一話:何かが変わった気がする。
第一章:最初の過ち
一話:何かが変わった気がする。
──ある者は言った、
「なぜ人間は過ちを積み重ね成長させ続けるのか?」
──ある者は答えた
「それは人間の3割の後悔と7割の好奇心による知恵の暴力である」
『好奇心』この魔力に人間は魅せられ、繰り返し、順応してゆく。
それは自分たちを例外だと考えている『お前たち』も同じなのだ。
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少年は走っていた。懐かしい追い風と曇天で星も見えなくなった深更と共に。
まだ幼さの残る六、七歳ほどの未熟な少年だ。
家を抜け出し、ある場所を目指して外へと飛び出す。
この愚行を行う理由は一つであった。
『夜の外を見てみたい』
ただそれだけの身勝手な好奇心だった。
家を出て少しした頃、少年は電柱を通り過ぎ、そして立ち止まった。
止まった理由は本人でもわからない。疲れたわけでもない。ただ何となくとしか言いようがなかった。そのただの電柱をぼーっと眺めていたその時である。
雷が電柱へと落ちた。
そして、その雷は電柱を伝い少年の右目に入っていく。そこには、何かが入り込んでくるような痛みと心地良さのみが残っていた。
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「……らくん?」
声が聞こえてくる。
その心地良さと眠気、楽園に居るような感覚に耳を背けたくなった。
「よ…らくーん?」
だが、その声は段々と大きくなり、身体が揺れる。うるさいし身体を揺らすなと微かな意識の中で少年は思う。
「余空くんッ!!!」
その雷鳴のような怒号に思わず「んがっ」という唸り声を上げ、懐かしの記憶から一瞬で目を覚ます。
その懐かしさの余韻に浸る暇さえ与えず、そこにいる少女による説教が始まる。
「また授業中ずっと寝てたでしょ!!それに今日日直だったのにまともに号令もかけずに今までずっと起きなかったし、──こっちが代理でやらないといけないんだよ?」
この少女の名は天橋 香菜という。年齢は11歳であり、問題児である少年の面倒をみたりするなどまさにザ・優等生と言える存在だ。
「日直は…まあ悪かった。ただ授業はもう知ってることやんのクソめんどくせーんだよ。理科とか川の流れについて50分間語られるんだぞ?かったるいの代表例だろ。逆に良く天橋は聞いてられるよな」
天橋は「貴方の集中力がないんでしょ!」と更に飽きれと苛立ちを込めて言った。
「そういえばさっき風見くん達がドッチボールしよーって言ってクラス来てくれてたよ」
「え?もう昼休みなの……?残り15分しかねーじゃねーか!!ちょっと行ってくるわ」
そう言うと、少年は天橋からの制止を振り切った。
そして平然と窓から飛び降りる。
前に担任から禁止されていた行為だ。
着地すると、そのままグラウンドへ駆けていった。
その少年の右目には薬局で適当に買ったであろう白い眼帯が付けられていた。
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余空 遥
少年の名だ。昭和44年生まれの11歳。星座は蟹座である。
『黒い髪』『黒いパーカー』『真紅の左目』『右目に眼帯』という完全武装した厨二病のような見た目をしているそんな小学5年生だ。
強いて強みを挙げるとしたら──、
『この世界の主人公である』
──放課後、いつもと何も変わらない通学路を一人で歩いていた。
一人は良い。何にも縛られる事なく自分のペースで考え、歩き、寄り道できる。そこに人生の面白さがある。
そんな感じで未舗装の道を歩いていると、とあるトンネル付きの道に気を取られた。
それはいつもであれば確実にスルーしているはずの道。それに何故か引き寄せられる感覚を覚えた。
その好奇心を止めることは誰にをできやしない。
少し進むと綺麗な光景がそこにあった。皆からしたら普通の光景そのものなのだろうが、心地良さを謎に感じる。
左の河川は夕日に照らされ、宝石のよう輝き、水の音だけが静かに響いている。
その河川を沿ってその道を歩く──歩く──歩く──歩く──歩く。
そして、不意に足を止めた。
──視線を感じる。ちょうど橋が屋根となるところで何事か気配を感じた。その方向、右。
思い切って右を向いてみた。
ハルは絶句した。
そこは段ボールが山積みとなったゴミ捨て場だったからだ。
[いや待て。え?多分段ボールの中いんだよなこれ、大丈夫?浮浪者とかか?]
