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魔性狩り【ニ章完結!】  作者: カーネルシトラス
静かなる星の下で

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第75話 死んだ竜がいるPERT4

「宙理、少し待っていろ」


 僕はそう言うと探偵事務所から出る。探偵事務所は雑居ビルの二階に位置しており、その上が僕の住処だった。


 扉を開けると和洋折衷、あらゆる変な物であふれかえった空間があった。ここが僕の家だった。ほとんど使っていない物置のようになっている部屋に入る。そこには様々な魔法的な品が集められていた。僕と師匠が準備してきた物だ。魔法、魔術。そこには本当に言葉的な違いしかないが、それには準備が何よりも大切な物だ。これは魔性に相対する時も同じだ。


 古くさいアイボリーのタンス、その上から二段目の引き出しを開ける。その中も部屋同様物にあふれていたが中から結婚指輪が入っているような箱を取り出す。似たような物が2個ほかにも入っていた。


「あまり使いたくないんだがな」


 僕はぼやきながら足下に気をつけながら玄関に戻る。なんせこの部屋は床にも物があふれているのだし1つ1つが貴重な物であった。玄関の棚から工具箱を開きハンマーを取り出す。ちなみにこれはただのハンマーだ。高校の文化祭の時にホームセンターで買った工具類の1つでしかない。


 自宅から荷物を持って探偵事務所に入ると宙理が勝手に部屋の本を読んでいた。いつものことだが、自由すぎると思う。


「すまん待たせた」


 10分も経っていないがそう声をかける。宙理はそうでも言わないと機嫌を損ねる。事実そういうわけではないがそういった印象を僕は持っていた。


「さてと」


 そう言いながら持ってきた箱とハンマーを机に置く。それを宙理が見ながら頬を赤らめる。


「結婚指輪ですか? プロポーズなんて! もう! タイミングというものがあるでしょう」

「変な妄想はやめてくれ」

「ちぇ、適当に既成事実を作ってやろうかと思いましたがだめですか」


 だめに決まっているだろう。君自身がタイミングがあると言っているじゃないか。


「さて、うまく行くといいんだが」

「さてはあんまうまくいかない可能性がある奴ですね?」

「ああ、五分五分かね」

「それで私は何をすればいいんですか?」


 そう、宙理の協力を得て五分と言ったところなのだ。話が早くて助かる。


「これから封印を解く。中から出てくるやつを押さえてほしい」

「え、あれを? 私一人で?」


 何かおかしい言い方な気がするがここは無視だ。この子の話にいちいち反応していたらきりがない。


「やれるか?」

 

 シンプルに聞く。変なこと言い出さない様にするための布石でもあった。


「浜野さんが私に振り向いてくれるなら?」


 前言撤回、この子は何を考えているかまるでわからない。


「活躍次第だな」


 なんと言ってもどうせ揚げ足をとられるのだ。適当にはぐらかすことにしよう。


「じゃあ、やりましょう!」


 宙理は右手を握り天高く掲げた。今回に限っては頼りにするほかない。


「じゃあ、宙理が準備でき次第封印を解くぞ。いいか?」

「いつでも!」


 元気のいい返事が返ってくる。


 僕は壺の蓋と本体の隙間をなぞるようにする。家の鍵と同じで開くものを閉じ込めておく方式のものは物理的であろうと超自然的な物だろうと開くことは簡単だった。それこそ本当に誰の目にも届かない様にしたいなら、下手な封印なんかよりコンクリで固めて海溝に沈めた方が効果的だ。


 封印はいともたやすく解き開かれた。


 その瞬間。


 中から黒い霧状のものが言葉とも取れなくない轟音を叫びながら飛び出してきた。部屋中の物が軋む音がする。今にも天まで飛び上がろうとする魔性は何かに掴まれたように球状にまとめられる。宙理の力だろう。


 それに抵抗するように、辺りが揺れ始める。さしずめ震度5弱ほどか?このままではまずい。部屋が鐘の音を鳴らし始める。部屋の壁中に緑色に輝く文字が浮かび始める。師匠が備えていた自己防衛機能だ。部屋の揺れが少しましになる気がする。箱を開けて魔性に向ける。黒い霧が箱に吸い込まれるような動きをするが何かにせき止められる様な動きをする。宙理の力だ。


「宙理!力を止めろ!」


 僕のかけ声で宙理は能力を解除したようだ。黒い霧状の魔性は箱の中に吸い込まれる。


 辺りの揺れが収まる。部屋中に刻まれた文字が薄く消えていく。


「これで終わりですか?」


 宙理が聞いてくる。


「いいや、これだと封印先を変えただけだ」


 僕はそう答えながら箱の中を宙理に見せる。そこには正15面体の黒く輝く石があった。


「これは?」

「黒曜石だ。昔から黒曜石という物は人類の発展に深い関係のある鉱物だ。成立しない形の鉱物。理屈は抜きにして、こういった霊的な存在にとって仮の肉体となるんだよ。それでだ」


 僕は説明しながら黒曜石を箱から取り出した。そして、ハンマーを振り下ろす。すると、黒曜石はバラバラに砕け散った。


「こうすることで、完全にもう一度殺すことができる。本当は相手の魂を引き抜いてから呪殺する用の魔法の品なんだがね。こういう時にも使える」

「いいんですか? 聞いたこともない物です。貴重な魔法の品でしょう?」

「まあね、作るには手間がかかるし、黒曜石の状態にも左右される。その時の気候次第ではうまくできあがらない。まあ平均3年に1個できたらいい方だ」


 僕は答える。


「待ってください! 作る? いま作るって言いました?」

「ああ、君たちが相対する呪いの品も、自分たちが使うような不思議な品も誰か高名な僧が作ったような物じゃないか。物っていうのは誰かが作ってこそ存在する物だ。」

「まあ、そうですけども」


 宙理は納得がいかないようだった。宙理はこの世界に入ってまだ短いからな。あまり、本格的に連盟の仕事も請け負っていないと聞く。


 それにしてもうまくいってよかった。壺の中をのぞくとそこには干からびた何かの死骸があった。これがきっと竜だったものだろう。師匠はよくも面倒ごとを押しつけてきたなと今更ながら怒りを覚えた。しかし、肉体的な死を迎えつつも精神的に真に生きているなど実現するとは思いもしなかった。魔性という物は本当に意味のわからない存在だ。当たり前だろう。未だに科学的に証明されていないが存在するナニかなのだから知られている世界の理から反するに決まっている。


 いや待て、精神の死と肉体の死は別である?僕は慌てて机の上にある本を取った。


「浜野さん?私の活躍をよそに何してるんです?」


 宙理の言葉を無視して、師匠から送られてきた本に目を通す。やはりそうだ。この壺は大事なパズルのピースなのだ。


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