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第21話



「かあえー、かあえー」


「……んぁ…ガウ君…?お、はよ…」


「おあよーかあえ!」



珍しくガウ君に起こされ目覚めた。

今日はムカデアラームではないようだ。…と思ったらムカデは既にガウ君の手の中でお亡くなりになっていた。



「かあえーっ!がおっ!」



畑に向かうのか起きて早々私の腕を掴み洞窟の外に引っ張るガウ君。どうやら収穫を手伝って欲しいようだ。


居候の私は身なりを軽く整えてされるがままに畑に連行された。







ウインナーを回収するとご褒美なのか球体の木の実を貰った。どうやら私の好物と結論付けたようだ。まあ合ってるけれども。


それをポリポリ食べていると次はコスモスの所に連れていかれた。

これも私の好きな物だと思ったのか私の制止を振り切り引っこ抜き私に差し出した。いや、これも好きだけれども!



そしてまた意気揚々と私をどこかへ連れて行こうとする。


……一体今日のガウ君はどうしたというのだろうか?後ろ姿を見ながら考える。



仲直りしてからよくガウ君は甘えてくるようになった気がする。でも私、ガウ君より弱いから甘えた所で役には立たないと思うけど。盾にされても秒で死ぬ。



…いやガウ君がそんな打算的に私に懐いてくれている訳ではないとは分かっている。じゃあ何だろう…?





……もしかして…私、ガウ君に恋されてる…?



「やっ!やだーっ!?そんな訳ないじゃないっ!!自意識過剰が過ぎるよ~結菜じゃあるまいしっ!!」


「がうー?かあえ?」


「あ、すいません、何でもないです」



自分の予想のあまりの恥ずかしさに大声で自分に突っ込みを入れてしまった。


いやだって女の子に花を贈るとか、可愛いもの見せてくれるとかって好きなのかなって…!!



「だからそんな訳ないじゃんって!!胸見てみなよっ!!」


「かあえ?」


「ごめんなさい。大人しくしてます」



再度大声を出してしまった…。私の度重なる奇声のせいでガウ君は時折私を振り返るようになり申し訳ない気持ちが湧き上がった。



いや、そもそもさ…野生児に恋とかあんのかって話じゃん…。男女の区別もついて無さそうだし、わたし胸無いから余計分かってなさそう…。

今の所女の子も見てないしガウ君、私を人間としか認識してなさそう…。



その真実に辿り着き、やっと私は大人しくなった。


これだから彼氏無しは困るんだ!男性経験が足りなすぎるんだよ!!将来悪い男に騙されるぞ!私っ!!私が断言する!!




自分を戒めガウ君の後に続くこと約10分。やって来たのはあの恐怖の妖精の住処にある湖だった。



「が…ガウ君…ここって…」


「がおー!」



そう雄叫びを上げ湖を指差した。

余談だがガウ君はこの雄叫びを一度上げる事で周りの妖精を追い払っている。ガウ君が妖精を捕まえる時は基本罠なので、出てきた所で面倒なのだろう。


妖精を液体にして食料にしているガウ君が居るという事で近付く妖精が居ないので私にとっては非常にありがたい。



感謝をしながら指差された湖を覗き込む…どうやら魚がいるらしい。


ガウ君に視線を移すと、さあどうぞ!という顔で私の行動を見守っている…前回私が魚獲りをしていたのを見られていたようだ。

そして好きでしていたと思われているらしい。


私は顔を引きつらせながらガウ君にお礼を言い、常備している網を構えジャブジャブと湖を進んだ。



……確かに魚影はあるけど…人面じゃないよね…?



恐々として魚を獲る。……あっ…2匹も獲れてしまった…



獲れてしまった事に逆にがっかりする。正直言って人面魚が数匹網の中で暴れ狂うのはホラーだ。


私は絶望の中諦めたように網を雑に引き上げる。悪いがキャッチ&リリースさせてもらう。


すると水面から上げるとツンと尖った鼻筋の美しい人面魚が…



「………普通の、魚だ…」



何と普通の魚が捕れた。私は人面が捕れると思っていたので拍子抜けする。


だが見た事のあるような極めて普通の魚に私のテンションは爆上がりした!!



