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第17話

今日はこの世界に来てから8日目だ。なんと1週間を生き抜いてしまった。


それもこれもガウ君のおかげだ。あれから2度ウサギ型の化け物に遭遇したが、付いて来てくれていたガウ君のおかげで事なきを得た。


あの化け物は流石にガウ君も食べないらしく、額の魔石だけを取ってトイレに流している。ここで私はこの化け物は魔物なのではないかという結論を導き出した!


魔物なら魔力を持っていても不思議ではないだろう。つまりあの化け物は魔力があったから火を出せたのだ。


という事は、ガウ君にも魔力があるという事だ。あの魔石単体では火が出ないという事は私で確認済みだ。


そして2代目ムカデだが、あれは次の日ナスになっていた。…原理が分からない…


しかし結菜のクッキーを食べたナスなのでそのまま埋めっぱなしにした。…だけど、そうなるとあの畑の土が特殊とかそういう事ではないようだ。


きっとムカデは埋めれば正規ルートでウインナーに。妖精は水に漬ければ妖精液に。これが最近分かったこの世界の理だ。


そして何故か私は毎朝ムカデに起こされる。


洞窟で暮らし始めて毎日私はあのピピピ…という鳴き声を目覚ましに朝を迎える。というか目覚ましにしている。


最近では軽い運動として朝、網目葉っぱと木の枝を削って作った虫取り網で追いかけ回している。

気付いたのだが、あのムカデはポポポ…という鳴き声に変わらない限りこちらに攻撃してこない。なので倒すならピピピのうちだ!



そんな感じでたくましく現代人を捨てて野性味溢れる生活を過ごし、現在私は新規エリアに到着したところだ。やっと新しい所に来れて私もウキウキだ!


足のやけども治り、少々痕が残っているが完治したという事でお祝いにかガウ君が連れてきてくれたのだ!


そして今、私の眼前にはあの妖精の湖に勝らずとも劣らない美しい湖が、太陽に照らされ輝いていた。眩しいっ!



「ガウ君!ここは入って大丈夫な湖?」


「うー?がお」



よく分からないようなので、靴下を脱いで片足を湖に突っ込もうとする。しかしガウ君は無反応だ。よし!入っても大丈夫だ!


ガウ君の場合、私が危なそうな場合は威嚇して近付かないようにするのでこういう場合は危険は無いから入っても良いよ、という事だ!


私はおそるおそる足を突っ込む。…あ、気持ちいい…


ちなみに今日はスカートなので、そのまま湖を直進する。え?何をするのかって?魚獲るんですよ!魚獲り!


実はあの対、ムカデ用の虫取り網は魚獲り網にも変身するのだ!頑張って寝る間を惜しんで作った甲斐があった!!


洞窟の湖は溜池なのか魚は居ないので試せず、妖精の湖には近付けなかったので試せず、トイレはトイレなので試せず、私は悶々としていた。


しかし念のため毎日この網を持ち歩いておいて良かった!私は水面を走る魚影に胸を躍らせた。


ゆっくり魚が群生する草の影に近づく。魚は襲われた事が無いのかまったく逃げなかったので、私は勢いよくその場所に網を振り下ろした。



「きええええいっ!!」



私の勢いをそのまま反映し、水しぶきは大きな柱を作り上げた。


結果…なんと4尾獲れた!!凄いぞ私!やれば出来る子!!


自分を褒めつつ取れた魚は焼いて食べよう、とわくわくしながら魚を見ると、その魚の形相に私は飛び上がった。



「ぎぃえええっ!?じっ人面魚だぁあああっ!!」



模様などではない、本格的な人面魚が網の中で暴れていた。何故か鼻があり、目は涼しく切れ長だ。そして非常に意味が分からないが髪の毛が生えている。


私はそれを目にした瞬間、網から振るい落とし湖から飛び出た。



「がーぅ?かぁえ?」


「はあっ…はあっ…もぉー!!この世界意味わかんないぃぃ!!!」



せっかく作った魚獲り網も無用の長物になってしまい、私は怒りにじだんだを踏んだ。現代知識とかそういうレベルじゃないよここ!!


くそう、くそう!と呟きじだんだを踏む私を見てお腹が空いて怒っていると思ったのか、ガウ君がよく分からない丸い球体をくれた。

え、何これ…卵?



「が、ガウ君これ…えっ?何?」


「がぅあー!がう、がう、がう!」



聞くと石に打ち付けるような動作を返してくれたガウ君…何か生まれたりしないよね…?


