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第16話

探検が終わると日も落ちて空が茜色に染まっていた。また今日が終わるが不思議と1日が長く感じる。


きっと内容が濃いからだね。私、学校が休みでバイトも休みの日は1日寝て過ごして起きたら夜の8時で絶望したもんだよ。それから考えるとありがたいね。時間って。



そんな事を考えながら洞窟の端っこで収穫物を広げる。ガウ君程ではないが私もそこそこ取って帰ってきたのだ!いやぁ、土地の所有者とか居ないと楽でいいね!現代なら窃盗で捕まってるよ!


私は収穫物を手に色々試してみる事にした。物作りの基本とは物同士を組み合わせる事!1+1=1!!つまり1つの何かが完成するのだ!!


私は早速そこらへんで拾って来た丈夫な枝を用意する。

木は武器にもなるからとってもお得!冒険者の皆さん、初めての冒険には是非ひのきの棒をどうぞ。年老いたあなたの腰も杖になって優しく守ってくれます。



…しかしこの森の木はとんでもなくデカい。ので、私が今持っている枝も実は私の胴回り程の太さがあったりする。めちゃくちゃ重かった…



私は思ったのだ、今朝の戦いで。鞄じゃ流石に無理があると…!


せめて棒、願わくばこん棒、叶うならば剣が欲しい。そのすべてを叶えてくれるのがこのたくましい枝なのである!!


私はガウ君から石でできたナイフを借りた。黒曜石で出来たようなナイフは切れ味抜群だ。

一体どうやって作ったのだろうと思ったが、それを問えるほどのコミュニケーション能力が無いので今度ガウ君が作ってる時にでも見て盗もうと思う。


とりあえず用意だけしたが今すぐには作らない。何故ならガウ君が食料を求めて洞窟から出たからだ!この機会を逃してなるか!!


私はガウ君を見送ってすぐに水浴びの準備をした。もう体が腐っちまうよ!






全裸になって急いで体を拭く。すると私の体の何と汚い事か!!泥やその他何かの汁が体に付いていたのかタオルはみるみる黄色く黄ばんだ。


わ、私…家の中では綺麗好きで有名だったのに…!!


