↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/71

第44話

朝、いつも通りに目を覚ますと、ガウ君が近距離で私を見ていた。



「…お、おはよう…」


「……おあよ、かなえ」



挨拶をしたにも関わらずガウ君は私から離れる事無くずっと同じ思い詰めたような表情で私を監視している。きっと昨日のような事にならないように彼なりに私を見張っているのだろう。



「大丈夫だよ、ガウ君。今日は洞窟から出ないし」



本当は昨日埋めた魚が気にならないでもないが、本当に出て行く気はない。…そもそも、スマホの着信頻度を考えると昨日の今日でバスが来ているとは考えにくい。



私が身振りで洞窟、出ない。と説明するも、ガウ君は私を起こしに来たであろうムカデを片手で伸した体勢のままでその場から動こうとはしなかった。



「かなえー……ぐるる…」



未だ甘えん坊モードなのかガウ君はぴったりと私に張り付き、今日は狩りに行く気配が見られない。


だが私達は現在野生児。どう考えても数日食料無しは厳しいので、狩りに行って欲しいのが本音だ。水は洞窟にあるから良いけれど…



寝起きの私の髪を舐めて毛繕いしてくれるガウ君の手を掴んで外に誘導する。2人で行けばガウ君も安心するのでは…と考えたが、ガウ君は洞窟の出口付近になると全体重をかけて力の限り嫌がった。



「うー!!うー!!かなえっ!!ぐるる…!!やえてっ!!」


「ち、違うよっ!一緒に行こうって…」


「がうっ!!ぐるぎゃうぅっ!!いぎゃるぐあがぅっ!!!」



もはや私に理解できない言葉で怒りを露わに抵抗するガウ君に、私は諦めて手を離した。


すると、ガウ君より外に近い私を押し込めるように洞窟の最深部に私を座らせて葉っぱの毛布を私に掛けて再び座り込んでしまった。



………これ、軟禁状態だよね……



こうしてこの洞窟に今日1日、ご飯も食べずに軟禁される事が決定した私は、昨日見れなかったスマホを取り出し恐る恐る画面を突いて新着を確認した。






“叶大変よ!結菜が異世界に召喚された叶を再召喚するって言って魔方陣を描いてるの!それも運動場全体で!!もう私では結菜を止められないわ!助けて叶!!”




“お前の高校に何か変な地上絵が出来てるらしいぞ。テレビ局が来てて今騒いでるけど知ってるか?”




“叶!神託が降りてきたの!!叶は今ヤンデレに囚われてるって!!私、そんなヤンデレ許せないよっ!!絶対助けてあげるからもうちょっと待ってて!!”