「獲れた!!獲れたよガウくーんっ!!見てーっ!!」


「がーうっ!!」



凄い凄い!という顔で声を上げてくれるガウ君。

何だかお膳立てされてた気がしないでもないけれど、ガウ君がしていない方法で初めて食料を調達出来た事に私は跳ね回り喜んだ!!私って、本当にやれば出来るんだ!!


今まで口だけだったので私自身期待はしていなかったが、本当に食料が獲れた事が私に自信を生んだ!そうだよ、人間って達成感が1番大事!!



改めて生きる厳しさを再確認し、捕らえた魚を手に洞窟へ帰った。結構大きめの魚なので1人1匹で丁度いいだろう!


ついでにオシャレな私は香り付けにハーブ的なのがないかと嗅いで探したディルに似た葉っぱも採取した。これは後でガウ君に確認して貰おう!



ガウ君にナイフを借りてウキウキで鱗を剥ぐ。…あ、この鱗も後々何かに使えたりするのかなぁ…?


一応ガウ君に何かに使えるか聞きに持っていたら「がう」と一言言って全部捨てられた。どうやら何にもならないらしい。小さいもんね…


だが私は諦めない!ちょっと自立心が芽生えたので今度は皆知ってる原始的な火起こしにチャレンジしてみる事にした!



私は先に魚を並べ、火を点ける為にカラッカラに乾燥した落ち葉と枝を配置した。さて、あとは摩擦を起こすだけ…



ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ…



ひたすら無言で枝をゴリゴリする。本当はゴリゴリしなくても擦るだけで良かったりするらしいけど、やっぱり基本スタイルってこれだよね!





やり続ける事20分…やっと白い煙が細い柱を作り上がるが、一向にそこから進む気配がない。


やっぱり筋力か。ボディビルダーにならなきゃ無理か。



傍でじっとゴリゴリする私を見ていたガウ君に諦めて点火をお願いすると、ガウ君は待ってました!とばかりにものの数秒で魔石を使って点けてしまった。憐れなり。


やはり紐みたいなやつで自動的に回転してくれるタイプの火おこしを作るしかないか………乾燥した葉っぱでロープは何とか作れそうだし、検討してみよう。


私は目標を新たに作り、燃え盛る炎に炙られる魚を見つめた。



…ちなみにディルっぽい葉っぱだが、あれは薬になるらしくガウ君に見せるとすり鉢状の入れ物ですりつぶされ緑色の液体になった。前に飲まされた薬によく似ている…。

舐めてみたら数日は味覚が機能しなさそうな味がした。魚に塗らなくて本当に良かった…!!





そして焼けた魚。まずは料理人である私が先に毒見をする。………おお!?なかなか美味しいっ!白身魚みたいだよ、これ!!


だが流石に異世界。身は何故かピンクだ。

焼けてるのか不安になるが、皮が焦げているのに生焼けなんてことは無いだろう。


大丈夫そうだったのでガウ君にも振る舞う。現地の人の口にも合うか心配で様子を窺っていたら、口にしたガウ君は笑顔で一言鳴いた。


それにほっと胸を撫で下ろし、自分の魚を食べようと口を開くと、ガウ君が突然頭を撫でてきた。


いい子いい子されている!



「ありがとーかあえ」


「ど…どういたしまして」



何かお母さんに娘が初めて料理を作った時みたい…と思ったのは内緒だ。


しかし褒められるのは嫌いではない。

お兄ちゃんも今はしてくれなくなったけれど、よく私を「偉いな、叶!」と言って撫でてくれたのだ。懐かしいのと、恥ずかしいのでもじもじしてしまう。



そして全部食べ終わるとガウ君はまたどこかへ出かけて行った。忙しいなぁ…



私はこの間に食べ終えた魚の骨を流しにトイレへ向かった。ついでに用を足すのだ。







トイレに魚を流し、トイレに背を向け四つん這いで踏ん張る。私の大便スタイルだ。



この時ガウ君が付いて来ていると非常に恥ずかしい思いをするので絶対にガウ君の前では大便はしない。故に最近便秘気味だ。悲しい。



「ふー…ふーっ…」



何かウミガメの産卵みたいだな、と自分でも思う。


でもこうしないと最悪体勢崩したら湖に落ちて溶かされてしまうので致し方ないのだ。



トイレは無防備だから敵から狙われやすい。前もトイレ時にウサギが来てパニックになった。ガウ君が居たから大丈夫だったけど。



まともに考えると心が死ぬのでトイレの事を深く考えないようにし、なるべく早くトイレを終わらせた。さて、今日は糸の素材になる材料探しだ!