ショックで眩暈がしたが、とりあえずタオルに黄ばみが無くなるまで拭いた。めっちゃ寒いけれど、まだこの世界は夏の終わりぐらいなので大丈夫だ。


…だがそろそろ原始的な方法でも火を点けられるようにならなければ…



「ふぅ…ジャージ持って帰ってて良かった…」



1人ジャージに着替えて過去の自分に感謝する。あの時は汚いと思って持って帰ってきたジャージが今では1番綺麗な服だ。



私は制服を洗濯しながらこれからの事について考えた。



…まず、この服達は絶対に犠牲にしてはならない。腰蓑生活が始まると思え。


本音を言えば下着も欲しいが…贅沢は言うまい。1セットあれば十分じゃないか。


でも出来ればやはりシャンプーは欲しい。髪質が悪くなり、頑張って直毛っぽくなってきていた自慢の黒髪が外はねクセ毛に逆戻りだ。悲しい。


そして元の世界への戻り方……これは正直絶望的だ。

そう簡単に時空が超えられるならアニメキャラと結婚し放題じゃないか。そんな話聞いた事も無いので絶対そんな簡単に戻れないのだろう。


私は大きなため息を吐いた……



「…はぁぁ……皆、元気かな……」



おもに結菜が心配だ。


結菜とは中1の時からの付き合いだが、昔は引っ込み思案で、あんな風に堂々と生きているような子ではなかった。


今でこそ目標(転生に期待)を見つけて元気に妄想を繰り広げているが…元の内気な結菜に戻ってしまったらと思うと心配だ…。

それに、その時私は結菜の傍にはいてあげられないのだ。


…でも結菜は今、沙織もついてるし大丈夫だろう。


結菜は馬が合わないと言っているが、沙織はそうでもないらしいし。喧嘩ばかりするけれど、私が居ない間も2人仲良くやっていて欲しい。



家族は…お父さんの味方が居なくなっちゃったのが心残りだなぁ…



お父さん、基本弱いからお母さんに大好物のチキン南蛮取られても何も言えないし。お兄ちゃんにも腕相撲で腕折られるし。


お母さんとお兄ちゃんは似てるから大丈夫だろうけど、お父さんがあの中に1人残されるのはちょっと不憫だ。





「…うわー…水汚い……」



久々に洗った制服は透明な水を茶色く汚した。もうクリーニングだなんて言ってられないので手洗いした制服は、プリーツが死んだ。元の世界に帰ったら買い替えだな。


何本か持って帰ってきた枝の先端で洗濯物を干す。先端はギリギリ脇に入るので枝を切らなくても良くて私の体力にも優しい。



そして干し終わり私は洞窟の入り口に目を向ける。どうやらガウ君はまだ帰って来ないようなので、先程から気になっていたアレを掘り返してみる事にした。



そう、ムカデの墓だ。



せっせと土を掘る。気分は墓荒らしだ。


先程見たウインナーの正体がこのムカデだとすると、私が埋めたムカデもウインナーになっているのだろうか?と考えた私は罰当たりにも埋めた死体を掘り返す。



そして努力の末掘り当てたムカデは普通にムカデだった。



…何でだろう?もしかして熟成時間が足りなかった?それとも土のせい?



首を傾げて地面でひっくり返っている紫のムカデを観察する。…が、やっぱり素人が考えた所で答えなんて出る訳は無かった。私は項垂れた。



とりあえずまた戻して経過を見よう。こういうのは何度も実験して初めて仕組みが分かるものだ。焦ってはいけない。


私は再びムカデを埋め直し、ガウ君の狩りの成功を願った。







「かぁえ!うがぁ!」


「おかえり、ガウ君。お疲れ様」


「おうまれさま?」



誰様だ、それは。



今日も今日とてガウ君は全裸で絶好調だ。手に握った入れ物の数が獲物の数を物語っている。


まだ元気なのか、妖精のビービ―と鳴く音が入れ物から響く。…でもこれに飲み水入れたら次の日妖精液になってんだよね…訳わからんわ。



するとガウ君の目線がするすると下に降りてきた。…ヤダ何?私の下半身見てるの?


視線にもじもじと体を揺らすと、ガウ君がジャージのズボンに手をかけ一気に引きずり下ろそうとしてきた!またか!!



「ぎゃあっ!!ガウ君それはダメ!!それはスカートめくりと違って犯罪者のやり方だよ!!そして私今ノーパンだから絶対だめっっ!!」


「がうっ!!ぐるる…ぐぅあう!!」



私は慌てて下がるズボンを押さえるが、ガウ君の方がやはり力は強くゴムで締められているズボンはどんどんずり落ちていく。

…っや、やばいよ!!このままじゃ本当に下半身丸出しになっちゃうっ!!


そもそも何でこんな一生懸命下ろそうとしてるの!?トイレじゃないんでしょ!?


私は混乱してうまく纏まらない頭を無理やり回して答えを探す。


え、えっとー…ガウ君…さっき何て言ってた?えー…お、怒り声と…ぐぅあう…?あんまり聞かないやつだけど、何だったっけ?最近聞いたような…


引っかかった言葉に焦点を当てて必死で考えると、妖精の住処に近い所でガウ君に葉っぱを渡された時の事を思い出した。



『かぁえ、ぐぅあう…うー』



あ……ああっ!!ふくらはぎの火傷か!!そうか、ジャージが長ズボンで火傷の様子が見れなくなったから脱がせようとしてるのか!!ってちょっちょちょっと待って!!



「ガウ君!こっち!!こっちから見えるから!!」



私は急いで足首の方を引き上げた。するとガウ君はズボンから手を放し、スン…と大人しくなり至近距離で火傷を観察した。



よ…良かった…。乙女の聖域が守られた…。



私は安堵に息を吐きながらガウ君に見えやすいように後ろを向いた。


ちなみに体を拭いた時にあの葉っぱは貼り直しているので舐められる心配もない。私は堂々とガウ君にふくらはぎを見せびらかした。



するとしばらくじっと見ていたガウ君は私のズボンの裾をクイクイと引っ張ってきた。ん?どうしたの?



