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たこ焼きで釣られた魔王の孫と人間たちの大魔王すぎる街づくり――デモンズキャッスルパークへよくぞきた!  作者: いか墨ドルチェ
第一部 領地建設編

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第36話 対決! 顔面偏差値58 VS 顔面偏差値78

 サミュエルは与えられたセリフを言いながらもすごい疑問を抱いていた。


 相手のオーガは一度たりとも「俺はイケメンだぜ」と言った内容の発言はしていない。


 なのに、「自称イケメン」という言葉で相手を揶揄し、貶めている。


 一方の自分は、「真の超絶イケメン」を名乗っているのだ。


 いくら相手が顔面偏差値58程度で、こちらが78だとしても、これこそまさに、自称イケメンなのではないか。


(ダメだ、あの小娘のシナリオはそもそもいろいろとおかしいのだ。そこを真剣に検討し、疑問を抱いてはいけない……)


 とにかく、ヴィランズタウンのたこ焼き屋を守るために、あの謎の自称美少女には逆らってはいけないのだ。


 サミュエルは与えられた決めゼリフを口にすると、要塞のてっぺんから颯爽と飛び上がった。そして、赤髪のオーガの前に軽やかに下り立った。


 サミュエルの長い髪が風に攫われ、少し乱れる。それを整えるかのように片手でかき上げると、指示通りに白い歯を見せて、究極のイケメンスマイルを作る。


(確かにこれは、顔面偏差値78かもしれん……)


 不覚にも赤髪のオーガの男は、サミュエルの美しさに見惚れてしまった。


 それまでリーダーに寄り添っていた女たちも、サミュエルのキラースマイルに完全に殺されていた。目をハートにして、頬を赤く染め、身もだえた末、そのまま気を失って倒れた。


「ま、待ってくれ! 俺はそこにいる女には一切手をだしてないぞ!」


 オーガの男は釈明をする。


 彼の言うことは、嘘偽りのない事実だった。


「愚かなり! 自称顔面偏差値58の自称イケメンのオーガよ! 平和の使徒であるこの顔面偏差値78の超絶イケメンサミュエル様の目をごまかせるとでも思っているのか! 問答無用!」


 自分でも、言っていることが無茶苦茶だと自覚がある。しかも、やっていることも平和どころか極悪非道そのものだ。だが、指示通りにサミュエルは伝説の名剣を抜き去ると、構えた。


「ク、クソッ」


 赤髪のオーガの男も自らの得物――鉄の斧を構える。


(えっ、あいつの武器、鉄の斧ってマジか!? こいつバカだろうか? 要塞の前にまずはドワーフたちに自分の武器を作らせろよ……)


「おりゃああああ」


 赤髪のオーガは力任せに斧を振り下ろした。剣で受け止めてもいいが、きっと受け止めようとすると、あのオーガの鉄の斧は粉々になってしまう。それほど両者が手にしている武器には天と地ほどの差があった。


 アンジェラのシナリオを再現するとなると、そこそこ互角に戦う必要がある。


 なぜならば、一撃で倒してしまえるような弱い相手をノシてもイケメン度が引き立たないからだそうだ。強敵を打ち破ってこそ、こちらの強さ――イケメンっぷりも引き立つ、というのが彼女の理論らしい。


 サミュエルはあえて相手のひと振りを避けてかわした。


 赤髪のオーガの一撃は地面に直撃する。武器が武器だというのに、その威力はすさまじく、足場が軽く割ける。


(なかなかの腕前だ。もっといい武器を持たせて、ぜひとも手合わせ願いたいものだ)


「逃げてんじゃねえぞ、顔面偏差値78のイケメンさんよ!」


 赤髪のオーガはすぐさま斧を振り上げると、今度は薙ぎ払うように攻撃を仕掛けてくる。サミュエルはこの攻撃も後ろに跳んでかわした。


「逃げているわけではない。お前のその武器では、一瞬で片が付いてしまうだろうからな。お前の実力のほどを確認させてもらっているだけだ」


「イケメンだからって、ごちゃごちゃうるせーんだよ!」


 妙にイケメンにこだわるオーガは、今度は左右に斧をブンブンと振り回す。


 サミュエルはその攻撃をやんわりと剣で受け流す。


 受け流してはいるものの、武器の素材の性能があまりにも違うためか、オーガの斧は少しずつ刃こぼれしていっていた。


 ようやく刃と刃がぶつかり合う音が響く、戦いらしい戦いになった。周りで見ていた者たちは、二人の男が筋肉を躍動させて、武器を振るう様に、かなり興奮しているようだった。


「うおおおおおお! ミュくん、めっちゃカッコいい、超イケメン! さすが顔面偏差値78!」


 一番無駄に興奮しているのは、アンジェラだった。


「さあ、そろそろトドメの一撃! 愛と欲望のハンサムソウルクラッシュを食らわせちゃってーー!」


 アンジェラの一声を合図に、サミュエルはオーガと少し距離をとる。決めゼリフを言わないといけないからだ。


「顔面偏差値58の自称イケメンよ! 貴様もすでにその身で感じていよう。この俺との圧倒的な実力差を!」


(実力差というか、大きいのは武器の性能差だがな)


「お前がこの俺の足元に跪き、自らが顔面偏差値58の自称イケメンに過ぎないことを認め、これ以降は真の超絶イケメンであるこの俺に絶対の忠誠を誓うのであれば、その命までは奪うまい!」


「クッ……」


 相手のオーガ男も、実力差、というか武器の性能では全く敵わないことはすでに悟っていた。


 もちろん、顔面偏差値でもサミュエルの方が上であることも、割と最初から認めている。


「俺は、俺様は……」


 オーガの男が何かをつぶやきだした。


「俺は一度たりともイケメンを自称なんてしてねえええ!!」


(……その通りだ)


 自称していないのに、自称イケメン呼ばわりされたオーガ男は、最後に渾身の力をこめて斧を振り上げると、サミュエルに向かって突進してきた。


「それが貴様の答えか! では、食らうがいい! 必殺、愛と欲望のハンサムソウルクラッシュッッ!」


 サミュエルは飛び上がると、剣を頭上に構えオーガ男の武器に向かって一直線に振り下ろした。


 バキーーーン!


 鈍い金属の破裂音と共に、オーガ男の武器は粉々に崩れ去った。オーガ男は、ガクっと膝を落とした。


「ふぅ、また下らないものを壊してしまった……ああ、俺は何て罪な男なんだ……」


 ようやくこの下らなすぎる茶番劇が終わった。


「ぎょへえええ!! ミュくん、超絶カッコいい! めっちゃ好きーーー! こっち向いてーーー!」


 緊迫感ありそうな決闘の終結シーンに、アンジェラの金切声だけがアホのように響いていた。

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