このまま
ーこのまま
ー
このまま大人になって
僕の掌には何が残る
大切に守ってきた感情
信用、愛情、理性、肉体、
燻んだ思い出
すぐに壊れてしまうもの
少しずつ粉々に砕いていくもの
僕の掌には何が残る
たとえばそれは、僕のものなのだろうか。
消し去りたい
忘れてしまいたい
捨てたい
殺したい
健気でいたい
美しくいたい
泣きたい
壊したい
夢を見ていたい
死にたい
幸せを知ったから
反論を知ったから
贅沢を知ったから
社会を知ったから
愛が薄汚れていたから
偽りも正しさもなかったから
僕はまた大切なものを失う
大切な、憎くて憎くてたまらないもの
怖くて叫び出しそうなほど、愛しいもの
僕の掌には何が残る
消えかけた自我を写して
役立たずの管を抱えて
白い命綱を必死に掴んで手繰り寄せ
きっと、何も考えていないんだろう
何も掴めないし、何にも触れられない
きっと、何も残らない
終わりたいとずっと笑うだけ
終われないから
死を欲して
自由から目を背けて
理屈と戯れて
生に落書きをして
風に凪いで
騒音に泣いて
求めも拒みもせず
なけなしの本能に縋り付いて
また死を欲する
死にたい
解放や自由はいらない
疲れたんだ
僕の掌には何が残る
息を吸って、息を吐いて
大人になって
歳をとって
長生きをして
何が残る
子孫の繁栄、経済成長
金金金金金金金金金
知らない
いらない
全部いらない
俺の掌に残るのは
二つのX
傷だらけの汚い心
障害
喪失感
本当に残るのかも怪しい
紛い物
いらない
いらないんだよ
愛情も、温度も、人間も
感情も、知識も、美学も
家族も、自分も、社会も
夢も、希望も、絶望も
泣きたいんだ
黒い塊を、胸の奥のしこりを
焼けるような痛みを
気だるさを、肉を、臓物を、骨を、子宮を
全部形がなくなるまで踏み潰したい
パンに塗るのもいいかも知れない
水で濯ぐのもいい
ゴミ袋に流し込んでもいい
俺は俺を殺したい
僕の掌には何が残る
必ず何も残らないんだ
だって、だってさ
形や重さや色があっても
空っぽなんだよ
空っぽ
胃の中は空っぽじゃない
胃を出したい、踏み潰してどろどろにしたい
全部大嫌いだ
そんなの関係ないよ
生きるしかないんだから
だって、肉体は死ねないんだろ
お前が嫌いとか、知らない
勝手に生き続けたらいい
こんな風に
笑えるね
笑うしかない
耐えるしかない
生きるしかない
悲しい




