↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/71

第28話



「きょわ!」



「………………」



……何かの声がした………。


それは私の気のせいで無ければ私の頭上から聞こえた。…しかも何だ何だ!もさもさ髪を弄られている!?


すると声の主は返事をしない私に何を思ったのか、うつ伏せに倒れる私を無理やりひっくり返し顔をベロベロと舐め回し始めた!!…くっ…!?食われるっ!!!



「ひいいっ!!ごめんなさい!死んでないです!!生きてますっ!!」


「きょわわ」


「きょっ!!………は?きょわ……え……?」


「きょわ!」



ぱちくり。と何度も瞬きをする。

「きょわわ」と声がしてあの龍の鳴き声との違いを感じうっすら目を開けると、そこには先程の龍によく似た血管の浮き出た白い色の皮膚に青い瞳の少し小柄な龍がいた。


龍は私が同じ言葉を喋ったと思ったのか、私に喋りかけるように目の前できょわきょわと鳴いている。



「きょわ!」


「あ…えっと、はい。きょわ………」


「きょわわ!」



放心しながら返事を返すと嬉しそうに尻尾を床に叩きつけてさらに鳴き出した。



……えー…あの、さっきの……龍と同じ龍………?



くりくりした青い瞳は興味深そうに私に向けられている。血管が浮き出た体は少々グロテスクだが、先程の龍よりは幾分マシで白い肌がそれよりも目立ち神聖さを醸し出している。



そして大きさもあのさっきの龍が大型犬だとすると、こっちの白い龍は小型犬ぐらいに感じる程小さい。顔の大きさも私の全身程しかない。


しかもきょわきょわ鳴く時に口の中が見えるのだが、牙も生えていなかった。どうやら草食のようだ。………まあ丸のみの可能性が無い訳ではないが…



「きょわわっ!」


「えーっと…きょわちゃん、ここどこ?」



嬉しそうに尻尾で私を弄り倒す白い龍にきょわちゃんと名付け、質問を投げかけた。…当たり前だがきょわちゃんは私の言葉に首を傾げるばかりだ。



随分愛嬌のある龍に私は次第に落ち着きを取り戻した。そして再度あの壁に挑もうと後ろを振り返った瞬間、私は気付いてしまった。



「…………きょわちゃん………もしかしてさっきの壁………きょわちゃん?」


「きょわ」



意味も分からないだろうに私の発した言葉に真面目な顔で鳴いたきょわちゃんに私は何故かそうだ、と言っているような錯覚を覚えた。



だって…壁が普通の壁に戻ってる!!



先程まで私が触っていた壁とは全然違う硬い感覚のそこに嫌な汗が伝った。


そう、私が散々どこかに通じる壁だと思っていた壁は、保護色なのか同じ色をしていたきょわちゃんの肌だったのだ。



試しに私を撫で回すきょわちゃんの尻尾を触ってみるとものすごく最近触ったものと同じ感触がして私は項垂れた。



「やっぱ帰れないんじゃん!!」



元の世界以前の問題だ!ガウ君と暮らした洞窟にさえ帰れないと私は泣いた。


びーびー泣く私にどうしたものかときょわちゃんが白いシーツを噛んで渡してくれる。ありがとう優しい龍。…でもこんな森でどうやってシーツなんて調達したんだろう…?



鼻をかむのは流石に失礼なので涙だけ拭いた。


するとシーツに隠されていたのか先程まで無かった物が私の視界の端に映り顔を向けた。



「………………卵?」



パステルな色をしたカラフルな卵が5つ、私の腕で抱えられそうな大きさで転がっていた。


私がガン見していると、きょわちゃんが私に見せるようにその上に優しく降りて温め始めた。………きょわちゃん、メス………?



「きょ、きょわちゃんの…卵なの?」


「きょわわ…」



優しい瞳をしてきょわちゃんはお腹からはみ出た卵を尻尾で戻した。



………やばい、私……きょわちゃんの食料として持って来られたんじゃない?



ゾワッと鳥肌が立ち自分を抱えて震える。


確かに人間って栄養価ありそうだよね……しかも私だって生物上はメスだ。知ってるよ私、メスの肉って柔らかいし子供産むから栄養もあるんでしょ!だから牛もオスよりメスの方が肉が柔らかくて美味しいんだよね!!



畜生!!他のメスが子供を育てる時の栄養としてまだ子供さえ生んでいないメスの私が食われるのか!!何たる屈辱!!



恐怖より怒りで体が震えた。


だとするとさっきの龍は旦那だな!?嫁の心配も分かるし私が嫁ならそんな旦那が欲しいけど、栄養として食べられる身としては勘弁してほしい!私だっていつかは子供を産みたいのだから!!



龍が飛び去った天井を恨みがましく睨みつけていると、先程まで優しく卵を抱き寄せていたきょわちゃんの尻尾が今度はなんと私の腰に巻き付いて自分の方へと引き寄せてきた!!

いーやーやめてーっ!!



