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デモンズキャッスルパークへようこそ!――謎の美少女にたこ焼きで釣られた魔王の孫のトンデモない街づくり  作者: いか墨ドルチェ


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第15話 第一回コボルト村議会

 コボルトたちは、どうする? と言いたげな目でお互いを見合った。


「ごほんっ。こ、こういうときにいい方法があるぞ」

「な、なんでしょうか……?」

「そ、それはだな、民主主義、つまりは多数決でどうしたいのか決めるのだ」

「たすうけつ?」


(そうだろ、そうだろ。知らんだろ、お前たちは、多数決を! 民主主義を!)


 サミュエルは、ちょっと得意気に、だけど若干恥ずかしそうに多数決で決めることを提案した。彼自身も少し前に学んだばかりの文化であるが、今やすっかり民主主義という名の魅力に、彼は毒されていた。


「やろう! その多数決とやらを!」

「おお、面白そうだな!」


 特に若者は乗り気だった。往々にして、群れの年長者というのは保守的になりがちである。そしてそういう奴に限って権力を握っているので、彼らの鶴の一声で若者の冒険心は封じられてしまうのだ。その口うるさい大人と、自分やちびっこの意見の価値が同等であると言われて、ときめかないはずがなかった。


 民主的な意志決定を求める若者たちの声は、こうなるとすでに無視できなかった。


 コボルトの村落では、いわば独裁制に反対して、平等な選挙権を求める若者たちによるプチ革命が起きたのだ!


 コボルトたちは、狩猟や採集に出ているものの帰りを待った。そして、集落の全員が揃ったのを確認する。いよいよ、彼らにとって初めての議会が開かれようとしていた。


「えー、では、僭越ながら司会を務めさせていただきます、アンジェラと申します。第一回コボルト村議会における議題は、『人間たちと手を組んで、お宝探しに協力する見返りに、文明的な衣食住を手に入れるか否か』になります。まずは、ご意見のあるコボルトさん、挙手をもって発言をお願いします」


「はい!」


 真っ先に手を挙げたのは、多数決をやろうと言い出した若者のうちの一人だった。


「俺は、賛成します。皆さん、人間を見てください。皆、俺たちよりも綺麗でカッコいい服を着ています。人間に服を作る技術を教えてもらえれば、もう冬の寒さに震える必要はなくなります。それだけでも協力する価値はあると思います!」


 コボルトの集団からは、「おおー!」「確かに!」といった声が上がる。


「ほかにご意見は?」


「はい!」


 今度は、アンジェラとサミュエルの芸を堪能した子どもが手を挙げた。


「このお姉ちゃんは見たこともない食べ物を持っていました! 見た目は変だったけど、食べ物からはとってもいい匂いがしました。僕もそれ、食べてみたいです」

「おっ、そこの男子、いい目の付け所ですなぁ。これは、オレンジといいます。甘酸っぱくてジューシーですよ~! お姉さんたちの仲間になったら、このオレンジだけでなく南国フルーツ食べ放題ですよ!」

「ついでに目玉焼きやオムレツなど、お前たちは知らない未知の料理もだ!」


 今度は、育ち盛りの子どもたちが「いいなー」「食べてみたい」と声を上げた。


 こうなると、お年寄りが「人間は危険だ! 100年前の魔王様の末路を思い出せ! それにそもそも我々をこの島においやったのは人間たちだぞ!」などと声を上げにくくなる。それに彼らだって、暮らしを向上させられるものならばそうしたいと願ってはいるのだ。


「さあ、他に意見はないですか? 今のところ賛成意見だけのようですが、反対意見を述べておきたい方はいますかー?」


「……はい」


 この集団の中では一番の長老と思しきコボルトがおずおずと手を挙げた。さすがに、長老の威厳をここで少し見せておかねばならない。


「その、わしもおおむね賛成ではあるのだが、危険はないのだろうかと、それだけが心配じゃ。人間はわしらを迫害してきたじゃろうが……」

「おじいちゃん! もしかして、人間にいじめられた過去があるのでしょうか?」

「あ、いや、わし自身はないが、じいさまから聞いた話で、人間はわしらの姿を見るだけで、斧を振り上げて襲ってくると……」

「ふむ。そういうことですか! だったら大丈夫。わたしは斧を持っていません! ここにいるおかきさんも斧は持っていません。持っている武器は(もり)だけです! 同じくここのポムも弓矢と短剣を持っていますが、斧は持っていません。ミュくんもカッコいい剣しかもってないので、大丈夫です! ない斧は振り上げられません!」


(いや、そう言う問題じゃないのでは……)


「ああああっ、しまった! ここにいる人間は斧を持っていませんが、魔王城にいる人間の中に、一人だけ斧を振り上げるのが趣味の男がいました……」


 アンジェラはかつてないほど青い顔をしていた。


「いや、ガンテツだったら大丈夫だろう。彼は木を切るのが仕事なんだ。ということは、同じ斧で生き物を襲ったりはしない。お前たちもわかると思うが、肉を切ると刃の切れ味が落ちるからな」


 なんで俺がフォローしているんだと思いながらも、サミュエルはガンテツのことをかばった。


「そもそも、お前たちを襲うことが目的であれば、このような話し合いの場は設けないだろう」


 またしても、なぜ俺がフォローを……と思いながら、サミュエルは言葉を続けた。


「お前たちは、生肉しか食べたことがないだろう? 人間の社会には実にうまい食べ物があるぞ。フルーツや卵料理だけでなく。例えば、たこ焼きやビーフシチューといった。信じられないというのであれば、一度味わってみるがいい」

「あっ、うち、思いついてもうたわ。これからうちとポムちゃんで狩りしてくるよって、それを料理したの食べてみたらええんちゃうか?」

「おう、ばあば、おいらに任せろだんべさ! マタギの血が騒ぐだべー!」


 こうして、ポムとおかきさんは森の中に消えていった。


「おっし! じゃあ、二人が戻ってくるまで、わたしたちは、だるまさんが転んだでもしよう!」

「えっ、何が転んだって!?」

「だるまさん!」

「だるまさんとは一体誰だ? なぜ転んだのだ?」

「そこ追及しちゃうかなー。頭が固いねぇ、ミュくんはさぁ」


 こうして、唐突に総勢約30人でだるまさんが転んだをするサミュエルたち。


 だるまさんが転んだ。


 なぜ、だるまさんが転んだと言うのか、いろいろつっこみたくはなるのだが、なかなかよくできた遊びだと感心した。欲をかきすぎると鬼に捕まり、守りに入ると戦いが終わらない。


 しかも、この遊びの素晴らしい点は、老若男女問わず楽しめるところだ。


 空き時間にレクを楽しむという発想は、そもそも成人した魔族にはない。特に、サミュエルは魔族の中の王族だ。しかも、彼がこの世に生まれてからというもの、周りの大人は常に戦いに明け暮れていたのだ。子ども同士で遊んだ記憶などもなかった。


 人間とはこうも柔軟な発想力を持っているのか。


「だーーるーーまーーさーーんーーがーーこーーろんだっ。はい、ミュくん、ちょっと動きました」

「いや、絶対に動いてない!」

「そーいうのなしなんでー」

「クソッ!」


 生まれて初めてのだるまさんが転んだは、サミュエルにとって初めてのレクリエーションとなった。

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