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外伝17‐2話 仲間達のはなし

 後の英雄となる2人を仲間に加え、一行は森の中を進んでいた。

 これから行く場所は山脈である。徒歩で登れる場所を現地の住人から聞き出し、現在はその入口とも呼べる地点を目指していた。その道中も当然のように魔物が出没する。

 

魔物「――ッ」

リフィアス「魔物が3体か。フラル援護をっ」

フラル「はい! マジックベール」


 まとまって向かってきた獣型の魔物数体にリフィアスが立ち向かう。

 彼の声に応じ、即座に魔法を準備して支援した。杖を構えた彼女の足元に魔法陣が浮かび上がる。図柄は2重円の中に杖を抱え、本を読む賢者だ。

 効果は名の通り味方全体の知識力をアップ。


リフィアス「行くぞレム。ヴァングローブ!」

レーヴァグラム「カアァッ」


 妖精と意識を合わせ、その力を借りて魔法に近い現象を起こす。

 風の球体を生み出し巻き込んだ敵を攻撃。中距離射程でガードブレイクの効果をもつ、3連続ヒットする中範囲の魔法ダメージ。

 よく鍛錬されているのか、なかなかにエグイ威力を発揮していた。それでも倒し切れない敵に対して剣を構え一気に距離を詰める。


リフィアス「瞬閃牙(しゅんせんが)


