第31話 城の名は……ということで、デモンズキャッスルへようこそ
「箱はカラだ! ほら見ろ! ミュは負けだ! デモンズキャッスルの勝利だあああ!!」
サミュエルは歓喜のあまり、手に持った箱を振り回し、空へと投げ上げた。そして、いつもクールな彼にしては信じられないほど大声で叫んだ。
「ミュくん、自分が負けたようなもんなのに、随分と嬉しそうだねぇ……」
いつも変人街道を突っ走っているアンジェラが、さも自分は冷静沈着な人間であるかのように、歓喜に沸くサミュエルを白い目で見てくる。
「い、いや、そんなことはないぞ。それに別に俺は負けていない。負けたのはただの”ミュ”という名称だ」
「ほぅ。まあ、いいや。ということで、皆の者! 耳の穴かっぽじってよく聞くがよい! これから、この城の名は、イケメン魔王様と囚われの美少女の住まう城・デモンズキャッスル! この町の名は、お前たち人間界を追われた極悪人たちの集う街・ヴィランズタウン! そして、我らの餌食となるお宝に満ち溢れたこの島の名前は、エビルアイランドとなったどおお!」
「うおおおお!」
アンジェラの宣言を聞いて、エビルアイランドの住人たちは、一斉に歓喜の叫び声を上げた。
「デモンズキャッスル、ばんざーい!」
「バンザーイ!」
「ヴィランズタウン、ばんざーい!」
「バンザーイ!」
「エビルアイランド、ばんばんざーい!」
「バンバンザーイ!」
サミュエルもほっと一安心だった。が、よくよく聞いてみるとさっき、この小娘何と言った? イケメン魔王様と囚われの美少女だと!?
そもそも自分は魔王ではない。ただの魔王の孫だ。
それに、何より、アンジェラは囚われてもいないし、美少女という部分もだいぶ怪しい。突っ込みたい気もするが、そこを深く追及するのは藪蛇というものだ。サミュエルはこの何気ない一言を受け流すことにした。
こうして、ようやく、ついに、城と町と島の名前も決まった。
ということで、今度こそドワーフを探し出し仲間にして、鉱石を掘り出しお宝をゲットするのだ。
ドワーフ捜索隊のメンバーは、いつものアンジェラ&サミュエルに、人間チームからはトムの息子のチムとハムの息子のボム、そして、コボルトのタボ、ツボ、トボ、獣人からは、リーダーでオオカミ獣人のモフオ、チーター獣人のニャリン、キツネ獣人のコンコン兵衛と計十名の”精鋭”で編成されることとなった。
ジャンボイーグルで前回までに捜索を終えたエリアまで飛んでいく。
地図を作れるチムやボムを筆頭に、コボルトたちが新開発商品である「タカの爪せんべい」を食べて視力をパワーアップさせ、探索に当たるのだ。コボルトたちの視力がタカ並みになり、怪しいものは即座に発見できるようになった。
彼らが見つけるものの多くはただの動物だったり、ちょっとした魔物だったりだったが、捜索3日目にしてついに知的生命体が野宿をしたと思われる跡を発見することができた。
「ちょっとそこを見てください! 火を使った跡があるような気がします」
「どれどれ、んじゃ、下りて確認してみっぺ」
「お宝発見の香りがプンプンするよぉー!」
いや、ドワーフそのものはお宝じゃないだろうとサミュエルは心の中で突っ込む。
一行はコボルトのツボが見つけた野営地跡に下り立った。
そこには、石を円形上に並べてその中に薪を組んで火をつけた形跡があった。近くには動物の骨を捨てた跡も残っていた。しかも、それが割と新しいのだ。ということは、間違いなく、この近くに誰かがいる。
次は彼らがどちらの方向に移動したのか、足跡をたどる必要がある。さすがに足跡らしい足跡は残っておらず、それをたどるのは難しそうだった。
こんな時こそ、オオカミ獣人モフオとキツネ獣人コンコン兵衛の出番である。二人はイヌ科の獣人のため、嗅覚が鋭いのだ。
その場に残っていた生物の匂いから、慎重に行先をたどる。香りのする方には、確かに二足歩行の生き物数名が通ったような痕跡が残っていた。
モフオによると、それと同時に獣の臭いもするらしい。これらの事実から推測するに、おそらく、ドワーフたちは狩りに出たのだろう。そして、獲物を仕留めて、ねぐらに帰るところとみる。
「よっし、じゃあ、慎重に後を追いかけよう!」
ドワーフを仲間にしたいので、下手に争いになるのは避けたい。慎重に、だができる限り迅速に、サミュエルたちはドワーフと思しき者たちの後を追った。
しばらく行くと、岩山の前で匂いが途切れる。よく見ると、重なり合った岩の陰に入り口があり、その奥が洞窟になっているようだった。
オオカミ獣人やキツネ獣人は嗅覚と聴覚に優れている。
「大将、この奥から大勢が生活している気配がしますぜ。ドワーフの匂いを嗅いだことはねえんでわからねえが、俺ら獣人とは明らかに違う匂いだ。ここに住んでいるのは、大将たち、人間に近い存在だと思いますぜ」
これは間違いない。ついに念願のドワーフの本拠地を見つけたと考えていいだろう。
「相手は何人ぐらいいるのだ?」
「正確にはわからねえが、少なくとも数十名はいるな」
ドワーフはコボルトとは比較にならないぐらい知恵もあるし、力も強い。話し合いは可能だろうが、いきなり押しかけて行ってはトラブルになる可能性もゼロではない。
「そうか、ならば慎重に……」
「じゃあ、ドワーフたちに会いにレッツゴー!」
「お、おい!」
慎重に中に進もうとサミュエルが言い切る前に、恐れを知らぬアンジェラは洞窟の中にイノシシのごとく駆け込んでいってしまった。
猪突猛進とはまさにこのことだ。
仕方なく、サミュエルたちはアンジェラを追いかけるのだった。