「かぁえー、ぐぅ!がおぅ!」



私が振り返ると、ガウ君は地面にうつ伏せに寝転がった。どうやら私に寝転んで欲しいようだ。


しかし私はもう処置をしているので放っておいて欲しい所だ。

…だが問答無用で舐めてきた昨日と違い、わざわざ私に寝転んで欲しいという辺り何かしたい事があるのだろう。私は大人しくガウ君の指示に従いうつ伏せに寝転んだ。



「…ガウ君、これで良いの?」


「がぁ!」



確認を取るといい返事が聞こえ、そのままごりごりと何かを潰すような音が背後から響いた。


気になりそっと体を捩って後ろを見ると、ガウ君が何かの草や木の実を表面がデコボコしたすり鉢のような器で潰していた。

…え……もしかして、薬作ってくれてるの?


私の疑問に答えるように、ガウ君は「がう!」と一言呟くと、勢いよく私のふくらはぎの葉っぱを剥がした。



「っ!!」



ひんやりとした空気が患部に当たり、小さく呻いた。妨げるものが無くなったおかげで、火傷の痕は思いのほか冷気に反応したのかすごく冷たく感じた。


その後すぐガウ君が薬を足に塗ってくれて、また冷気は遮断され私は縮こまった体の力をゆるゆると抜いた。…けど…この薬…なんか痒い…!



「が、ガウ君…これ痒いんだけど…」


「おれあゆい?」


「これ、かゆい」


「あゆい?」



言ってどうなるのかという話だが、これがとてつもなく痒い事を誰かに知って欲しかった。

だって流せないじゃん。せっかくあんなゴリゴリして作ってもらったもの、数秒で流したら泣かれるよ?私だったら泣く。労力を返せと。





塗り終わると、ガウ君は例の葉っぱで蓋をするように足に張り付けた。やはり私の処置では納得がいかなかったようだ。



「薬つけてくれたの?ありがとう。ガウ君」


「ありがと!くうり、ありがとぉー!」



ありがとうにありがとうと返すガウ君。どういたしましてを覚えさせたいが、流石に難易度が高いのでやめた。覚える方も、教える方も…



私の足の処置が終わると、ガウ君はヘッドスパを希望してきた。どうやら前回のヘッドスパをお気に召して頂けたようだ。


特に今する事も無いので、常連になったガウ君にヘッドスパをしてあげた。…私より綺麗好きだな…





「…ガウ君、向こうむいてよ」


「うー?」



首を傾げながら私を見つめるガウ君。ヘッドスパが終わった瞬間こちらを向いてずっと見てくるのだ。…おもに、私がタオルでガウ君の髪を拭くのを。



何がそんなに気になるのか、ガウ君は向かいに座る私をタオルドライされながらずっと碧い目で見てくるのだ。その目が綺麗だから余計に居たたまれない。何か悪い事をしてる気がしてしまう。



「ガウ君、向こうむいて」



何を言っても首を傾げるだけで視線を動かしてくれないので、私はガウ君の後ろに回り込みタオルドライを再開した。するとまた正面を向いてガン見し始めた。何なんだ!!



「…はい、よし終わり!タオルドライ終了!」



そう言って私は早々に切り上げ手を叩いた。終わりの合図だ。


ガウ君はよほどタオルドライが気に入ったのか、物足りなさに珍しく膨れさせて不満げだ。


可愛い事するなぁ…とのほほんと見ていると、タオルドライを続けたいガウ君が私の腹に突進してきた!



「ぐっふ!?が、ガウ君?タオルドライは終わりだよ!おーわーり!!」


「うー!うー!」



ぐりぐりとガウ君は私のお腹に頭を擦りつけてくる。まるで雨に濡れた犬のような行動に苦笑いが浮かぶ。


ジャージに水気を吸ってもらっているのか、ガウ君は頭の角度を変えて各方面からジャージドライを始めた。…じゃ、ジャージ、さっき替えたばかりなのに…



…その後10分程ずっとガウ君に頭を擦りつけられ、お腹が擦れてジンジンした。




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