そう思い、声を掛けてみることにした。
「誰かいんのはわかってんだぞー。誰だ、俺をじっと見てくるしょうもねー浮浪者は」
「んえ!?な、なんでバレたの!!?」
「あ?マジ??ガチで人いたの?」
正直、現実を受け入れたくなかった。今の浮浪者がこんなところで、しかも声からして俺より下の奴だろう。
そんな奴がこんなとこで暮らしている。
その事実に自分がどれだけ裕福に暮らせているのかという事を改めて考えさせられた。
「ねぇなんで分かったの?私段ボールの中にいたのに!ねぇなんで??」
「いや視線とかでわかんだろ。まあ常人の視点なんて考えたこともねーから他だったらまた違ったことになってたかもな」
困惑したが、とりあえずこういう奴もいんだな程度に思い、自己完結することにした。
「ねぇ、貴方ってもしかして施設の関係者とかだったりする?私を探しに来たみたいな」
「施設ぅ?養護施設の事か?なら俺は無関係だな。後、探せって言われてもかったるくて多分やんねーわ」
そう言いほっとしているそいつに対して何歩か歩みを進め、質問した。
「なんで逃げ出したんだ?施設内にいたほうが幾分いい生活はできたと俺は思うんだが」
対してそいつはおどおどとしながらも答えた。
「いや…その…ずっと施設の中いたからさ、外の世界がどんな感じなのかなーって思っちゃって…それで…」
予想外の返答が返ってきた。全く、誘拐も考えないで無策で行くとは命知らずも良いとこだ。
そう思いつつも、気づいたら俺の口角は上がっていた。
そんな時、後ろから誰かが慌てふためいた様子で走ってきた。
「えっと…どしたんすか?」
ポケットに手を突っ込み、声を掛けてみることにした。するとその女性は疲弊しながらもとある質問をしてきた。
「はぁ…はぁ…ねぇそこのぼく?このあたりにこれくらいの背した小さな子見なかった?髪色は…ピンク!!」
それを聞き、顎に人差し指と親指を付け考える素振りをみせ、後ろを指差して答える。
「俺の記憶が正しいなら多分あっちっすね」
女性は「協力ありがとうね!!」と言い走ってその場を去った
「──なんで助けてくれたの?」
しばらくしてそいつが動揺した声で質問してきた。俺は心底めんどくさそうに答える。
「お前って確証なかったしな。何ならお前、今自ら正体明かしたぞ?あいつまた呼んできてやろーかなぁー」
そう言い焦るそいつを揶揄いつつも「まあ、どっちにしろバラすきなんてサラサラなかったけどな」と言ってやった。
「……え?…じゃあなんで──」
「面白そうだと思った」
透かさず答える。
「俺がお前を施設に送るよりも、お前をここで助けた方が俺にとっては面白そうだと考えた。身勝手で自己中心的だろ?ただその考えじゃないと俺は、俺の人生を愛せないし楽しめない」
そいつは笑っていた。
[あれ?嘲笑されてるのか?これ。]
と思ったが、反応的に違いそうである。
「──ねぇねぇ!お名前何ていうの?」
「あ?んじゃあ、その段ボールから出てきてくれんなら答えてやっても良いぞ」
そう言うとそいつはゆっくりと出てくる。その姿が段々と顕になっていく──。
首元まで切り揃えられた短い髪。ショートヘアというやつだろうか。そして、髪色はかなり薄い桃色……桜色をしている。瞳は青白く真珠を彷彿とさせる。そんな見た目をしていた。
「改めて!あなたのお名前は何ていうの?」
「ハル…俺の名前は余空 遥だ」
1980年2月18日。季節は春。
この日…この時。
俺は何かが変わった気がした。
気がしたというのはとても曖昧で、らしくないということは十分に分かっている。しかし、何故かそんな気がしたのだ。




