二話:最後の『楽しい』記憶
第一章:最初の過ち
二話:最後の『楽しい』記憶
「とりま、買いたいもん何かあるか?」
ハルはそのオープンケースを指差し、言う。
「この『つなまよ?』ていうの食べたい!取って!!」
俺達は今コンビニに居る
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──今から一時間ほど前。
「改めて!あなたのお名前は何ていうの?」
「ハル…俺の名前は余空 遥だ」
「ヨゾラ ハル……なんか女の子みたいなお名前だね!」
「──女っぽいってお前なぁ」
こいつ人が気にしてることに土足でズカズカと──、
そんな事を思いつつ、この場から早々に撤退できる準備を進める。
「ほら、背中乗れ。おんぶしてやる」
「良いけど…乗り心地とか大丈夫?」
「そんな些細な問題気にしてんなら置いてくぞー」
一番重要と言いたげな顔でそいつは渋々背中に乗ってきた。
まず、川沿いを駆け抜けた。
遠くで自身を凝視する誰かに気づくことなく。
途中、二、三メートル程の石垣を発見した。ショートカットできそうである。
ハルはパルクールするかのように石垣を登り始めた。
着地して跳ぶ──着地して跳ぶ──この繰り返し。その姿はまさに猿そのものであった。
「え…ちょ!待って!もっとゆっくり──」
サクッと登り切ることに成功した。一瞬右目がバリッとしたが、このくらいは甘口も甘口だろう。
「──降ろし───」
そしたら近くに家があったため思いっきり立ち幅跳びをして屋根に着地し、そしてそのまま屋根の上を転ばない程度に走って──、
「ちょっと待ってって!!」
「え?どした?」
そう言うとそいつは俺の背中を降りる。そして──、
「ぁ…ぉご……オエエエ」
「えぇ……」
かなり激しい動きをしたからか、嘔吐してしまったようである。
流石の俺もそいつの背中をさすってやることにした。
「ゆっくりしてっていったよね!!?吐きそうだから降ろしてっていったよねえ!!?」
「あ?んなこと言ってたか?もっとはっきり言ってくれ」
殺意を向けられてしまった。まあ多少反省することにはするか…そう思う今日この頃であった。
──数十分後、体調は多少回復したようである。いやぁ一安心、一安心。
「んじゃ、そろそろ行くか。まず、下に降りてそっから──」
瞬間、腹の音が鳴る。
「吐いたからかな…お腹空いてきちゃった…な、何か食べよ!!」
「は?お前マジで言ってる?嘔吐後は最低でも一、二時間食わずに水分補給しろ」
基本、嘔吐後は一時間絶食をさせてから白湯を少しづつ、というのが鉄則なのだが…流石の俺も少し心配になる。
「大丈夫!私三十分くらい休めば食欲とか元通りになる身体だから!!」
「今食うのは絶対辞めとけ。とはいえ、夜飯くらいは俺も買いに行きてーしな。俺も家に飯とかねーし。仕方ねぇどっかで買うか」
そう言い「バレたらやべーから…ほらこれ着ろ」と言ってハルは少女にパーカーを貸したのであった。
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ということで今に至る。
「はいはい、『ツナマヨ』なぁー。そういやお前、金あんのか?」
「一応あるよ!ほらお財布!!」
中身には小銭35円が入っていた。
「あ……ごめん!!よろしく!!!」
「引っ叩くぞ」
ということで奢ることになりましたとさ。めでたし、めでたし。
「ありがとうございましたぁーー」
コンビニを出た後──
「そういやお前35円しかねーけど泊まりとかどうするんだ?」
「……あ………えーと……そのー………トメテクレルトアリガタイナー」
「──お前何で施設抜けてきたの?」
──ということでこいつの一日限定お泊り会イン余空家が確定してしまったのであった。
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皆は星は好きであろうか。俺は大好きである。
現時刻夕方、大体18時くらいだ。
空であればちょうど日が沈み、月がやってくる。
海であれば海風が止まり、夕凪へと変化してゆく。そんな時間だ。
