表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/83

24.空虚


 遠くに見える白かった山は、日に日にその白を失い、代わりに麓のほうには鮮やかな緑が茂っていた。


 窓から差し込む光は強くなり、暑いとさえ感じるようになった。

 だから、ベッドの周りのカーテンを閉めて過ごしている。


 俺の命をモニターしていた機械はすべて外された。

 昼も夜もお構いなしに脈に合わせて鳴る電子音から解放されると、ここはとても静かなことに気が付く。


「……暇すぎる」


 俺の独り言は病室の空気に溶けていった。


 やることがない。


 ベッド上安静。

 許されているのは横になったままスマホやテレビを観ることと、車椅子に乗ってトイレに行くことくらいだ。

 そのトイレもこの個室内に完備されているので、つまり俺は、この部屋からは一切出してもらえない。


 スマホをぼうっと眺めることにも飽きてしまった。


 勉強以外のことにあまり縁がない人生なので、キシのおすすめの映画も、サカイが今ハマっているアニメも、とりあえず言われるがままに観てみたものの、正直よくわからなかった。


 今まで手を出してこなかったSNSにも登録してみたが、いまいち楽しみ方が分からない。


 次々流れる短い動画はそれなりに楽しめたが、30分もすると目が疲れてきて、見続けられない。


 背中の傷の処置の間に、勉強系の動画もありますよ、と親切な看護師が教えてくれたが、それもあまり楽しめなかった。

 読み上げてくれるのはありがたいが、正直タイパが悪いと感じてしまった。

 文章で読めば数分のものを、40分もかけて解説されるのは、とても非効率に感じる。


 暇をつぶすのが目的であるので、タイパを求めるのはおかしいと自分でも思うが、これは仕方ない。

 こういう性分に生まれてきてしまった。


 というのを正直にキシとサカイに相談した。

 

 建設的なアドバイスとまではいかなくても、慰めてほしかった。

 ほんの少しの時間、LINEで相手をしてくれるだけでよかった。


 それなのに二人からは「今までがおかしかったんだよ、いい機会だしたくさん寝たら」「空虚な人間 かなしいね」とバッサリいかれてしまった。


 なあ、俺たち友達じゃなかったのかよ。



 かといってやることもないので、動画サイトを適当にスクロールする。

 と、ちょうど目に留まったのは、ある報道系の生配信だった。


 「対モンスター防衛機関 施設長 会見」。

 どうやら世間では今回の事件——モンスターがゲートを越えて大学構内に侵入してきた、前例のない出来事が、「軍の失態」として捉えられているようだった。


 よその飼い猫の動画やゲーム配信の切り抜き動画に比べれば、圧倒的に興味をそそられた。

 なんといっても当事者である。


 今回の件では奇跡的に死者は出ず、不運な学生1名が重傷、学生と警備員あわせて7名が軽傷を負ったとのことだった。


 不運な1名の学生とは俺のことである。

 興味のまま、俺は画面をタップした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