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第19話




“ピッポッポーンペロッポッポーン!ポポロッペンポッポーン!”




謎の音に誘われ私は覚醒した。どうやら新しい虫が出たようだ。


私は薬を飲んだからかスッキリした体で音の正体を捕らえる為に網を装備する。捕らえて帰ってきたガウ君にプレゼントするのだ!



「かかって来やがれっ!腕の1本や2本くれてやんよ!!」



昨日落とした名誉を挽回しようと私は高らかに声を上げて洞窟を見渡す。


………が、何も居なかった……



あっれー…?



「幻聴…?」



しょぼしょぼと私のやる気が失われその場に座り込んだ。名誉挽回の道具が失われてしまった。


絶対虫が居ると思ったのになー…と考えながら天井も探してみる。…うん、やっぱ何も居ない。



私は虫探しを諦め、洞窟のすぐそばに生えた木で木登りの練習をする。この森の中では比較的若いのか小さいほうの木だ。うちの世界では結構大きい方だけど。


その木の前で靴下を脱ぎ、素足で木登りを試みる。


…が、すぐに落ちた。



「ぎゃっ!!うーん…何がいけないの?」



尻を擦り考える。明らかに筋力は無いだろう。これは今後の課題だ。そしてまず木登りの知識が私には足りない。

ガウ君で勉強してみたが彼は木を駆け上がっていたので論外だ。きっと爪をひっかけて登っているのだろう…私がしたら全ての爪が剥げる。私はそんなに軽くはないのだ。



よく中学の頃、結菜と逆上がりで居残りをさせられて苦労したものだ。先生達にはもう少し体重に対して配慮して欲しい。肉が無重力時間を短くするんだからさ。

大体中学に上がってまで逆上がりなんてしないと思って小学生時代もろくにやってなかったのに無理だよ。


だが人生とは得意な事より苦手な事の方が何度も巡って来る確率が高い。そして今、小学生の頃に諦めた木登りが巡ってきた…何という因果。



しかし今私は生きねばならぬ。授業と違いこちらの木登りは死活問題だ…何としても近日中に登れるようにならなければ…!!


とりあえずこうドスンドスンと落ちる音を繰り返していては何かがやって来るかも知れないので一度洞窟に戻った。







「ふっ!ふっ!ふっ!ふっ!」



現在私はスクワットをしている。勿論脚力を上げる為だ。


森においては筋力が命だ。化け物に追いかけられても足が速ければどうという事はない。つまりこれからの生活の要になるのだ。



そして洞窟の中を駆け回る。洞窟は広さで言えば体育館ぐらいある。つまりめっちゃ広い!!私はとりあえず50周を目安に走った。



「がぁ!かあえー!」


「!!おっ…おかえっ…り…ガウっ…く、ん…!」



息も絶え絶えに返事を返すと心配症のガウ君は荷物を放り投げ私の元に血相を変えてやって来た。



「かあえ!ぐぅあ?かあえっ」


「だい…じょうぶっ…走った…だけっ…だから…」



体力の限界で膝をついてそう言うとガウ君に寝かされた。

いやほんと迷惑ばかりかけてごめんね…まさか自分がここまで体力無いと思わなかったの…



そして私を寝かせるとお決まりの妖精液を運んできた。病院かな?ここは。


ありがたく受け取り飲み干す。実にファンタジーだが妖精液を飲むと体力が回復するのだ。



飲み干した頃には息切れも治まり普通に話せるようになった。それを確認するとガウ君は笑顔でがう!と一言鳴いた。



「ありがとうガウ君、狩りもお疲れ様」


「おうまれさまー!ありがとー!」



そう言うと思い出したようにガウ君は放り投げた入れ物から何かを取り出した。



「かあえっ、があっ!」



笑顔でそれを私に差し出す。その手には…可愛らしい黄色い花が顔を覗かせていた。



「わあっ!お花だっ!この世界にもあるんだ!くれるの?」


「うーっ!がおぅ!」



私が可愛い花に目を輝かせると、ガウ君は安心したように笑った。そしてギュッと私に握らせるようにして渡してくれるガウ君。クラスの男子よりも紳士な対応に私は胸が高鳴った。イケメンでこれは卑怯…!



「…ありがとう、ガウ君…嬉しい」



そのまま花に頬ずりをする。黄色いコスモスみたいですごく可愛い。


私が頬ずりをしていると、ガウ君が何とも言えぬ顔で私に手を伸ばしてきた。


そして途中で何かに怯えたような顔をすると、ガウ君は手を引っ込めてしまった。



…きっと球体事件の事を思い出して引っ込めたのだろう…。ガウ君にトラウマを作ってしまったようだ。



私は花に頬ずりをするのを止め、ガウ君の手を掴んだ。



「う…?かあえ?」


「大丈夫だよ、ガウ君。私怖くないよ」



そう言って今度はガウ君の手に頬ずりした。

一瞬ガウ君の手がビクリと緊張したのが頬から伝わったが、引っ込めずに手はされるがままだ。



…優しい手。いつも私を守ってくれる大好きな手だ。



温かく荒れた手が気持ちいい。私より少し大きな手が愛おしい。



そうやってすりすりしていると、ガウ君が私の肩に額を押し付けぐりぐりと額を擦りだした。



「うー…ぐるる…うー…」



何か猫みたいだな、と私はそのくすぐったさに笑いガウ君の背中を撫でた。何だかやっと仲直り出来た気がする。








「かあえっ!うー!うー!」



すりすりタイムが終わり、ガウ君は今度はあの球体を差し出してきた。どうやらこの間私の分を食べたから怒っていたと思われていたようだ。



…これは確かに美味しかった。美味しかった…けど!これが何なのかが知りたい!!もうこの際魚卵でも暴れないから知りたいっ!!



「ガウ君、これって何なの?」



魚卵は表現出来ないので首を傾げて球体を振る。これで勘のいいガウ君には伝わったのか、洞窟の外を指差しそのまま外へと歩きだした。



私はその後を追いかけるように付いて行き、ガウ君の足が人面魚の湖の外れに着いた所で止まった。

…やっぱり魚卵…


と私が警戒していた直後、ガウ君は木に登り始めた。そのガウ君を見ようと顔を上に向けた私は息を飲んだ。



「……!!…わあっ…!」



その木は一言で言うならクリスマスツリーだった。ギザギザした葉っぱに枝には色とりどりの球体が付いていた。

私が食べた白い球体ももちろんぶら下がっている。どうやらこの木の木の実だったようだ。


まともな木の実もあるんだな…と事実にホッとしていると、ガウ君はその木の実を1つだけもぎ取り飛び降りるように地面に着地した。

そして岩にガンガンぶつけて中を開けて私に見せてくれた。


中には私が貰った時同様にカラフルな小さい球体が幾つも転がっている。私はこの世界でまともな食料を初めて見つけた。



「すごいね、ガウ君!こんな木があるんだね!!」



興奮しながらその木をゆするが、びくともしない。当たり前だ、幹の太さが直径10メートルはある。体当たりしたって落ちては来ない。


私が喜んでいるからか、再度ガウ君は球体を取って来てくれた。今日は大漁だ!



「ありがとうガウ君!私も自分で取れるようにこれから頑張るからね!期待してて!!」



意味が分からないのだろうが、私がやる気に満ちているのを見てガウ君は嬉しそうに跳ね回っていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] いせかい [一言] 読み進め中! 不思議現象に馴染む?馴染まない? 手探りの交流と妥協が面白ハラハラ楽しいです 目ざま虫がちょっとお気に入り。 ビジュアルはイヤですがw
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