…と考えていると、足に何かが巻き付いた。



「……えっ…きゃ!なな、何っ!?」



巻き付いたものをよく見るとそれは植物の蔓だった。


私の足に巻き付いた青緑色の蔓はそのままずるずると私を引きずっていく。



「やだっ!離してよ!!」



反対の足で踏みつけるように蔓を押しのけようとするがびくともしない。それどころか、反対の足まで一緒に巻き付かれて足が完全に使えなくなってしまった。


私は唯一自由に動かせる手で周りの物を片っ端から掴む。しかし周りは短い雑草しかなくブチブチと切れてすぐに役目を失ってしまった。


広い開けた場所にあるトイレの近くには岩もないので、私は引きずられるがままだ。そして茂みを抜けた瞬間、蔓の引っ張る速度が上がった。



「ちょっと!!これ…これっ、アレじゃないの!?食虫…違う!食人植物!!」



頭で考えている事が口に出る程パニックを起こして私は引きずられている方向を体を捩って見た。

するとそこには…………予想通り、花の中央にぽっかりと穴が開き粘液を垂らした花があった。



「いやいやいや!これ結菜がよく言ってる同人誌じゃん!!何これ辱められるのっ!?わ、私胸無いよ!?まな板の叶だもの!!どっち!?どっちの意味で食われるのっ!!?」



結菜が興奮気味に語っていた異世界話に出てきた同人誌とやら。それによると、どうやら植物に性的暴行を受ける展開が異世界では日常茶飯事らしい。



結菜の話では誰かが助けに入って最後は助かるらしいので大丈夫そうだったが、この世界で私を助けてくれそうなのはガウ君ぐらいしか居ない。

助けに入ってくれる確率が限りなく低いが、一体どちらがマシなのだろうか?



今から私にまとわりつくであろう粘液が媚薬入りローションか酸性の粘液か、それが問題だ。



前者なら最悪生きては帰れる。大事な何かが失われるけれども。後者なら全てが失われる。

せめて逃げられないなら前者であれ!!


私は神に祈った。ガウ君を呼んでみたが、近くに居れば必ず返事をしてくれる彼の声が聞こえないという事はどう考えても近くには居ない。ならば私が道を切り開くしかないが、あいにく武器はトイレ付近に置いたままだ。しかも網。



とりあえず近くまで来たら殴ろうと思った私は拳を握った。…が、その瞬間、予想だにしない事が起きた。





「……はっ!?」





私、現在空を飛んでおります。この森はかなり広いのか、地平の先まで森が広がっています。


…あ、人工物のような塔がありますね。やっぱり人間が住んでいるんでしょうか?





………………って私投げられてるううぅ!?真上だ!花の真上に投げられた!!



下を向けば当たり前だが大きく口を開いた花が待ち構えている。私は体勢を整えたこ殴りに………って!!空中で体勢動かせないじゃんっ!?風っ…風が強すぎて動けない!!っていうか目も碌に開けれないっ!!


何と私はまっすぐ足を下にした直立の状態で放り投げられたようで、そのポーズからまったく身動きが取れなくなってしまった。


唯一頭だけは何とか動かせたが、この体勢からのパンチは流石に無理だ!なんとか頑張って腕も動いたけど風に煽られ頭上に手を伸ばした状態でとてもじゃないがパンチなど出来ない!足でキック!とかも思ったが私の足の幅よりも花の口が大きいので不発に終わる事は明白だ。


ああ!どうしよう酸性だったら!!お願いせめて生きる可能性のある同人誌系の方でお願い!!



「神様!いるならせめて同人誌のほっ」



―そして私は花に食われた。


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