 すり抜け様に鋭い突きを放って残った敵を攻撃。

 これは防御無視で且つ、高確率でクリティカルが発生する技だ。


ラソン「スゲェ~。さすが英雄は違うなぁ」

リーヴェ「ああ」


 あまりの頼もしさに思わず見とれてしまう。

 彼らのおかげであっという間に魔物を片づけた一行。再び歩き出し、リフィアスはこちらに向けて爽やかな笑みを向けた。


リフィアス「やっぱり仲間が増えると心強いね」

フラル「そうですね」

シャムス「そうでしょうか。お2人ともとても強くて……」

アルラート「うん。むしろ私達が助けられてるくらいだよ」

ラソン「やっぱ英雄はスゲーぜ」

リフィアス「ん? 先程から気になってたが英雄って?」

フラル「どなたかと勘違いされているのでは……」

ラソン「え、あぁ……これは……」

リーヴェ「ラソンの負けだな」

ラソン「うぐっ」


 二の句を告げられなくなった彼の代わりにリーヴェが教える。

 あまり未来から来たとかは言いたくない。だが、こうなっては仕方ないだろう。

 幸いにも此処は記憶の世界だ。無理にごまかす必要もない。むしろ変に誤解され、相手の不審をかう可能性がある。それは避けたかった。

 リーヴェは此処が記憶世界でよかったと思いながら説明する。


 正直に話していくと、彼らは心底驚いた様子で互いの顔を見合わせた。

 そして「まさか、そんな大層な肩書を得たなんて」と謙遜しつつ照れる。英雄と呼ばれてこそばゆいような申し訳ないような……。なんとも複雑な心境だ。


リフィアス「えーっと、なんかごめんね。パッとしないで」


 憧れていたイメージとは違うだろう、と気にしているみたいだった。

 どんなに取り繕っても自分は一介の騎士。特別偉くもなければ、立派でもない。確かに騎士という立場上、普通の人より恵まれた環境にいるだろうが……。

 でも近衛騎士と比べれば全然平凡だと思う。別に貴族の出でもないしな。


フラル「私もなんだかふわふわします。どう反応したらよいのでしょう」


 手を頬に当てて恥じらっていた。

 さっきまでは淑女の如く冷静でお淑やかにしていたのに……。


リーヴェ「こちらこそすみません。どうぞ普段通りに接してくれれば」

リフィアス「そ、そうか。うん、了解した」

フラル「はい。頑張ります」


 いったい何を頑張るというのだろうか。

 それにしても、意外とすんなり信じてくれたものだ。特に大騒ぎするほうではなかったものの、とても自然にこちらの言葉を受け入れてくれた。

 普通はもっと疑うものだろう。だから説明しても信じて貰えないのではという不安があった。なのに一度話しただけで信じてくれるとは――。


リフィアス「そりゃあ、君達が嘘を言うように見えなかったからね」

リーヴェ「っ!? 声に出してましたか?」

リフィアス「いや。ただホッとした顔してたし、僕も同じ立場だったらそう思うなって」

ラソン「おおっ。さすがだぜ!」

リフィアス「あはは、別に何も凄い事はしてないよ?」


 すっかり感激のドツボに入ってしまったらしい。さっきから同じような言葉しか言っていなかった。彼らが何をするにしても頷きそうな調子だ。

 だけど、実際に会った英雄はとても普通の人だった。

 騎士というからもっと厳つい感じを想像したがそうでもない。もう1人も典型的な神官って雰囲気だが、ちゃんと少女の可憐さが出ている。


リシェラ「もう、なんなのよ。2人ともすっかり気が緩んじゃって」


 だが、悪い気はしないと彼女は思う。

 普段から仲のいい2人だけど、新しい仲間ができてとても嬉しそうだ。


リシェラ(確かに強いのよね。変わってるけど)


 パタパタと羽根を動かし、一行と並走して飛ぶ花の妖精。

 楽し気に話し歩くその姿をそっと見守る。時々口を挟みはするけど自分くらいは周囲を警戒しておかないと。まあ、多分ああ見えて気づいてると思うけどね。

 リシェラはああだこうだと考えながら皆について行った。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 森の中を慎重に進んでいく内に日が暮れてしまう。

 目的の山までそう遠くはないが無理は禁物だ。安全のため的確に判断を下し、リフィアスの指示で今日はそこで野営の準備をした。

 持ち歩いていた道具で的確に準備をしていく。そして、食事も済ませた後の事だ。


リフィアス「あの、少々よろしいですか?」

ラソン「ん? どうしたんだよ。改まって」

フラル「私もちょっとよろしいでしょうか」

リーヴェ「ん?」

アルラート「別に構わないよ」


 不意に神妙な顔で声をかけられ振り向く。

 昼間までの様子とは打って変わり、なにやら遠慮した感じで切り出してきた。


リフィアス「先程の話でもしやと思ったのですが……貴方は未来の王子殿下なのですか」

ラソン「ああ。やっぱ気づくよなぁ」

リフィアス「そのご様子ではやはり……」

ラソン「まあ、うん。これでも一応第1王子」


 ちょっと気が引ける様子で肯定すると、相手は急に姿勢を正して頭を下げる。


リフィアス「も、申し訳ありません。薄々感づいていながら無礼な物言いをしてしまって」

ラソン「別に気にしてないぜ。これも普通の出会いじゃねーし」


 それに英雄から畏まられるのも調子が狂う。

 普段通りに接してくれ、と少々強く頼むと彼はほっとしたように息を吐く。

 一方でリーヴェらのほうも同じようような展開になっていた。名前と戦闘時の様子を見れば一目瞭然だろう。


 ただ、どちらからしても記憶にない名前だ。

 王族と同じとは感じていつつ、そんな名前の王子や姫がいただろうかと信じきれなかった。記憶世界を訪れた刻の旅人故の理由もある。結果として今になるまで確信を持てなかったのだ。

