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1人ぼっちの絶滅危惧種 第9話

青く光るルールーの群れが満月の踊りを踊る。月から魔力を貰っているのだ。



かなえはそれを見て目を輝かせる。初めて見るルールーに興奮している……というよりも、綺麗だと感じているようだ。


かなえが嬉しいと俺も嬉しい。



ルールーは肉食ではないが、火を吐くのであまりかなえには近づかないように言っておこうと、先程からずっとルールーを興味深げに見ているであろうかなえを振り返る。



すると驚く事にかなえはルールーではなく俺を見ていた。



顔の近さとかなえの瞳の美しさに驚きたじろぐ。



「……かなえ?」



思わず出た言葉は、困惑の色を隠しきれていないものだった。



だって……どういう事だ?どうしてかなえはこんなに至近距離で俺を見る?



声をかけてもかなえは俺を見たまま動かない。

まるで……何かを俺に伝えるように……。



『スキダヨ』



かなえの言葉が蘇る。熱の籠った瞳と、オスを惹き付けるような誘う香り。



俺はかなえにちゃんと聞いてから印を付けようと決めていた。

かなえが俺を愛していなければ、この契りは呪いとなる。


俺にとっての幸福が、かなえにとっての幸福とは限らない。


……かなえが元の場所に帰るのが、俺の幸せではないように。



考えている間もかなえは俺から目を逸らさずに香りをまき散らしている。

……その事実に衝動を押し留めるように、何度も唾を飲み込んだ。


目が乾いてもかなえから目を離せない。離したくない。



無意識に口の中で発達した牙を舐める。


了承を得るはずだった俺は、いつの間にか問うのを忘れ、かなえの白い首筋に吸い寄せられるように顔を近づけた。



驚いたようなかなえは一度目を見開いたものの、次には目を瞑って痛みに耐えようとしていた。

……俺はそれを見て許されたように思い歓喜した。



……俺をつがいにしてくれるのか、かなえ。



そして、誘われるがまま……柔らかく……まだ誰の印も付いていないかなえの滑らかな首筋に…………己の牙を突き立てた。











かなえには凄く怒られた。痛かったらしい。



でも俺は幸せで堪らない!!

得も言えぬ高揚感が俺を支配する。



この歯痕が暫くしたら印となって刻まれるのだ。

俺はかなえに怒られている間も終始幸せだった。



――かなえが俺のつがいになった。俺のものになった。



興奮で眠れなくて、その日はずっと狩りの準備をした。


葉っぱを首に巻き付けたかなえはウトウトしながら何かををのうと?に書いている。

……ちずを作っているのだろうか?


かなえは色んな事を突然始めるので、その行動の意味が気になるけれど……暫くは首が痛くてかなえも気が立っているだろうからそっとしておく。

かなえと子作りが出来るかどうかは後日に持ち越す事にした。






――――…………






数日経つと、かなえにもラーグリバットのつがいになったという特徴が出始めた。


まず、オスの力をメスも同等程度授かる。これがかなえにも出始めていた。



かなえはヘルハウルを倒せたと喜んでいたけれど、きっと以前のかなえでは倒せなかった。

ラーグリバットの筋力を授かったようだ。


もっと強くなろうと立ったり座ったりして汗をかいているかなえを見ると、微笑ましく思う。


……だってかなえは俺の役に立つために強くなろうとしてるんだ。なんて健気なんだろうか。



だけど元の能力が高くない種族なのか……それ程強くはなれないようで少し可哀想だ。


……でも、もっと俺を頼ってくれれば俺は嬉しいので黙っておく事にした。

小物を倒して褒めて欲しそうに俺を見るかなえはいつまでも見ていられる。



そうやってかなえと幸せに過ごしているのに……またあの音が邪魔をする。



不快な音だ。かなえはこの音を聞くと喜んで何かを探すように辺りを見渡す。きっと精霊を探している。



俺はかなえが逃げないようにかなえの手を捕らえるように握った。

かなえは俺の傍から離れてはいけない。



……それでも、やっぱり不安だった。かなえは俺とつがいになったけれど、今までと何も変わらない。



……もしかして、かなえは俺がつがいだと分かっていないのだろうか?



