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たこ焼きで釣られた魔王の孫と人間たちの大魔王すぎる街づくり――デモンズキャッスルパークへよくぞきた!  作者: いか墨ドルチェ
第一部 領地建設編

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第21話 たこ焼き屋を口説き落して、絶品たこ焼きを我が掌中に!

 ドワーフを仲間にすべく、南の山岳地帯を目指すはずだった。だが、獣人たちの襲撃と降伏によって住人が劇的に増えたことから、魔王城は大きな変革期を迎えていた。


 彼らの住処を用意し、衣類も整えた。そして、何より、彼らが望んでいた旨い飯である。


 旨い飯と一言で言っても、獣人たちは種族によって好みも異なる。


 お食事担当リーダーのジョセフィーヌが提案する。


「この城の仲間も随分と増えたでしょ? だから、あたし考えたんだけど、ここにレストランを開こうと思うの。そうねぇ、『荒くれミート亭』なんて名前どうかしら?」

「おっ、いいじゃん、いいじゃん大賛成!」

「どうせだったら、魚料理メインの店も出してけれ。おいらたち、たくさん獲ってくるだよ」

「わかったわ。じゃあ、そっちは『ル・ビストロ・デュ・ポワソン・フー』にするわ。じゃ、ガンちゃん、レストランの建築お願いね」

「ラジャぢゃ!」


 ジョセフィーヌによると、『荒くれミート亭』は庶民向けで、ルなんたらの方はちょっと高級路線なんだそうだ。レストラン方式にすることで、各自好きなものを好きな時に食べることができるようになる。


 だが、レストランが二軒だけというのもなんだか淋しい。ということで、人間たちは次々と提案を繰り広げた。


「おらはパン屋さんがほしいだっぺ!」

「んじゃ、いっそのことカフェベーカリーにするのはどうだっぺ?」

「カフェがあるならバーを作るのもありだっぺ!」


 トムたち農業チームが、自分たちが作ったものをメインで提供できる店を作ることを提案する。


「た、たこ焼き店を出すのはどうだろうか……?」


 この手の話し合いの場では珍しく、サミュエルが提案をした。皆が一斉にサミュエルを見た。獣人やコボルトたちは、そもそもたこ焼きを知らないのできょとんとした顔をしていた。


「おお、いいじゃん! ミュくん、マジでたこ焼き好きだなー! じゃあ、ミュくんはたこ焼き屋さんね!」

「い、いや、俺はあんな複雑な料理は当然作れん。ジョセフィーヌ、たこ焼きは作れるか?」

「作れなくはないけれども、あたしよりももっと向いている人がいるんじゃなくって?」

「それは誰だ?」

「もちろん、たこ焼き屋さんだよ!」


 アンジェラの言葉にサミュエルはずっこけそうになった。それはそうなのだろうが、この島にはたこ焼き屋さんはいない。


「こうなったら、口説くしかないね、ミュくんが」

「く、口説くだと?」

「そりゃ、たこ焼き屋の女将さんも女だからねぇ。ミュくんのようなカッコいい男に甘~い言葉をささやかれたらこの島に出店してくれるんじゃないかな? あの女将さんぐらいのお年頃になると、旦那はもう『風呂』『飯』『寝る』ぐらいしか言ってくれないだろうからねぇ」

「そうね! 名案だわ! ミュくんならばいけるわ!」


 アンジェラの案に、ジョセフィーヌも賛成する。が、サミュエルは、生まれてこのかた、異性を口説いたことがない(当然、同性もない)。


 思わず口説きたくなるような異性が近くにいなかったのもある。が、それ以上に、魔王の孫ということで部下たちには一目置かれた存在だったので、女性に対してだけでなく対人関係全般において、こちらから積極的になる必要がなかったのだ。


「口説くとは……つまりは、どうするのだ……?」

「ミュくん! わたしを見て!」


 サミュエルはアンジェラのことを見た。見たからなんだという顔つきで。


「パッションが沸き上がって来るでしょ!? 思わず、『ああ、アンジェラ! 君はどうしてこんなに美少女なんだ! 君のような美少女、この地上のどこを探してもほかにはいないぞ! どうか哀れな恋の奴隷と化した俺の心をもてあそんでくれ!』 みたいになるでしょ!?」


(いや……、全くならないのだが……)


「そうよ、アンちゃんの言う通りよ! 思わず目の前にいるあたしのような女性が女神に見えてしまい、口が勝手に甘い言葉を紡ぎ出したくなるでしょ!? 『ああ、ジョセフィーヌ! 俺の女神! 可憐なる俺の赤きバラよ! 君の前では太陽の光でさえもかすんでしまう!』 って言いたくなっちゃうでしょ!?」


(……そもそもお前は男だろうが……だからというわけでもないが、やはり全く言いたくならないのだが……)


「ま、ミュくんは田舎者っぽいからねぇ、田舎にはわたしのような可憐な美少女はいなかったんだろうなー! だから口説きテクニックを磨く必要もなかったと。おー、ジーザスですなぁ!」


 田舎者とバカにされるのはもう慣れた。そこはもういい。


 だが、とりあえず、アンジェラもジョセフィーヌも自己評価があまりにも高すぎる! もっとも、それはそれで幸せなことなのだろう。


「よっし! ミュくん、こうなったら練習あるのみだよ!」

「練習?」

「そう! ミュくんの当面の仕事は、この城にいる女性という女性を、さっきみたいなセリフで口説き落とすことよ!」

「まあ、それ、最高ね! あたしは口説かれなくてももう落ちちゃっているけどぉー! キャー、言っちゃったわっっ」

「とりあえず、誰でもいいから三人の心をミュくんの超絶口説きテクでつかむことができたら、ラスボス・たこ焼き屋の女将さんを落としに行こう!」


 レストラン開設の話をしていたはずが、いつの間にか異性を口説き落とすテクニックを磨く話になっていた。


「えっ、ミュくんが口説いてくれるの!? マジ! 行くしかないっしょ!」

「ちょっと、押さないで! 私の方が先に並んでたから!」


「はいはい! 皆押さないで、順番ね、順番。並んで並んで! もう、ミュくんってばモテモテやん!」


 なぜか、アンジェラが玉座の前で交通整理をしている。


 サミュエルに口説かれたい女性たちが、大挙して押し寄せてきたのだ。


 すでにモテモテなサミュエルには口説きテクなど不要な気もするが、たこ焼きのためである。何としてでもあの女将さんを口説き落として、この島でたこ焼き屋を開いてもらわねばならない。そのためであれば何でもする覚悟でサミュエルは玉座に腰を下ろしていた。


 この際、たこ焼き屋だけでなく、気に入った店はすべてこの魔王城の城下に出店させよう。あの町の屋台にはほかにも気になる店がたくさんあったのだ。


(待っていろ、人間ども! お前たちが編み出したこの世のありとあらゆる旨いものを、魔王の孫である我が掌中に収めてみせようぞ!)


 サミュエルは自分の右手を眺めると、決意をこめて固く握りしめるのだった。

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