「……結菜本当に何やってんの…」



段々と友人がおかしくなってゆく…私は1人で任せてしまった沙織に酷く同情した。



…だけど…正直、すごく嬉しかった。



結菜にとって私はイケメンよりも下に位置してると思っていたけど、そうではなかったらしい。

…まぁ、ヤンデレって書いてる時点である種の嫉妬は感じられるけれど…



だが結菜。ここに居るのは過保護な野生児だ。私のお世話係をしてくれている。現在軟禁はされているけれど、ごはんもくれるとても優しい野生児だ。



ああ……伝えたいなぁ…結菜にも。本当はそれほど苦では無いよって。



両親のメールには、最近はメディアを使って呼びかけてるという趣旨の報告があった。お金も苦労もかけて申し訳なくて涙が出る。



「かなえ?」


「っ…何でもないよ。自分の無力さが嫌になっただけ」



ガウ君は気になってか私のスマホを覗き込み、眉間に皴を寄せて画面を一生懸命見ていた。きっとガウ君に電気は合わないのだろう。どことなく表情が苦々しい。


それを見てると何だか可愛く思えて笑みが零れた。それをガウ君はキョトンとした顔で見上げると、ホッとしたように優しく微笑んで私の隣に転がった。



「うー!かなえーっ!」


「はいはい、どうしたの?ガウ君。ここに居るよ」



うつ伏せに寝転ぶ私に甘えるようにガウ君は私の二の腕に頬を擦り付け喉を鳴らした。


私はそんなガウ君に感謝した。こうやって私が落ち込んだ時、いつもガウ君は私に1人じゃない。とでも言うように、寄り添ってくれる。だから、私はガウ君から離れられない。



「ああ……そっか」



気付いた。…いや、本当はもっと前から気付いていた。



私の呟きが気になったのか、ガウ君は「う?」と言って続きを促すようにクリクリとした穢れの無い瞳で私の言葉を待った。





「……私、たぶん……ガウ君の事、好きだよ」



そう言い照れて下を向いて笑うと、ガウ君が「うき?」と聞き返す声が聞こえた。



本当は、言ったところで意味は分からないのだと思う。野性的なガウ君の事だ。男、女ぐらいの違いは分かっても、感情の名前なんて…きっと、知らない。



でも、どうしてか言いたくなった。ガウ君には、ちゃんと言いたかった。伝わらなくてもいいから、知って欲しかった。



「うん。好き。大好き…ずっと、一緒に居たい」



言うと、羞恥心よりも寂しさが募った。別れを意識したからだと思う。



私は今まで好きになった人には好きと言えない子だった。相手が自分を好きじゃない事実を突きつけられたくなかったから。


結菜にも言えなかった。ごめんね、結菜。いつも酷い事言って。


本当はね、結菜の事大好きだよ。バカだけど真っすぐで明るい結菜が、ずっと、好きだった。



二者択一が目の前に迫る中、私がそんな事を思ったのは…きっと、分かってしまったからだと思う。その事に気付いたのは、もう少し後になっての事だ。









「ガウ君、これ何だろうね?」


「………」



問いかけるも返事なし。



バスから4日経った朝、私達が洞窟の前で見たのは、大量の木の実だった。


ガウ君サンタが夜中の内に取ってきてくれたのだろうかと考えたが、ガウ君の表情を見るとどうやら違うらしい。眉間の皴がえげつない事になっている。


罠だろうか?と洞窟から顔を出して様子を窺おうとするとガウ君が私の肩を掴んで押し戻し代わりに見に行ってくれた。


だが、特に何も居なかったのか、目を鋭くさせガウ君は辺りを警戒しながら戻ってきた。



「何も居なかったの?」


「………がおう」



居なかったらしい。


とりあえず安心した…でも、そうなるとこの木の実は一体何なのだろう?



バス事件以来ガウ君は周りの気配に過剰に反応するようになった。


そして、やっと外に出る事も許可されたが今までと違ってガウ君が途中で狩りに1人で出掛けたりする事無く、必ず私を連れて出掛けるようになったのだ。



過保護が過ぎるとは思うが、私も次バスに遭遇したらどうなるか分からないので、その好意に甘んじている。いきなり向こうに帰るのは流石に酷だ。


だが今回の木の実とバスは流石に関係が無いだろうとは思う。それに、私を連れての狩りはイマイチ効率が悪いのか収穫はぼちぼちといった所なので非常に助かる。問題は送り主だ。



私は前に聞いた事がある。いきなり郵便物を送り付け、開封した住民に多額の金銭を要求する詐欺があると!その可能性は捨てきれない!!


もしくはこの木の実の中の1つに擬態して、手を突っ込むとガブリ!とかね!!あるあるだよね!!





…と、いう事で全てをガウ君に任せて私は自作の木刀に毒を塗った。…忘れてたけど、結構前に木刀作ってたんだよね…。



作った事に満足してほぼ放置したままにしていた木刀は、先日恨みがましく私の足の小指を砂に隠れて強打した。


痛みに藻掻く私の視界に砂埃を被り謎のオーラを放つ歪な木刀が姿を現し、私は恐れ慄いた。きっと、コイツには付喪神が付いている。そして私を呪っている。



それに気付き私は今更ながら丁寧に形を調整して、ちゃんと戦闘でも役に立つように毒まで塗ってあげた所、木刀の重圧が消えた。きっと成仏したのだと思う。


私はガウ君から槍を貰っていたので、反対に私が作った木刀をガウ君にプレゼントした所、とても好評だった。叶、ここに来て物作りの才能を開花!!


ついでに毒を塗っておいた事を教えると、その日ガウ君は私製の木刀を使ってうさぎの化け物2匹と牛の化け物4匹を軽く倒してしまった。きっと木刀の付喪神も報われたことだろう。



…ちなみにだが、前回牛の化け物を埋めたが、あれは後日フライドチキンになっていた。部位はマイクだった。



そして味は謎にエビの味がした。魚介なのかお肉なのかはっきりして…!


土から出てきたフライドチキンには流石に抵抗があるので水で洗って食べたのだが、何故か衣はサクサクだった。……もう何も言うまい。



だがこのフライドチキン、牛の化け物だった時は5メートル程あったくせにフライドチキンになるとその50分の1程になる。私はそれが許せない。



だって!あの死ぬ気の死闘がこんな2人で分けたらすぐ無くなるような大きさになるんだよ!?私、許せない!!



そんな訳でガウ君の頑張りによって私達2人が満足できる量のフライドチキンが出来上がり、私達はキャンプファイヤーを囲んで踊り狂った訳だ。



…そう、それと妖精液だが…。



やはり森から居なくなってしまった妖精はこの数日の間も、やはり現れなかった。これではもうフライドチキンも作れない。


埋める前に妖精液を塗ってこそ完成するフライドチキンは、先日妖精液を使い切ってっしまった事により再現不能になってしまった。悲しい事だ。



そしてもう1つ悲しい報告……私、魔力が無くなってしまった。



一過性の物だったのか、約10日程で効力は失われ、ただの叶だけがそこに残った。いわゆる残りカスだ。悲しい。



妖精の重要性を再確認した所で、ガウ君の木の実チェックが終わった。どうやら全てに害が無かったようで今度は疑問符を浮かべて私の前に木の実を広げた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。