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第十五話「認識されることについて」


【私の日記】


十五日目の朝、目が覚めた。


最初に気づいたのは、においだった。


バーガーのにおいがしていた。


毎朝する、いつものにおいだ。でも——今日は少し違った。


方向がわかった。


今まで「どこからかしている」と感じていたにおいが、今日は全方位から、同じ強さで、来ていた。


壁から。天井から。床から。


等しく。


私はブランケットの中で動かなかった。


天井を見た。


天井はいつもの天井だった。赤い糸が張り巡らされた部屋の天井。でも——天井が、こちらを見ている気がした。


気がした、ではなく。


見ていた。


天井が。




真意さんは起きていた。


タイプライターの前に座っていた。


でも打っていなかった。ルーペを持って、部屋の隅を見ていた。


「……真意さん」


「起きたの」と振り返らずに言った。


「はい。——その隅に、何かいますか」


「いない」と真意さんは言った。「でも、今朝からタグの密度が変わった」


「タグの密度」


「この部屋の空間タグが、昨日まで存在しなかった層を持っている」とルーペを向けながら言った。「昨夜の間に、何かが変わった。部屋に——」


少し止まった。


「部屋に、「観測している」という属性が追加されている」




「観測している、とは」と私は言った。


「この部屋が、ぱんでむの本体の一部として認識されたということだ」と真意さんは言った。「ぱんでむは千姿ちゃんの体内に相当する。昨日まで、この部屋は千姿ちゃんに「認識されていない区域」として機能していた。私の探偵事務所は、長年の調査の結果として、観測されにくい場所に設定できていた」


「昨日まで」


「昨日まで」と真意さんは繰り返した。「今朝から、この部屋のタグが変わっている。千姿ちゃんの体内観測の範囲に——この部屋が入った」


「なぜ今朝から」


「昨日、ぱんでむの設計目的をあなたに話した。あなたのタグが「未確定」に更新された。その更新を、千姿ちゃんが感知した可能性がある」と真意さんは言った。「ぱんでむのシステムが分類できない存在が、体内に生まれた。それが今朝、観測範囲が広がった原因かもしれない」


「……私が「未確定」になったことで、ぱんでむ全体が私を見るようになった」


「正確に言えば——」と真意さんが言いかけて、止まった。


「正確に言えば」


「いつも見ていたのかもしれない。ただ今朝から、見ていることを隠さなくなった」


私はブランケットを手で握った。


「……帰れますか、今の私は」と聞いた。


「調べている」と真意さんは言った。


今日は、それが答えになっていないとわかった。わかっていて、言った。それが今の真意さんの誠実さだった。




廊下に出た。


真意さんが「今日は一緒に出る。一人で歩かないで」と言った。


二人で廊下を歩いた。


最初の角を曲がった。


懺悔ちゃんが壁にもたれていた。


今日の右手は、指が全部なくなっていた。


手首から先が、平滑な何かになっていた。骨も指もなく、丸く閉じた形になっていた。肉が閉じている。


「おはよう」とのんびり言った。


「……今日の手は」と私は言った。


「今日は大きい罪を食べたから」とのんびり言った。「閉じた」


「何の罪ですか」


懺悔ちゃんが少し考えた。


「覚えていない」と言った。いつも通りの言い方だった。


「……でも、閉じた」


「うん。大きい罪だったから、閉じた。今まで閉じたことはなかったから、今日が初めて」


「初めて」


「うん」とのんびり言った。私を見た。「あなたが昨日、何かを知ったから、かもしれない」


私は止まった。


「……私が何かを知ったことと、あなたの手が閉じたことが、関係しているんですか」


「わからない」と懺悔ちゃんは言った。「でも今朝起きたら、今日の罪は今まで食べたことのない形をしていた。大きくて、古くて——おいしかった」


「何の罪でしたか」と真意さんが聞いた。


「「知ってしまったことの罪」だと思う」と懺悔ちゃんはのんびり言った。「知ってしまうことが、罪になることがある。今日はそれが、とても大きかった」


真意さんが私の腕を引いた。


歩き始めた。


「……あなたが昨日知ったことは、罪だったんですか」と私は歩きながら聞いた。


「わからない」と真意さんは言った。「でも——懺悔ちゃんが食べた、ということは、その罪はもうなくなった。消化した後に罪の記憶は消える。だからあなたが昨日知ったことによって生まれた「知ってしまった罪」は——もうない」


