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デモンズキャッスルパークへようこそ!――たこ焼きに釣られた魔王の孫は、謎の美少女(自称)たちと街づくりに励む  作者: いか墨ドルチェ


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第4話 からっぽの魔王城

「こんにちはー、誰もいないですよねー?」


 誰もいないと思っていながらも、少し遠慮がちに声をかけるアンジェラ。だが、その行動自体はまったく遠慮がない。城の中を遠慮なく駆けずり回る。


「ハロー?」

「どうもー?」


 何か一言言いながらも、バンバンドアを開ける。開けてみるが、だいたいどこも長らく使っていない部屋なので、あるのは埃やクモの巣ばかりでお宝などどこにもない。


「うひゃー、あの階段の先、絶対に玉座の間があるよね? ミュくん、行ってみよう!」


 玉座の間は思いのほか綺麗だった。なぜならば、ほんの数日前まで悪魔族のサダムが一生懸命掃除をしてくれていたからだ。ついでに言うと、サミュエルとサダムがそれぞれ居室にしていた部屋も綺麗に掃除がされていた。それ以外の場所は埃まみれで、ドアが開くのかも怪しい部屋も少なくなかった。


「うおおお! 本物の玉座じゃん! ねえ、ミュくんちょっと座ってみてよ!」

「えっ、なんで俺が……座りたいならばお前が座ってみればいいじゃないか……」

「え、だってさ、こういうのはわたしみたいな小柄で可憐な乙女よりも、ミュくんみたいな立派な体躯のイケメンが座ったほうが絶対に様になるじゃん!」

「いや、だが……」

「ほらほら! 遠慮は無用だってば。あ、もしかして、ここに座ると魔王に呪われて、洗濯物を干した途端に雨が降ってくる悪夢にうなされそうとか思ってる? それならば、この聖なる美少女アン様から神聖なる力が溢れ出ているから、怖がらなくても大丈夫だってば!」

「…………はあ……」


 口の減らない小娘に促されて、サミュエルは玉座に腰を下ろした。ここに座るのは数日ぶりだ。


「おおおっ、さすが、ミュくん、超かっこいいじゃん! わたしの見立ては間違いなかった!」


 それにしても、魔王の玉座の前だというのに、ノリの軽い小娘だ。


「せっかくだからさ、『魔王軍第一の天才美少女、大魔女アンジェラよ! 余のために、人間どもを血祭りにし、街を一つ滅ぼしてこい!』とか言ってみてよ」


(なんて提案をする小娘だ……俺にそんなセリフを言わせるなんて、シャレにならないんだが……)


「ねえ、ミュくん、一生のお願いだから! ほらほら、魔王みたいなセリフを言ってみて!」

「…………大魔女アンジェラよ……俺のために、人間の街に赴き、たこ焼きに目玉焼きなど、旨い食料を根こそぎ略奪してくるのだ!……こんなでどうだ?」

「御意。この色欲の大魔女アンジェラめにお任せくださいませ、暴食の大魔王サミュエル様」


 アンジェラは胸に手を当てながら、片膝をつくと出せる限りの低い声でそう返した。


「もう、ミュくんってば、食いしん坊さんだなー! あーでも、魔王軍ごっこ、面白かったー!」


(ごっこというか、割と本物なんだが……)


「ほらほら、ミュくん、いつまでも座ってないで、お宝を探すよ!」


 お前が座れと言ったんだろうがと文句を言いたくなるが、サミュエルは堪えた。本当に騒々しいとしか言いようがない小娘だ。サミュエルは深くため息を漏らすと、もう二度と座ることはないと思っていた玉座からゆっくりと立ち上がった。


(それにしても、この小娘、俺が本物の魔王……の孫だと知ったらどう思うのだろうか? やはり、怖がるのだろうか? それとも、それを知っても今と変わらない態度のままなのだろうか……)


