24.空虚
遠くに見える白かった山は、日に日にその白を失い、代わりに麓のほうには鮮やかな緑が茂っていた。
窓から差し込む光は強くなり、暑いとさえ感じるようになった。
だから、ベッドの周りのカーテンを閉めて過ごしている。
俺の命をモニターしていた機械はすべて外された。
昼も夜もお構いなしに脈に合わせて鳴る電子音から解放されると、ここはとても静かなことに気が付く。
「……暇すぎる」
俺の独り言は病室の空気に溶けていった。
やることがない。
ベッド上安静。
許されているのは横になったままスマホやテレビを観ることと、車椅子に乗ってトイレに行くことくらいだ。
そのトイレもこの個室内に完備されているので、つまり俺は、この部屋からは一切出してもらえない。
スマホをぼうっと眺めることにも飽きてしまった。
勉強以外のことにあまり縁がない人生なので、キシのおすすめの映画も、サカイが今ハマっているアニメも、とりあえず言われるがままに観てみたものの、正直よくわからなかった。
今まで手を出してこなかったSNSにも登録してみたが、いまいち楽しみ方が分からない。
次々流れる短い動画はそれなりに楽しめたが、30分もすると目が疲れてきて、見続けられない。
背中の傷の処置の間に、勉強系の動画もありますよ、と親切な看護師が教えてくれたが、それもあまり楽しめなかった。
読み上げてくれるのはありがたいが、正直タイパが悪いと感じてしまった。
文章で読めば数分のものを、40分もかけて解説されるのは、とても非効率に感じる。
暇をつぶすのが目的であるので、タイパを求めるのはおかしいと自分でも思うが、これは仕方ない。
こういう性分に生まれてきてしまった。
というのを正直にキシとサカイに相談した。
建設的なアドバイスとまではいかなくても、慰めてほしかった。
ほんの少しの時間、LINEで相手をしてくれるだけでよかった。
それなのに二人からは「今までがおかしかったんだよ、いい機会だしたくさん寝たら」「空虚な人間 かなしいね」とバッサリいかれてしまった。
なあ、俺たち友達じゃなかったのかよ。
かといってやることもないので、動画サイトを適当にスクロールする。
と、ちょうど目に留まったのは、ある報道系の生配信だった。
「対モンスター防衛機関 施設長 会見」。
どうやら世間では今回の事件——モンスターがゲートを越えて大学構内に侵入してきた、前例のない出来事が、「軍の失態」として捉えられているようだった。
よその飼い猫の動画やゲーム配信の切り抜き動画に比べれば、圧倒的に興味をそそられた。
なんといっても当事者である。
今回の件では奇跡的に死者は出ず、不運な学生1名が重傷、学生と警備員あわせて7名が軽傷を負ったとのことだった。
不運な1名の学生とは俺のことである。
興味のまま、俺は画面をタップした。




