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デモンズキャッスルパークへようこそ!――謎の美少女にたこ焼きに釣られた魔王の孫のトンデモない街づくり  作者: いか墨ドルチェ


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第12話 トム、ハム、サム三兄弟とその一家

 トム一家のための家づくりが始まった。まずは、そのあたりにあった小屋を解体する。そして、小屋の周りに生えている食料にならない草木を刈り取る。


 ガンテツの仕事ぶりは、完全に人間離れをしていて凄まじかった。


「おりゃああ、とりゃあああ、うりゃああああ」


 重い丸太も平気で持っては投げ、持っては投げで、あの筋肉は伊達ではないことがよくわかった。


 あっという間にいくつかの小屋が解体され、更地が出現した。今度はそれを新たに組み立て直す作業となる。ガンテツは木材を仕分けすると、斧を振り回し、目分量で長すぎる木をぶった切っていく。


「ちぇすとおおおお!」


 その作業が終わると、今度は木材を順番に並べ、組み立てていった。


 ほとなくして、窓のないただ四角いだけの建物3つが、1軒の本格的ログハウスへと生まれ変わった。


 サミュエルは、周りの不要な草木を除去した程度で、ほとんど何もしていない間に、家が1軒完成してしまったのだ。


「はー、もう飽きたわい、わしゃ、ちと寝るわー」


 本人は飽きたと言うが、すでに仕事を終えたように見えるので、十分ではないだろうかという気がしないでもない。ガンテツはそのままその場でいびきをかきながら寝てしまった。


(人間、恐るべし……)


 サミュエルには到底このような家をつくることなどできない。


 もちろん、相当重いだろうが、ガンテツが放り投げていた丸太を担ぎ、移動させることはできる。が、これだけの家の設計図を頭に入れて、正確に再現するのは至難の業だ。


 仮に、家来だったサダムが今戻ってきたとして、一緒に人間を滅ぼしましょうと自分をそそのかしてきたとしても、「それはよそう」と全力で説得しようと思った。


 しばらくすると、東の方からワイバーンの鳴き声が聞こえてきた。トム一家とやらを連れて、アンジェラたちが戻ってきたのだろう。サミュエルはガンテツを起こすと、共に魔王城へと戻った。


 城門の前では、なぜかナオミが待機している。


「ついに完成しましたよおお! さ、ミュくん、早速お召替えを」

「いや、今である必要はないと思うのだが……」

「今でないといけません。一刻も早く!」


 なにやらすごい勢いでナオミに迫られ、やむを得ずにサミュエルは新しい服に袖を通した。というか、そもそもそれは袖のない服だった。


「ミュくんの上腕二頭筋をこれでもかと見せつけるには袖なんぞ要りません!」


 そして、妙に胸元の開いた服だった。


「ここに、留め具などはないのだろうか……?」

「ありません! ミュくんの大胸筋をこれでもかと見せつけるためにはそこを閉じるわけにはいきませんので!」


 なぜに上腕二頭筋と大胸筋を見せつける(しかも、誰に?)必要があるのか不明ではあるが、ナオミに力説されると、それ以上言い返すことはできなかった。


 黒い服に金色のベルトを締め、黒いマントを羽織ると、絵本の中に登場しそうな魔王のようだった。


「さ、皆にお披露目しましょう! カッコよくてセクシーで、我々の心を鷲掴みにする新星ミュくんの姿を!」

「あ、ああ……」


 玉座の間には、すでに皆が集まっていた。


(1、2、3……えっ、多くないか!?)


 トム一家は思いのほか大家族だった。トムにトムの妻、それから息子が4人の娘が2人。長男はすでに結婚して子どももいる。ということで、総勢10人。魔王城は一気に賑やかになった。


 それにしても、アンジェラの小舟は4人乗りじゃなかったのだろうか。


「やあ、ミュくん、おらがトムだっぺ」


 ものすごく気さくに自己紹介してくるトム。そして、思った通りのミュくん呼び。


「畑のことさ、全部おらに任せてくんろ」

「これが噂のミュくんだっぺか!? あんれまぁー、めっちゃカッコいいだんべさ!」

「ジョセフィーヌちゃん、アンちゃん、誘ってくれてありがとなー。おら、こげなイケメンと同居できてうれしいだよ」

「よおっし、みんな! 耕すぞー!」

「んだんだー!」


 トム一家は、島について早々、初日からめちゃくちゃやる気満々で城を飛び出していった。


「あっ、植物のありかは、ミュくんに聞いてね! ミュくん、トムっちたちを案内お願い!」


 人使いの荒い人間たちだ。もっとも、当人らもよく働いているので、文句は言えない。


 トム一家は、家の周りを耕すチームと畑に植えるものを採集するチームに分かれた。サミュエルは、アンジェラに言われた通り、集落の周りで取れる各種植物の元を案内して回った。採集チームは、場所の確認をしつつ、果実を採取してみたり、植物を根元から抜いてみたりと、最適な方法で畑に植えるものを集めているようだった。


 これぞプロの仕事なのだろう。


 小一時間ほど植物の採集をし、畑に戻ってみると、信じられないほどきれいに畑の土づくりから畝づくりまで終わっていた。


「さあ、とってきたもんを植えるぞー。ここはおらたちに任せて、ミュくんは城で休んででけれ」

「んだんだ!」


 翌日は、同じ調子でハム一家がやってきた。酪農家のハム一家も8人の大家族だった。


「おいらがハムだべさ。ミュくんよろしくだんべさ」

「おい、おまえら、おいらたちも負けてらんねーぞ。早速、鳥とイノシシと水牛とヤギを捕まえに行くべ」

「えいえいおーだべさー!」


 ハム一家は酪農家を名乗ってはいるが、それ以前に凄腕の猟師だった。彼らは野生の動物を生け捕りにして、自らの牧場で繁殖させながら育て上げているのだ。


 あっという間にハム牧場は動物たちの鳴き声が響き渡る、のどかな場所となった。


 そして、さらに翌日。今度は最後、漁師のサムがやってくる。


 今度は何人家族だろうと思ったら、サムは独身だった。トムやハムの両親でもあるじさまとばさまと3人でやってきた。サムも若手の有望株の漁師だが、じさまは一世を風靡した釣り人で、ばさまは大物として名高い海女だった。


「おれっちがサムじゃけえ。ミュくん、世話になるけえ。未知の魚たちがおれっちを待ってるけえ! 任せんさい!」


 こうして、トム・ハム・サムの三兄弟、一家そろって総勢21人が魔王城の仲間に加わったのだった。

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