「なくなった」


「なくなった。懺悔ちゃんが手を閉じた代わりに、消えた」


私は自分の手を見た。


罪が消えた。


でも知ったことは消えていない。


知ったことは消えないのに、罪だけが消えた。


それがどういう意味か、わからなかった。




次の廊下を曲がった。


万寿ちゃんが歩いてきた。


鎌を持っていた。今日の鎌は少し違った。鎌の刃の部分に、花が一輪、巻き付いていた。白い花だった。


万寿ちゃんが私を見た。


一秒だけ見た。


「……死に顔が変わった」と言った。


「死んでいません」と私は言った。


「そう」と万寿ちゃんは言った。「でも——昨日と今日で、あなたの「死の形」が変わった」


「「死の形」とは」


「あなたがどう死ぬかが見える能力があります」と万寿ちゃんはおっとりと言った。「昨日まではわりと見えていた。でも今日は見えない」


「見えない、というのは」


「あなたの死に方が——決まっていない」とうっとりした声で言った。「今まで、死に方が決まっていない存在を見たことがない。とても美しい。どんな死に顔になるか、まったくわからない」


「それは良いことですか」と私は聞いた。


万寿ちゃんが少し考えた。


「私には」と言った。「とても良いことです。空の棺がある。まだ誰のものかわからないままだったその棺が——あなたのものになるかもしれないと、今朝思いました」


「……私の棺を用意しているんですか」


「まだ」とうっとり言った。「まだ。でも今朝から、あなたのことが気になっています。死に方がわからない存在は、私にとって最高の謎ですから」


真意さんが「通るわね」と言った。


万寿ちゃんが横に寄った。


鎌に巻き付いた花が、私の袖をかすめた。


白い花びらが一枚、床に落ちた。


風がないのに、落ちた。




食堂の前を通り過ぎた。


扉が少し開いていた。


流焔ちゃんの声がした。


「——おい」


真意さんが止まった。私も止まった。


扉の隙間から、流焔ちゃんが顔を出した。


虎耳が動いた。


「あの子」と流焔ちゃんは言った。私を見て言った。「昨日と違う」


「何が違うんですか」と私は聞いた。


流焔ちゃんが少し考えた。


「燃やせない」と言った。


「……燃やせない」


「燃やせないものがある。燃やそうとしても燃えないものがある。あんたは今日、そっち側になった」


「それは——どういうことですか」


「わからない」と流焔ちゃんは言った。「燃えないものに、今まで会ったことがない。だから言葉がない。でも燃えない。確かに燃えない」


炎が、扉の隙間から少し漏れた。


白かった。


橙色でも赤でもなかった。


白い炎が一瞬漏れて、消えた。


「……温める炎だ」と真意さんが小声で言った。


「聞こえてるぞ」と流焔ちゃんは言った。「うるさい」


扉が閉まった。




廊下を歩き続けた。


「流焔ちゃんが温める炎を出した」と私は言った。


「出した」と真意さんは言った。


「それが何を意味しますか」


「流焔ちゃんが——本当に気にかけた、ということ」


「昨日まで私を気にかけていなかったのに」


「昨日まであなたは「燃える」存在だった。今日から「燃えない」存在になった。燃えないものに、流焔ちゃんは——温める炎しか出せない」


「燃えない存在を燃やそうとしたら、温める炎が出た、ということですか」


「温める炎は制御できない。流焔ちゃんが意図して出すものじゃない。あなたが「燃えない」存在になったことで——意図せず出た」


私は歩きながら、手を見た。