この時間になると朝では全く見えなかった星や星座が浮き彫りになっていく。
それにしてもやっぱり、
「夕日は綺麗で何回見ても惚れ惚れすんなぁー」
「ねぇねぇ!屋根の上で何してるの?」
「あーそれはだなぁー………──ッッ!?」
久しぶりに背後を取られた。その状況に流石のハルも驚きのあまり屋根から落ちそうになる。
「ちょ!!大丈夫!?」
「──お前かよ……ガチで焦ったじゃねーか」
そう言い、ため息をついた後思い出したかのように質問する。
「そういや、俺お前の名前聞いてなかったな。ずっとお前呼びなのはそっちもやだろ。まさか俺は答えたのにお前は答えないなんて薄情なまねしねーよなぁー」
「櫻だよ!施設の人が付けてくれた名前なの!」
「……結構あっさり答えるんだな、しかも髪色そのまんまだし…まあ一日の付き合いだろうがよろしくなサクラ」
「それで何してたの?」
櫻はポケットからツナマヨおにぎりを出して質問する。
「今から俺の趣味……天体観測をする!!」
「おぉー!………星座の見方とか何も分からないんだけど…大丈夫??」
ハルは「教えてやるさ」と言いポケットからあるものを取り出した。
「───なにそれ」
「『星座早見盤』だ。指定した『日付』と『時刻』を合わせることでその時の星座と星が何処にあるのかがわかる画期的なアイテムだ。──それと、これこれ」
そう言うと更にポケットからあるものを取り出した。
「四次元ポケット?」
「あったら良いな!これは『双眼鏡』星を良く観るのにめっちゃ使えるぞ!倍率は低めが特に良い。これは『方位磁針』方角の把握に有効だな!」
そんな感じで楽しそうにスラスラと解説していく。その姿は年相応の幼い十一歳になったようで櫻には少し微笑ましく見えた
「あ?どした急に嬉しそうな顔して」
「──いやぁ…ハルってほら、かなり大人な雰囲気があるからさ、こうやって趣味には素直に没頭できるんだって少し意外だなぁーって!」
「そうかぁ?言われたことねぇや。──星もまだ来ないだろうし、最近の近況でも話すか?」
「いいね!!そういえば最近施設でねぇ──」
──そして他愛も無い会話が進んでいく。少しして櫻はずっと思っていた質問をハルに投げかける。
「そういえばさ、ハルは何で私にこんな色々してくれるの?」
「ん?面白そうだからだが」
「……確かにそうなのは何となく分かるんだけどさ…似てるからかな…それだけじゃない気がして」
しばし悩んでから答えた。
「強いて言うなら『俺の憧れの人なら同じ事をするから』ってとこかねぇ」
「その憧れの人って?」
「もう死んじまった人だよ。今でも俺はあの人に真の意味で何かしてやれたかなって思う」
「ハル……」
「……今は暗い話はいらねーな!そういやお前今何歳なんだよ」
「──えっとねぇ……」
櫻は自分の手を使って年齢を数え始める。そして、
「七歳!!」
「えぇ…?七歳?七歳ってことは……小学一、二年生くらいじゃねーか!?」
七歳と聞いて驚いた。
今すぐ施設に送り返した方が良いのではないかと思えてしまうほどにそいつは幼かった。
「……今は細かい話はいいよ!そういえばハルって何か『夢』ってあったりするの?」
「そうだなぁー俺の『夢』は──」
「ハル!!星が見えてきたよ!!」
時が来ると同時に低学年の扱いはクソ面倒くさい。そう思うハルであった。
早速遠くに見える学校の時計と星座早見盤を一致させ、空と照らし合わせる。
「おいサクラ!あれ見てみろ!」
「あれは……ダメだ見分け難しくて分かんない……」
「あれは牡牛座だな!左上の背中部分とされる『プレアデス星団』やオレンジ色の右目とされる『アルデバラン』が有名だな!」
「ねぇねぇハル!あの星なんて言うの?」
「──ありゃこいぬ座の『プロキオン』だな!『シリウス』『ベテルギウス』と共に冬の大三角を形成してる一つだ。」
「今って春なのに冬なんだね」
「あぁ、なんなら二月がベストシーズンまであるからな。お!ありゃ──」
それからハルと櫻は星に夜空を眺めながら語り合い、楽しんだ。
満ちてなかった人生において最も楽しい最後の『楽しい』記憶となるのであった。
明日もこの『楽しい』が続くと良いな。そう思い気づけば寝ているのであった。