チラチラガウ君を見ながら言われた通り大人しく打ち付ける。すると掌に収まる大きさのその球体はどんどんとヒビが入り、10回程打ち付けるととうとう開き中身が出た!



中には……丸い金平糖のような色とりどりの小さな球体が入っていた。

まるであれだ…あれ…修学旅行で行った香川で見た………おいり!おいりにそっくりだ!!



「ガウ君、これって食べれるの?」



まさか綺麗だろ?とかいう為だけに私に見せた訳ではあるまい。きっと食べ物だと思うのだが念のため確認だ。見た目がどこから見ても固形の柔軟剤だから少し心配になってしまった。


私が口に入れるフリをして伝えるとガウ君が球体を鷲掴みにして私の口に突っ込んだ!



「ぼごぉ!?…っふ…!!…も…!!」


「がぁ!」



笑顔で私の口に突っ込んだ後、自分も球体を口に放り投げ食べるガウ君。美味しいのかスナック菓子感覚でもぐもぐしているが、私は今それどころではない。



「ご…っ!!…ぐ……ぅ……!!」



息が出来ない!!!



ガウ君が鷲掴みにした球体は私の口の要領ギリギリだったのか、口には入ったものの噛めなくなってしまっていた。おまけに口も閉じれない。


陸で溺れるような奇妙な感覚が私の体を震わせた。死の間際なのか体の力がどんどん抜けて手は真っ青になっていた。きっと顔も真っ青だろう。


ガウ君の手前、吐き出すのは流石に悪いと思い選択肢から除外していたがこれは本当にヤバい!!本当に死ぬ!!


私は人前で吐くより命の方が尊いと判断したのですぐさま手で器を作り吐き出した!食べ物は粗末にしない!!



「ごばぁっ!!……っはぁ……はぁー………し…死ぬかと思った…」


「うー?」



残りの球体を全て食べ終えたのか、ようやく私の様子がおかしいという事に気付いたガウ君が様子を見に来てくれた。そして肩で息をする私に眉を下げて心配そうにうろうろと行ったり来たりをし始めた。……いや、君加害者…



そしてガウ君は私の掌にある唾液だらけの球体をじっと見つめた。…いやいや吐瀉物見ないで。


気まずくなりガウ君に背を向けて吐瀉物を再度食べる。…まあ私が口から出した物だし…


図太くなったもんだ。と自分に野蛮人の称号を与えて球体を頬張る。…おお!?何これ美味しいっ!!食感ブルーベリーで味がオシャレな甘みがするっ!!ここに来て初めて感じる人工甘味料っぽい味!


意外に美味しかったので味わって食べた。どこで見つけた何なのかちゃんとガウ君に聞いとかないと後で怖い目みそうだな…さっきの人面魚の卵の可能性も捨てきれない…


と疑心暗鬼になっていると、不意に私に影が差した。驚き顔を上げるとガウ君が座っている私の視線に合わせるように目の前に屈んで立っていた。



「かぁえ、おいいー?」


「おいいー?……ああ!うん、美味しいよ!」



最近のガウ君は私の言葉を覚えるのが趣味なようで、私がよく喋る言葉をこうやって真似をする。今度は美味しいにチャレンジしたいようだ。


私の美味しいを聞いてご機嫌に体を揺らすガウ君。本当に素直だ。


そしてこれは素直故なのだろう。ガウ君は私と美味しいを共有したかったのか、私と一緒に謎の球体を再度食べだした。



…勘のいい人はお気付きだろう。ガウ君は既に自分の分の球体を食べ終わっている。…ならばどこから球体が現れたのだろうか?



答えは簡単。ガウ君は私の掌に顔を押し付け現在むしゃむしゃと頬張っている。



そう、私の掌から。………吐き出した球体を………



「ガアァッ!!??ガウ君吐き出しなさいっ!?汚っ…!!こら!!やめなさい!やめなさいっっ!!?」



私が羞恥とおぞましさに絶叫しても、聞こえないのか私の手を掴んで離さない。

後ずさり球体を持って逃げようとしていた私は足を全力で後退させようとするが、ただの帰宅部が野生児に筋力で敵う筈もなく地面の土を抉るだけで終わった。


よほどの好物なのか私の手の上、…しかも一度吐き出したものだと分かっていないのか舐め取るように球体の汁も残さず食べていく。


そのたびに掌に当たるガウ君の舌と歯と吐息が私の神経を刺激し、怒らなければいけないのに変な声になってしまう。



「ガウ君っ!やめなひぃっ!?わ、私の唾液がつ…ぅん…!!あ…っ」



指の隙間にガウ君の舌が撫でるように当たり嬌声に似た声を上げ私は死んだ。





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