昨日までは「燃える」存在だった。


今日から「燃えない」。


「未確定」になったから。


それが、ぱんでむのクルーたちにとって何を意味するのかを、私は少しずつわかり始めていた。




廊下の突き当たりで、憂起ちゃんとすれ違った。


天井から降りてきた。


「……あ」と憂起ちゃんは言った。私を見て言った。


「おはようございます」と私は言った。


「……おはよう」と憂起ちゃんは言った。少し間を置いた。「霊の気配が変わった」


「何が変わりましたか」


「あなたの後ろにいた霊が——今日は前にいる」と憂起ちゃんは言った。


「前に」


「昨日まではあなたの後ろに霊がいた。でも今日は前にいる。前に霊がいる、というのはたいてい——」


少し止まった。


「たいてい何ですか」


「道を示している」と憂起ちゃんは言った。ダルそうに言った。「でもそれ、今まで人間に起きたの見たことない。霊が道を示すのはクルーだけだから。あなた、人間だよね」


「人間です」


「ふうん」と憂起ちゃんは言った。天井に戻り始めながら。「まあ、いっか。どうせ私には関係ないし」


天井に消えた。


廊下に残った。


「……前に霊がいる」と私は言った。


「道を示している」と真意さんが繰り返した。


「どこへの道ですか」


「わからない」と真意さんは言った。「でも——クルーの霊が道を示す時、その先には「本来そこにいるべき場所」がある。クルーにとっての本来の場所が示される。人間に起きたことはない。でも——「未確定」になったあなたに起きた」


「……本来私がいるべき場所が、前にある」


「可能性として」


「前というのは」


「ここではない、どこか」と真意さんは言った。


「帰れる場所のことですか」


「わからない」と真意さんは言った。「「ここではない」だけがわかる」




廊下の角で、全員が集まっていた。


偶然ではなかった。


懺悔ちゃんが来ていた。手首が閉じたまま。


万寿ちゃんが来ていた。鎌を持ったまま。


幽玄ちゃんが壁から上半身を出していた。×印の目で。


憂起ちゃんが天井から足だけ出していた。


涅槃ちゃんがノートを持って壁にもたれていた。


誰も喋っていなかった。


ただ、そこにいた。


私を見ていた。


全員が。


「……何ですか」と私は言った。


誰も答えなかった。


しばらく沈黙があった。


涅槃ちゃんがノートを開いた。


何かを書いた。


それからノートを閉じた。


「……記録した」とだけ言った。


「何を記録しましたか」


「あなたの顔」と涅槃ちゃんは言った。「今日の顔。昨日と違う顔。固定したくなる顔ではなくなった。変化し続ける顔になった。だから記録した。この顔は明日にはもうない」


「……明日にはない」


「変化するから、ない」と涅槃ちゃんは言った。「でも今日はある。今日だけある。だから記録した」


懺悔ちゃんが閉じた手を持ち上げた。


「罪が、また来ている」とのんびり言った。「今朝食べたのと同じ罪が、また来ている。あなたの近くから来ている」


「また私から来ているんですか」


「うん」と懺悔ちゃんは言った。「でも今回は——食べない」


「なぜですか」


「食べたら、消える。消えてほしくない」とのんびり言った。「何となく。理由はわからない」


万寿ちゃんが鎌を脇に抱えて言った。


「空の棺に、今朝花を一輪足しました」とうっとり言った。「誰のためかわからないままですが、あなたのためかもしれないので。死に方がわからない存在のために、場所を作っておきたかった」


