っているのだ。むしろ、アンジェラなどよりもずっと女性的でさえある。そこに深入りしてはいけないと思い、親切心から知らんぷりをすることにした。
「さあ、神より授かりし美しき身体の男たちよ! あなたたちが踊るのはズバリ、ファイヤーナイフダンスよ!」
「ファイヤーナイフダンス?」
「これが、そのファイヤーナイフダンスよ! しかと見なさい!」
ダンス講師アロハマハロ氏は、長いナイフを取り出すと先端に火をつけ、振り回しながら見事なパフォーマンスを見せた。
「おおおお!」
「すげー!」
「かっけー!」
「見事だ!」
男たちはその圧倒的なパフォーマンスに熱狂した。サミュエルも踊りというからどのようなものかと心配していたが、これならば全然やっても構わない。むしろ、積極的にやってみたいとさえ思った。
こうして男たちの中から選りすぐりのイケメン八名――サミュエル、人間代表のツムとボム、獣人のモフオとコンコン吉、オーガのレッド、ブルー、ブラックでエクスプロージョン8を結成して、日夜ダンスの特訓に励むのであった。
「お、俺はもうダメかもしれねえ……俺は……俺はなんてリズム感がないんだ!」
「モフオ! 諦めるな! 一歩一歩、着実に積み重ねていくんだ」
「そうだぜ、俺だってダンスなんて初めてだが、斧を振るようなリズムでアインス、ツヴァイ、ドライ、フィアだぜ!」
「そうだっぺ! あるいは、鍬を振り下ろすリズムで、イー、アル、サン、スーだっぺ!」
「……みんな! 俺、もう少し頑張ってみる」
「おお! 負けるな、モフオ! 俺たちは8人そろってエクスプロージョン8だろ?」
「ミュの兄貴ーーー! 泣けるぜーーー!」
こうして挫折しそうになっても、励まし合うメンバーたち。芽生える友情。オリハルコンのように固い絆。
苦労の末、ついに男たちは一流のダンサーへと成長したのだった。
アイドルイケメンダンサーズ、エクスプロージョン8、爆誕である!