 なんとなく、今と変わらない気がする。「えっ、まじで、ミュくんやるー、超かっこいいじゃん!」ぐらいしか言わなそうだ。


「ねえ、ミュくん、やっぱりお宝があるとしたら、てっぺんか地下だよね?」

「そうだろうな。この城の宝物庫は、何となく地下にある気がするな」

「よっし、地下に行ってみよう」


 魔王城は地下3階、地上5階建てだった。その地下1階部分に、兵士の訓練施設と詰め所、武器の保管庫に、それから宝物庫があった。


 が、この宝物庫、地上1階の階段からは行けない、独立した部屋になっていた。実は、玉座の間の裏手にある隠し階段からしか行けないのだ。この広い魔王城をいちいち探し回るのはあまりにも効率が悪い。なんとかこの玉座の間の裏手にある階段をアンジェラに見つけてもらわなければならない。


「あっ、なんとなく足元がスース―するなぁ。なんだろうなぁ、これは」

「ミュくん、なにやってるの。早く行くよ!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。これはもしかすると、この玉座の近くに隠し部屋でもあるのかもしれないなぁ。少し調べてみよう!」


 サミュエルは玉座の裏に回り込むと、カーペットをはがした。


「やや、ここはなんだ! 怪しいぞ!」


 お前の方が随分と怪しいが……と自分で突っ込みたくなる。


「な、なんとこれは、隠し扉ではないか!?」

「ええー、マジで!? ミュくん、すごいじゃん。グッジョブじゃん! これはお宝の気配プンプンだね!」


 こうして、二人は玉座の裏にあった隠し扉を開け、階段をひたすら下った。


 何百段階段を下っただろうか、ついに目の前に小さな扉が現れる。小さいが相当重厚な扉であり、ここが宝物庫であろうことを彷彿とさせるものだった。


「いくよ、ミュくん、ドキドキだね」


 扉には鍵はかかっていなかった。ギギギギっと音を立てながらも、扉は思ったよりも簡単に開いた。


 が、案の定、宝物庫と思しき場所には、これと言ったものは残されていなかった。


「………………」

「あ、ああ、残念だなぁ。思った通り、魔王城の宝はすでに持ち去られてしまっていたようだ」

「…………ない」

「えっ?」

「そんなことはない! 探せばお宝は絶対にある!!」

「いやいやいや、ないだろう!」

「きっと、勇者が侵入してきたときに、奪われないようにどこかに隠したんだ!」

「いやいや、そんな緊迫した場面で宝を隠す余裕なんてないだろう? 絶対に勇者たちが持ち帰ってここにはもうないんだ! 勇者が持ち帰ったのでなければ、その後お前のような侵入者が持ち帰ったんだろう。うん、おそらくそうに違いない!」

「それはありえない!」

「いや、ありえなくはないだろう?」

「だって、この城、盗賊の類に荒らされたような跡が全然ない。しかも、つい最近まで誰かが住んでいた形跡がある!」

「えっ……」

「ミュくんも気が付いたでしょ? あの玉座の間だけ結構綺麗だったもん。食堂とかはすごい埃まみれだったのに」

「だったら、ここに住んでいたやつが、城を出る際に宝を持っていったんだ。とにかく、この城を探したところで、お前の望むような宝は出てきたりはしない」

「…………悔しい……絶対にそんなのやだああ……お宝を見つけるまでは帰らないから!」


 アンジェラは声を出して泣き出した。


(おいおい、勘弁してくれ……)


「とにかく、今日のところは街に戻ろう。食料だってそんなにないんだろう? このまま何日もここに居続けるわけにはいかないだろう?」


 アンジェラは涙目のままサミュエルをじっと見つめた。


「だったら、食料をここで調達しよう。調理はわたしがするから。一攫千金が叶うまで、わたしはここを動かない!」


(そんなー! 俺のたこ焼きが! 目玉焼きトーストが! イカの煮たり焼いたり揚げたりしたやつが!!)


 サミュエルの方がずっと泣きたい気分だった。

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