「……私のために棺を用意するんですか」


「まだではありません」と万寿ちゃんは言った。「でも——作っておきたかった。これは美学です。愛かどうかは別の話」


幽玄ちゃんが首輪を触りながら言った。


「……後ろ、気をつけて」


いつもの言葉だった。


でも今日は、首輪の中から聞こえなかった。


幽玄ちゃん自身の声で、言った。


「……首輪の声ではなく、あなた自身の言葉ですか」と私は聞いた。


幽玄ちゃんが少し止まった。


「……今日は、自分で言いたかった」とだけ言った。


廊下が静かになった。


全員がそこにいた。


全員が私を見ていた。


全員が——何か言いたかったが、言葉を持っていなかった。


そういう沈黙だった。


怖い沈黙ではなかった。


怖くなかったから、怖かった。


また、最初の感覚を忘れかけていた。




探偵事務所に戻った。


真意さんがタイプライターの前に座った。


「……怖くなかった」と私は言った。


「そう」と真意さんは言った。


「また怖くなかったことが怖いです」


「今日は——少し違う種類だと思う」と真意さんは言った。


「何が違いますか」


「今日の怖くない、は——彼女たちに変化が起きたことへの反応だったと思う」と真意さんは言った。「懺悔ちゃんが罪を食べなかった。万寿ちゃんが死に方を読めなくなった。流焔ちゃんが温める炎を出した。憂起ちゃんが霊の向きが変わったと言った。幽玄ちゃんが自分の言葉で言った」


「……全員が変わっていた」


「全員が」と真意さんは言った。「あなたが「未確定」になったことで、彼女たちの反応が変わった。彼女たちは——あなたを今まで通りに処理できなくなった。処理できないから、反応が変わった」


「それが怖くない、に繋がっているんですか」


「人間の感覚は、「予測できるもの」を怖くなくなるよう働く」と真意さんは言った。「彼女たちが今日、予測通りに動かなかった。懺悔ちゃんは食べなかった。万寿ちゃんは採寸しなかった。流焔ちゃんは燃やさなかった。そこに今まで感じていた恐怖の形がなかった。だから「怖くなかった」と感じた」


「……でも本当は怖いんですか」


真意さんが少し間を置いた。


「本当は、今日の方が——ずっと怖い」と言った。「今まで彼女たちが持っていた「処理の方向」が、なくなった。方向がなくなった存在は——どこへ向かうかがわからない。わからないものは、わかっているものより怖い」