「ひっ!ひいいっっ!?待って待ってきょわちゃん!!私達友達じゃん!!撫でて撫でられてしてたじゃんっ!!忘れたのぉっ!?」



何が友達だ、と冷静な私が突っ込みを入れる。

確かに友達という程の何かは全くしていない。撫でて撫でられてはお互いをよく知らなかった時の出来事だ。



じたばた暴れてみるも尻尾は私の胴体を掴んでいるのでダメージも与えられない。

やだ私!スナック感覚でぽいって口に入れられて終わるの!?



涙で前が見えない。ああ、やだやだ…もう皆にも会えないの?だって、何か帰れそうな気配あったじゃん…絶対帰るって…誓ったのに………



…それに………ガウ君にちゃんと目の前で叶って……呼んで貰えてないよ………聞きた、かったのに………っ!!



最後にガウ君が笑顔で「叶」と呼ぶ最期の瞬間のような妄想が頭の中に広がり、ガウ君の手が私に伸びた所で私は幸いにも意識を手放した。












目が開くと、そこは真っ暗だった。



瞬きをしても景色は変わらず、時々聞こえる鼓動のような響きが私の不安な心を落ち着けた。



……これは、生まれ変わったの…だろうか?



これが母の胎内という物なのかも知れない。温かい闇の中で不意にそんな風に思った。


しかし私が目を覚ましてすぐ、その声は響いた。



「ふぉふぉふぉ…」


「きょわっ!きょわわ」



………最初の龍ときょわちゃんじゃないか。



2匹の会話のような鳴き声を聞いていると朧気だった意識が覚醒した。どうやら私はまだ生きているようだ。だとすると今私が居るのはきょわちゃんのお腹の中だという事になる。



やはり丸のみ型だったか、と絶望に震えていると、その直後一気に視界が眩い光に包まれ体に纏っていた温もりが消えた。



「……っ!!……え……!?っい、生きてるのっ、私っ!?」



光に慣れた視界が映し出したのは、私の決して白魚のようとは言えぬまんまるした指だった。

慌てて自分の身なりも確認すると、セーラー服をちゃんと着ている。……どうやらまだ死んではいないようだ。



「きょわわわっ」


「ふぉ…ふぉふぉ…」



2匹は私……というより私と共にきょわちゃんに抱かれていた卵を見て優し気に鳴いた。



………え?わ、私…きょわちゃんに温められてたの?卵と一緒に?



6番目の卵として他の卵と私は寄り添った状態できょわちゃんに寄りかかっていた。その事に気付いて飛び退くのように立ち上がると立ち眩みか脳が揺れて私はよろけた。



そんな私を支えたのは意外にも旦那の龍だった。


私が倒れる前に背後へ尻尾を移動させてくれたようで、まるで座るようにプニッと弾力のある尻尾に倒れこんだ。



「ええっ!あ、ありが臭ああっ!!?」



支えてくれたことに驚きながらもどぎまぎしつつ感謝を述べようとする私の鼻を強烈な異臭が襲った。失礼ながら今臭くて倒れそうだ。



やだ何でこの龍だけこんな匂いするの!?きょわちゃんこんな匂いしないよっ!?

尻尾か!この異臭は尻尾からだなっ!?



2匹の違いは一体何だとせわしなく目を交互に動かし観察している私を心配したのか、きょわちゃんが小さく「きょわ…」と鳴いて自分のお腹へと私を尻尾で抱き寄せた。



「え、と……え?きょわちゃん、私を食べないの?」


「きょわわ」



可愛らしく目をぱちくりして未だ心配そうに私を見るきょわちゃんに疑問を抱く。


あれ?私、食料じゃないの…?



旦那の龍も妻を諫める事も無く「ふぉ…」と鳴きながら妻の小さな顔にすりすりと頬を寄せている。


その反応から、どうやら私は食事として連れてこられた訳ではないのだという結論に至ったが………では私は何の為に連れてこられたのだろう…。


たぶん火とか吐かないと思うけれど、念のため近くにあったシーツで顔を隠しながら恐る恐るイチャイチャし続ける龍の夫婦に声をかけた。



「あの………仲睦まじい所、大変恐縮なのですが……そ、その……私はなにゆえ連れてこられたのでしょうか……?」


「きょ!きょわわっ」


「…ふぉふぉふぉ」



めっちゃ無視されてる。

たぶん言ってる意味どころか言葉だとすら思われていない…たぶん犬の無駄吠えとかと同じ類だと思われてる…



私はぽっかりと穴が開いた天井から見える青空を無意識に見上げた。



………ガウ君って………コミュニケーション取りやすかったんだなぁ…



まあ種族的には同じ人間だしね。私だってトカゲと心を通わせたりは無理だよ。



でもさ?出来ると思うじゃん?こういうファンタジーな世界って大体日本語で全て通じるじゃん?テレパシーで喋るんじゃないかと思った訳よ、私は。



私が遠い地に居るであろうガウ君に感謝の念を飛ばしていると、夫婦の睦み合いは終わったのか、またどこかへと旦那龍は飛び去っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。