第37話 オーガ8名「オクトパス8」が仲間に! が、真のたこ焼き魔王はこの俺だ
パチパチパチパチ…………。
アンジェラが拍手をする音が響き渡る。
「いやー、素晴らしかったよ! 世紀のイケメンとほどほどの自称イケメン対決」
「だから、イケメンを自称なんてしてねえ……」
最後まで少しかわいそうな赤髪のオーガ。
「おう、俺様も興奮したぜ! ミュの兄貴よぅ!」
いつの間にかほかのオーガたちを制圧した獣人たちも、途中から二人の戦い、または芝居を見守っていたらしい。
「クソッ、どうやら俺らの完敗のようだな……お前ら、一体何もんだ? 俺らをどうするつもりだ?」
「どうするつもりなんだ?」
サミュエルはこの先どうしたらいいのかわからないので、赤髪のオーガの男に引き続くようにアンジェラに尋ねた。
「ヒヒヒッ、どうしてくれようかねぇ……ヒヒヒッ」
アンジェラは怪しく目を光らせ、舌なめずりまでしている。
「その、なんだ。俺の意見を言わせてもらえるならば、俺としては先ほどのセリフの中にもあったように、こいつらを部下にしたい」
魔王の孫の目から見ても、オーガの実力は確かだった。仲間にすれば、この先何かと役に立ってくれそうだ。それに、彼とは武器の性能差に頼らない戦いを、今一度してみたい。
「そげなセリフあったかね?」
「あっただろう!」
「もしや、『お前がこの俺の足元に跪き、自らが顔面偏差値58の自称イケメンに過ぎないことを認め、これ以降は真の超絶イケメンであるこの俺に絶対の忠誠を誓うのであれば、その命までは奪うまい!』のこと?」
「そうだ」
「ちっちっちっ、ミュくん、部下にしたいとは一言も言ってないよ」
「同じようなもんだろう?」
忠誠を誓うということは、結果、部下になるということだ。
「まあ、でも、いいかもね」
「そうか!」
「ただし! 条件がある!」
「な、なんだ?」
今度はどんな酷い要求をされるのかと、サミュエルは少し身構える。にしても、魔王の孫である彼が、たこ焼きのためにこんな天然娘に従っているのも滑稽な話ではある。
「さっきの、稲光がして、ミュくんが『下劣で顔面偏差値58程度しかない自称イケメンのオーガのリーダーよ!』って登場するところから、『ああ、俺は何て罪な男なんだ……』ってところまで、またわたしの前でやってみせてー!」
サミュエルは唖然とした。
「ミュくん、超絶カッコよかったもん! あれ、毎日見たい! そのためにはこの顔面偏差値58のオーガくんが必要ってことにしたげるよ」
「………………だそうだ、オーガたちよ」
「よくわからんが、俺らを部下にしてくれるってことか?」
オーガたちは縋るような目でサミュエルを見た。
「まあ、しゃあないから、そういうことだわさ。ところで、君たちには名前はあるのかな?」
「残念ながらねえよ」
「ほいじゃ、この謎の美少女アンジェラ様がつけてしんぜよう!」
「お、おおっ、名前までくださるんで?」
「まずは、赤髪のお前! お前の名前は、オーガ・レッドだ!」
「うおおおお! マジか! かっけー!」
このような感じで、アンジェラはオーガたちに名前を付けていった。
青のオーガは、オーガ・ブルー、緑は、オーガ・グリーンと言った具合に。正直なところ、名前は手抜き感が否めないのだが、オーガたちは名前を付けてもらえただけで大喜びだった。
そして、八人合わせて「たこ焼き戦隊・オクトパス8」となる。
当然、たこ焼きがなんであるのか知らないオーガたちだったが、とりあえずカッコいいという結論になり、満足していた。
サミュエルは、少しだけ不満だった。
自分こそたこ焼きを愛しているのだから、たこ焼き戦士とか、たこ焼き魔王を名乗りたいのに。たこ焼きの何たるかも知らない、パっと出のオーガに愛するたこ焼きを盗られてしまったからだ。
仕方がないので、自分はたこ焼き8の親分だと思うことで納得することにした。
「オーガ・レッドよ。オーガの世界では強きものが頂点に立ち、すべての支配者になるのかもしれないが、人間の世界は必ずしも力だけがすべてではないのだ。それこそが人間がこれだけ繁栄している理由でもある。こいつらを見て、まずはそのことを学ぶんだな」
「イケメンのあんた、さっきよりも随分と理性的なことを言ってるな……」
サミュエルは何かを誤魔化すように、軽く咳ばらいをした。
「まあ、とにかくだ。まずはドワーフに謝罪をして、和解をするんだ」
サミュエルに促されて、オーガたちはドワーフに謝罪の弁を述べた。
「あんたたちの縄張りを荒らして済まなかった」
オーガたちは一斉に頭を下げる。
「ドワーフたちも、こいつらの謝罪を受け入れてくれないだろうか。せっかく同じ島に住む仲間だ。ともに豊かな未来を目指そうではないか!」
「イケメンのあんた、本当に、さっきとは別人のように理性的だな……」
「ミュくんの旦那、わしらはリーダーと認めたあんたの言うとおりにしますじゃ」
こうして、割とあっけなく、オーガとドワーフは和解したのだった。
「それにしても、お前たちはなぜここにこのような要塞を作ろうとしていたのだ?」
「はあ、それなんですが……」
オーガによると、彼らもここ数十年ですっかり勢力が衰えてしまい、残された者たちで身を寄せるように生きてきたそうだ。
山岳地帯に住む魔物は強力で、刃こぼれしだした彼らの武器では太刀打ちできないこともしばしばだった。そして、一人二人と仲間が倒れていった。
「確かに、お前たちの武器は随分と年季が入ってそうだったな」
「だから、武器製造に長けたドワーフに武器を作ってもらうことが当初の目的だったんだ」
だが、ドワーフの元を訪れて、それが難しいことを知る。武器を作れるだけの良質な金属が、ドワーフたちの元にもなかったからだ。
「だったら、要塞を築いて、そこで魔物から身を守るのが手っ取り早いんじゃねえかと思ったんだ」
目的自体は理に適っているのかもしれないが、やり方が短絡的過ぎた。
魔物の世界はどこも同じだ。強いものの理屈だけが通り、建設的な話し合いや協力などほとんど行われない。横のつながりのない、縦だけの関係しかない世界なのだ。
「とにかく、まずは皆でヴィランズタウンに戻ろう」
こうして、仲間となったドワーフとおまけのオーガを連れて、サミュエルたちは町に戻った。
ドワーフたちは、ヴィランズタウンの近くにあっという間に自身らの住処を築き上げた。それと同時に、当初の予定通り、北に赴き、採掘作業に従事する。
そして、持ち帰った良質な金属を使って、武器や農工具を整えていった。いい道具のお陰で、更に採掘も進み、まさに好循環だった。
こうして悪人たちが集うエビルアイランドに平和が訪れたのだった。