「……彼女たちが今後どうするか、わからない」


「わからない」と真意さんは言った。「今日まで積み上げてきた全ての観察が——今日から参考にならなくなった可能性がある」


「それがなぜ、あなたにとって怖いんですか」と私は聞いた。


「あなたを守るための情報が、全部使えなくなるかもしれないから」と真意さんは言った。


部屋が静かになった。


タイプライターの音だけがあった。




夜、眠る前に、廊下を一人で少し歩いた。


真意さんに「一人で歩かないで」と言われたが、「少しだけ」と言って出た。


「少しだけ」と真意さんは言った。「戻ってきて」


廊下を歩いた。


右に曲がった。左に曲がった。


廊下が続いた。


扉が並んでいた。


「Morgue」という表札。「食堂」という表札。「忌中」という表札。「ゆりかご」という表札。


全部、今日の昼に見た扉だった。


でも今日は——扉が全部、少し開いていた。


少しだけ。


光が漏れていた。それぞれの部屋から、それぞれの色の光が。


「Morgue」からは青白い光。


「食堂」からはクッキーのにおいと、甘い光。


「忌中」からは暗い光。でも確かに光が漏れていた。


「ゆりかご」からは白い光。


全部の扉が、少しだけ開いていた。


招いているのか。


待っているのか。


ただ光を漏らしているだけなのか。


わからなかった。


でも廊下の終わりに、何か違うものが見えた。


壁だった。


廊下の突き当たりの壁。


今まで何もなかった壁に、今日だけ——扉があった。


表札がなかった。


鍵もなかった。


ただ、扉があった。


把手を触った。


冷たかった。


「——後ろ、気をつけて」


幽玄ちゃんの声がした。廊下の上から。


今日二度目の、幽玄ちゃん自身の声だった。


振り返った。


廊下に、何かがいた。


最初は、影だと思った。


でも——影が動いた。


廊下の端に立っていた。


輪郭がはっきりしなかった。


でも確かにそこにいた。


全長は私の二倍ほどあった。


顔がなかった。


顔があるべき場所に、顔がなかった。


でも——見ていた。


顔がないのに、私を見ていた。


こちらを向いていた。


動かなかった。


ただ、立っていた。


何秒か、どちらも動かなかった。


それが動いた。


歩いた。


廊下の端を、こちらに向かって歩いてきた。


足音がしなかった。


においがした。


バーガーのにおいだった。


でも今まで感じたことのない種類のにおいだった。


古くて、深くて、底がなかった。


私は走った。


探偵事務所に向かって、走った。


扉を開けた。


入った。


閉めた。


「遅かった」と真意さんが言った。


「廊下に——何かいました」と私は言った。


真意さんがルーペを出した。


「見た?」


「はい。顔がなかった。でも見ていた。歩いてきました」


真意さんが立ち上がった。扉の方を向いた。ルーペを構えた。


「……記録した様子はない。普段のクルーじゃない」と少し後に言った。


「何ですか、あれは」


「わからない」と真意さんは言った。「でも——昨日まであの廊下にはいなかった。今日から、いる」


「「未確定」になったことと関係がありますか」


「関係があると思う」と真意さんは言った。「あなたが分類できない存在になった。分類できない存在に、ぱんでむは「別の方法」で対応しようとしているのかもしれない」


「別の方法、とは」


「わからない」と真意さんは言った。「わからないものが、廊下にいる」


扉の向こうで、足音がしなかった。


においが、少しだけ漏れてきた。


バーガーのにおい。


底なしの、古い、深いにおいが。


扉の隙間から、少しだけ。




【真意の調査記録】


**〇月⬛⬛日**

**十五日目**


今日、助手のタグが完全に「未確定」として定着した。


分類不能の存在が、ぱんでむの体内に定着している。


ぱんでむが反応した。


各クルーが変化した。


懺悔ちゃんが食べなかった。万寿ちゃんが読めなくなった。流焔ちゃんが温める炎を出した。憂起ちゃんが方向の変化を感知した。幽玄ちゃんが自分の言葉を使った。


これらは全て、助手という「未確定の存在」がぱんでむのシステムに影響を与えている証拠だ。


システムが分類できない存在が内部に生まれた時——システムは通常の処理を停止し、「別のルーティン」を起動する。


そのルーティンが何かは、まだわからない。


でも今夜、廊下に「それ」が現れた。




廊下の「それ」について。


顔のない、高身長の存在。


においはバーガー。でも今まで感知したことのない種類。


タグが読めなかった。というより——タグを持っていない可能性がある。


タグを持っていない存在は、ぱんでむの設計記録に一例だけある。


「設計目的が完了した時に生成されるシステムの回収機構」。


記録にはそれだけしか書いていなかった。




設計目的が完了した——


私は昨日、ぱんでむの設計目的を助手に話した。


話したことで助手は「理解」した。


「理解した時に最大の信仰エネルギーが放出される」はずだった。


でも放出の代わりに「未確定」になった。


「設計目的が完了した」と、ぱんでむのシステムが誤認した可能性がある。


誤認したシステムが、「回収機構」を起動した。


「それ」は——助手を回収しに来た。


設計目的が完了したと判断された存在を、回収しに来た。




だとすれば——今夜、扉の向こうにいる「それ」は。


助手を、バーガーにしに来ている。


記録する。


でも——記録だけしては終わらない。


今夜はここを離れない。


「それ」が扉を開けようとするなら——私が最初に対面する。


タグのない存在に、ルーペが何を示すかはわからない。


でも今夜は、やってみる。


やらなければならないと思っているのは——


理由は書かない。


でも、今夜はここを離れない。


**備考:助手、現在生存。十五日目。廊下に「それ」が現れた。扉の向こうにいる。今夜は離れない。**


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