出来れば俺にもかなえから印を付けて欲しい。かなえの印が欲しい。



だんだんと貪欲になる自分におかしくて心で笑った。愛とは俺の心までも変えてしまうのか。



今まで生きていればそれで良かった。望む事なんて何もなかった。


でも、かなえが居ると全てが欲しくなる。満たされても、まだまだ欲しくなる。


くっついていても、もっとくっつきたい。いっそかなえと1つになってしまいたい。


だから、かなえ。……かえるしないで。

俺の巣に、ただいましよう。



情けない顔になっているのが自分でも分かる。それを見たのかかなえは寂し気に笑った。


でもそれを見ても笑えない。

かなえが居なくなったら笑えない。



だからここに居て。と目だけで訴えると、今度はかなえも悲しそうに……寂しそうに瞳を揺らした。



……でも、結局かなえを止める事は叶わず……半ば引きずられるように、長い間一緒に精霊を探させられた。











巣に帰ってきた。かなえと。



俺はとても嬉しい。かなえは精霊を見つけられなかったのだ。



俺も一応スーッ……と流すように探したけれど、精霊の姿はなかった。

巣に帰るとかなえは叫びながらかばんを地面に叩きつけて怒りだした。


そしてそのままかなえは諦めたのかふてくされて俺と火を囲む。


……かなえには申し訳ないが……俺はとてもホッとした。


もう二度と精霊なんて森に来なければいい。

かなえに変な期待を持たせないで欲しい。



火に揺れるかなえの顔を見ていると、いじけているかなえが可哀想になってきて……早くかなえに精霊の事を忘れて欲しいのと、先程の考えを後ろめるように、かなえに髪を乾かしてもらう為に髪を洗いに行った。






かなえが変な歌を歌っている。目が泳いでいるので良からぬことを考えたようだ。



かなえの手は気持ちいい。温かくて優しい。



かなえの手が俺の頭に当たった時のぞわぞわする感覚が好きだ。だから何度もかなえに乾かしてもらう。



嫌がらずに俺の髪を乾かすかなえを見るのはもっと好きだ。俺と目が合うと恥ずかしそうに目をうろうろさせるのが面白い。



でもかなえは見られるのが嫌みたいだから残念だ。いつも俺にやめてを言う。その言葉は嫌いだ。



嫌な事を思い出して苦い気持ちになったが、かなえにいけめんと言われてすぐに機嫌は戻った。

いけめんはかっこいいらしい。


かなえの言葉は複雑だけど、覚えてしまうと単純だ。かなえはよく1人でも鳴いてるから特に覚えやすい。



かなえはかっこいいがすきらしい。俺を愛してると言ってくれている。


つがいに言われて喜ばないオスは居ないと思う。

だんなりゅうだって、きょわちゃんに言われれば喜ぶだろう。



お礼を言って振り返ると、かなえはまたじっと俺を見ていた。

……でも今度はなぜか目をパチパチと瞑っている。


俺に見られていても恥ずかしがりもせずに瞬きを続ける。……何かの合図なのだろうか?俺はにんげんじゃないから分からない。


初めてかなえがする動きに目を奪われる。……そして、その意味にある推測が思考を陣取った。



……もしかしてかなえは、子作りの合図を出しているのだろうか?



にんげんの合図は分からないけれど、かなえとつがいになって初めての行動だという点が推測を確信に近付けた。



立ち上がりかなえに近付く。かなえは俺に首を噛まれた事を思い出したのか、首を手で覆って威嚇している。とても可愛い威嚇だ。


でももうそんな事はしない。かなえの痛がる事は出来ればしたくない。


だから何も痛い事はしないよ、と意思を告げる為に無防備なかなえの前で腰を下ろす。かなえは噛まれないと分かったのか困惑気味に手を首から外した。



低く欲を滲ませながら唸るとかなえの体は面白い程に跳ね上がった。俺の声に反応しているようだ。


とても気分が高揚する。

……早く。早くかなえに触りたい。



だから確証をくれ、かなえ。俺と子作りがしたいという確証を。



願うように見つめると、かなえは小さく鳴いた。


……その小さな声は、俺が欲しかった色欲を含んだ声色だった。



かなえもこんな声が出せるのか、と驚き思わず目を見開く。


自身の口から出た声に羞恥に頬を染めるかなえを見て、俺は激しい欲に溺れた。



――触りたい。舐めたい。噛みたい。1つになりたい。



その欲だけが俺を支配して……気付けば俺はかなえに



ドオオオオオオンッッッ!!!






…………雷鳴のような地を揺らす音が響き渡った。



かなえはその音に驚いて跳ねて逃げ回る。

今までかなえから出ていた匂いも……驚いたからか吹き飛んでしまっていた。



かなえはしきりに音がした外を気にする。もう先程の事は忘れてしまったようで何の躊躇いもなく俺の肩を叩くかなえに……頭がスッと切り替わるように冷めた。



…………俺は手が震えるほどの怒りを感じた。

これほど怒りを感じたのは何百年ぶりだろうか。



だが今そんな事はどうでもいい。今すべき事は、俺達の邪魔をした奴を叩き潰す事だけだ。




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