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4.未知のモンスター


 地球上にはじめてモンスターが出現するようになったのは、今から約50年前のことだった。


 ウサギかモルモットくらいの小さなものから、クマやゾウのような大型のものまで。

 ただその姿は、地球上のどんな生物とも一線を画す、不気味なものだった。


 緑色の皮膚をもつもの、顔らしき部位の中心に目のような大きなガラス質がひとつだけついているもの、肢が5本や6本あるもの、体に対して大きすぎる角や牙をもつもの。

 地球上のどんな生態系にも属さない、完全な未知の生き物。


 食事をとる様子は観察されず、繁殖行動も不明。

 どこから出現したのか、どうやって生まれてくるのかも未だわかっていない。


 神の怒りか、宇宙からの侵略者か、大国の陰謀か。 さまざまな説がささやかれたが、どれも根拠に乏しいとして、検討されることはなかった。


 それらをラベリングする名称もなかったが、誰が言い出したのか、「映画に出てくるモンスターのようだ」と。


 それ以来、未知の生物群を総称して、モンスターと呼んでいる。


 モンスターは世界のどこかで局地的に現れ、同じ方向へ一直線に走り出す。

 どうしてそんな行動をとるのか、走った先に何があるのか、一切分かっていない。


 モンスターは道中で農作物を踏み荒らし、住居を破壊し、時には人間を襲った。

 厄介な生き物として長い間嫌厭されていた。


 人々は簡易的な住居にこもって暮らすほかなく、農業をはじめとするその土地の産業は一瞬で崩壊した。



 やがて、モンスターが一度出現した土地には、二度とモンスターが湧かないことが明らかになった。


 そうして人々はようやく、壊されたのよりも何倍もの時間をかけながら、少しずつ復興を試みるようになる。


 それでも人類の不安は消えない。


 局所的に出現し、一瞬で暮らしを破壊していくモンスター。それが次に出現するのは、自分が暮らす町かもしれない。


 世界のどこかの町が一瞬で崩壊し、復興を試みる一方、また新たな町が破壊し尽くされる。


 それは地球上どこでも起こり得て、50年間で40か所を超える被害が出たといわれている。



 今から16年前。日本ではじめてモンスターの出現が確認された。


 場所は、田舎といって差し支えない、山間部に位置する穂積(ほつみ)市。


  かつての藩主の居城であった穂積史跡公園を中心に、古い官公庁街と住宅街があった。


 中心部を少し外れると一帯には稲作地帯が広がり、水田を割るように大きな川が流れている。

 その川が運んだ土が永く堆積した平らで広大な土地に、大規模な軍の駐屯地があった。


 訓練施設、官舎、軍病院。

 田舎町に似合わない大きな建物が連なる光景はどこか異様なものがあったが、市の外縁をふちどる青い山々も合わせて、自然豊かな場所であったといえる。


 そんな豊かな土地に、突如として小型~中型モンスターが大量に出現した。


 どこから出現したかは不明であり、その異常な発生を、ゲームの世界にたとえて「モンスターが湧いた」と表現する人もいる。


 モンスターは駐屯地の北側から前触れもなく湧き、一直線に南下した。

 その数は1000とも、2000ともいわれており、はっきりしたことは分かっていない。


 穂積もまた、世界中で被害を受けた村や町と同じ道をたどった。


 しかし幸運だったのは、潤沢な装備を持った軍の駐屯地が、市内にあったことだ。


 緊急出動した軍によって、モンスターは駆除された。


 収穫間近だった稲は踏み荒らされ、古い城下町と城砦跡は破壊され、何人かの怪我人は出たものの、人命は失われなかった。


 田舎町の産業が軒並み破壊されたことに変わりはないが、世界的に見れば、被害は軽微といえた。

 モンスターが湧いた町で死者が出なかったのは、世界で初めてのことだった。



 しかし、「一度モンスターが湧いた土地には、モンスターが二度と出現しない」というセオリーが世界で初めて破られたのもまた、この穂積だった。



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