第28話 屋台四軒と四姉妹をまとめてゲットする
「はいはいはい、そこまでー。ミュくん、ここからはプロの仕事よ、任せて。うっふんっ」
いい感じにたこ焼き屋の女将さんを落とせそうになったところで、ウィンクをしながらジョセフィーヌが二人の間に割って入ってくる。
「な、なんなんだ、あんたたちは。って、ジョセフィーヌとおかきさんじゃないかい!?」
三人は知り合いらしい。
「二人はそこのイケメンと知り合いなのか? そのイケメン使って、あたしのことからかったんじゃないだろうね?」
急に現れたイケメンと知人の姿に、たこ焼き屋の女将さんは訝しそうな顔をしていた。
「まさか、この人はね、ミュくん。あたしたちのアイドルよっ。ああ、でも、残念ながら、彼がメグのたこ焼きに胃袋を掴まれちゃって虜なのは本当よ。食のスペシャリストのあたしとしては悔しいところなんだけど」
「そうやよ。ミュくんがメグのたこ焼きを毎日食べたいゆうて、今日はあんたんこと口説きにきたんや」
「あたしのたこ焼きをかい?」
メグと呼ばれたたこ焼き屋の店主は驚き顔になった。自分の作るたこ焼きには自信があるものの、町でも有名な食の達人たちに褒められるとは。しかも、いつぞやのボロを纏ったイケメンが立派になって自分を口説きにきたというのだから、たこ焼き屋冥利に尽きるというものだ。
「ああ、その通りだ。俺は、あなたの作るたこ焼きを食べて以来、その味が忘れられない。目を閉じてもたこ焼きが見えるぐらいなんだ。だからどうか、俺のために、魔王の島に来て、そこでたこ焼き屋を開いてくれないだろうか?」
「魔王の島だって!?」
「あ、ああ、そうなんだ。今、俺たちは、あの島で町を作りながら、お宝を探しているんだ。確かに、魔王の島と聞くと躊躇するものがあるだろうが、今はかなり生活環境も整ってきていて……難しいだろうか?」
魔王の島なんて聞いたら、たこ焼き屋の女将もびっくり仰天するだろうとは思っていたが、案の定の反応だ。
「合点承知だよ」
「えっ?」
「この店ごと魔王の島に引っ越せばいいってことだろ?」
「えっ? そうなのだが、本当にいいのか?」
「構わないさ。あんたのようなイケメンがそこまであたしのたこ焼きを気に入ってくれたというならば、もう引っ越すしかないだろう!」
「本当の本当にいいのか?」
もっと抵抗されるかと思っていたが、思いのほかあっさりと了承するメグ。サミュエルは、アンジェラをはじめとする人間たちのこの得体のしれない度胸には恐れ入っていた。
「その代わり、一つ条件がある」
「な、何だろうか?」
たこ焼き屋の女将が提示する条件なるものが、「毎日口説いてくれ」とかだと正直しんどいが、たこ焼きのためだ……。
「あたしには三人妹がいるんだよ。で、妹たちもそれぞれ店をやっていてね。妹たちも一緒に魔王の島で店ができるならば行ってやってもいいよ」
「なんだ、そのようなことか。どんな店なのかは知らないが、むしろ大歓迎だ」
サミュエルがその言葉を言い終わると、絶妙なタイミングで三人の女性がたこ焼き屋の前にやってきた。その三人とメグ、それぞれ姉妹だというがパっと見たところ、髪の色や雰囲気が思いのほか似ていない。
「ミュくん、お話は聞いていました。私が二女のジョーです。品行方正なお好み焼き屋やっています」
「ミュ、ミュくん……さん、ありがとうございます。わたしは三女のベスと申します。あの、わたしは、普通のお、おでん屋さんをやっています……です」
「ミュくーん、ヤッホー! あたし四女のエイミーだぉ。あたし、クレープ屋さんやってまっす。よろぴくぅ!」
「あ、ああ、よろしく頼む」
四姉妹、それぞれ個性的過ぎて性格もまつで似ていないが、それぞれ違う店を開いているというのがまたいいではないか。サミュエルは、お好み焼きもおでんもクレープもよく知らないが、実はクレープは気になっていたのだ。この前買い物したジュースバーの近くにあって、サミュエルもよく知っている食べ物であるバナナが店先に飾ってあったからだ。
エイミーと名乗った女性の顔を見たら、憧れのチョコバナナという言葉が頭に浮かんだ。ちょうどエイミーの髪色がバナナの皮と同じ色でもあったからだ。
「イエーイ! 超イケメンでラッキー!」
「エイミー、あなたの言う通りね。見目麗しい男性の姿は、非常に目の保養になります。ああ、私のこれからの人生が希望に満ち溢れたとても豊かなものとなることを感じるわ」
「……ぽっ」
こうしてほぼ難なく念願のたこ焼き屋だけでなく、追加で屋台3店舗をゲットしてしまったサミュエルだった。
これも、口説きテクの特訓の成果だと思いたい気もするが、もしや口説きテクなどなくても落とせたのではないかという気がしないでもない。それほど四人はあっさりと仲間になってくれたのだから。
サミュエルは久しぶりのメグが作る極上のたこ焼きに舌鼓を打った。
(ああ、これだ! これこそが俺が求めていた至福のひと時! たこ焼きこそこの世の縮図、宇宙のすべて、万物の根源だ!)
恍惚とした顔つきでたこ焼きを噛みしめながら味わうイケメンの姿に、たこ焼き屋のメグだけでなく、ジョー達三人もご馳走を味わったような気分を満喫するのだった。
「ミュくーん、あたしたちのクレープも食べてみて、きっとめっっっちゃ気に入るからっ」
「では、私のお好み焼きもご賞味下さい。たこ焼きがお好きであれば、是非に」
「あ、あの……もうお腹いっぱいかもしれないですけど、お、おでんはローカロリーだし……お口直しにおひとついかがでしょうか……?」
続いて、たこ焼きに似て非なる食べ物、ジョーの作るお好み焼きと、見た目の香りも味わいもたこ焼きとは一線を画するベス提供のおでん、それから前回から気になっていたバナナが使われているエイミーのクレープも食べた。
四者四様で、どれも魅惑の逸品、絶品料理だった。こんなソウルフルなフードたちが自分の城のお膝元で食べられるようになる日が来るとは。そう思うと、サミュエルは感慨深かった。
こうして四姉妹と四つのソウルフードをゲットしたサミュエルたちは、意気揚々と魔王城のある島へと戻ったのだった。