 まさか、まさかと思っていた事が現実となり恐縮している。なんだかこっちまで申し訳なくなってきた。


ラソン「ところで他の仲間はどうしてるんだ? 別行動してるって言ってたけど」


 微妙な空気になってしまい慌てて話題を反らす。

 だが、言葉にしてからラソンは後悔した。突然何を言っているのか。いきなり仲間の話を聞いたって迷惑だろうと自分を責める。

 そんな心中も知らず、2人はふっと苦笑いを浮かべ答えてくれた。


リフィアス「1人は試練を受けてるんだ。ただ、今回のは誰も手助けできなくて……」

ラソン「そうだったんですか」

リーヴェ「だが、見守ってるだけでもいいと思うけど」

リフィアス「うん。それがね、今彼はちょっとピリピリしてるっていうか」

フラル「焦っているとも言えますね。無理もない事ですけれど……」


 見られていると試練に集中できないと言われたらしい。

 各地で大切な人が悪さをしている。それを彼は誰よりも嘆いていた。

 その心中がどんなかは想像するしかない。だけど、辛そうにしているのは何度と見てきたのだ。


リシェラ「だから今、向かってるのよ。彼がずっと欲しがってた物があるから」

フラル「私が言ったんです。待っている間に探しましょうと」

リーヴェ「そういう理由だったんだ」

シャムス「知りませんでした」

リフィアス「ごめん。うっかりしてたよ」


 言いそびれていた事を謝罪するリフィアス。フラルも忘れていた様子で頭を下げる。

 彼らが求めている物……それは「アティス」という鉱石の花だ。これから向かう先での目的を聞き、仲間思いな彼らを知った。

 少しでも喜んで貰いたい。だから此処まで来たのだと。困っている人を助けたいだけじゃなかったんだ。何も見守るだけが手助けじゃないと身をもって示している。


アルラート「もう1人の方は大丈夫なのですか?」

リフィアス「ああ、うん。そっちも結構大変なんだ」

フラル「ええ。アルマ様は心配いらないとおっしゃられてましたが……」

リフィアス「けど、一緒にいると言ったら巻き込むからと困らせるだろうしね」

フラル「はい」

アルラート「どうも尋常ではない感じがするね」

シャムス「はい。巻き込むとはいったい」


 2人が疑問を口にすると一瞬顔を見合わせた。

 なんだか只ならぬ感じがする。思わず息を飲み次の言葉を待つ。

 さすがに聞き過ぎたか、とまた後悔が過りそうになった時に答えが返ってきた。


フラル「アルマ様は今、フラムさんの調子が良くなくて治しに行ってるんです」

シャムス「フラムというのは確か……」

リフィアス「彼女が召喚する赤龍だよ。仲間になったばかりで少し前から発熱と暴走気味でね」


 今は暴走を鎮められるという姫神子の所に行っているらしい。

 ついでに炎の扱いも学んでくると言っていたから時間がかかりそうなのだ。彼は「僕の力だと悪化させそうだし」と言い、フラルのほうは「下手に手を出すと傷つけてしまう」と言った。


フラル「私は攻撃系の魔法は得意ではなくて……。上手く応用できるとも、加減できるかも自信がないのです」

リーヴェ「確か水と光の魔法が得意なんだったな」

フラル「はい」


 彼女は頷く。2人で行動していた時は少なからず攻撃にも参加していた。

 だが、今は一行が一緒にいるので支援に徹しても問題ない。むしろそのほうが安心できるというものである。習得している攻撃魔法の種類もそう多くないし……。

 現にこの短い期間での戦いで、フラルが攻撃している様を見た事がなかった。


 その後もいろいろな話をして過ごす。

 仲間の事、この時代での実話、それぞれの旅の話も少し。

 記憶の世界でなければ安易に話せない内容もあった。後に英雄となる本人達から聞く壮絶な物語に胸をときめかせる。決して楽ではなかった道のり。

 強大な力を持つ脅威に、果敢にも立ち向かう彼らの姿は本当にカッコいいと感じた。



         ☆    ☆    ☆    ☆    ☆



 翌朝、いつもより随分早くに目が覚めたリーヴェはあるものを見た。

 野営地の近くで人の声がして向かうと、木漏れ日の差し込む森の中に2つの人影が見える。それはリフィアスとフラルだった。

 声は男のもので、少女のほうは両膝をついて手を合わせている。傍には杖が置かれていた。

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