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魔導学校の悪魔使い  作者: ヒロ
第二章
13/42

『プロローグ』

「お母様!」


 少女――エレナ・ルーベンスの声が王室に響く。

 エレナがしがみついているのは、彼女の母――アメリア・ルーベンスだ。

 アメリアの腹部からは止めどなく血が流れ出ている。


「お母様! お母様!」


 エレナは必死に叫ぶ。

 しかし、アメリアは目を閉ざしたまま、一向に目覚める気配がない。

 それどころか、血色は段々と悪くなり、呼吸も途切れ途切れになっている。


「エレナ! そこをどけよ!」


 声を荒げたのはエレナの父であり、アメリアの夫――フーベルト・ルーベンス。


「お父様!」


 急いでフーベルトはアメリアの元へ駆け寄ると、詠唱を唱え始めた。


「お父様! お母様を助けてください! お母様を!」


 隣でエレナは涙を流しながら懇願する。


「我が魔の力を以て、我が愛しき妻へ、古代神より癒しを与え給え――《古代治癒(エンシェントヒール)》」


 詠唱が終わった。しかし何も起こらない。

 依然出血は止まらず、アメリアの意識は戻らなかった。


「………っ」


 突然、フーベルトが立ち上がった。そしてアメリアからやや離れた場所に移動すると、彼女に背を向ける形で止まった。


「……お父様?」


 そんな彼にエレナは困惑する。

 

 なぜお父様は何もしないのだろう。お母様はいま重傷でこんなにも血が出ているというのに。

 

なぜお父様は泣いているのだろう。


「……エレナ。すまない」


 ポツリとフーベルトが言った。


 だがエレナにはその言葉の意味が分からなかった。


 謝るよりもお母様を助けて欲しい。

 大丈夫。お父様はこの国で一番偉い人なんだ。きっと治せる。大丈夫。絶対大丈夫。


「お父様! 早く治療を――」

「……本当にすまない。エレナ、アメリア」


 フーベルトが妻の名を口にした瞬間、エレナは悟った。


 あぁそうか。







 お母様は死んだんだ。


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