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魔性狩り【ニ章完結!】  作者: カーネルシトラス
静かなる星の下で

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第74話 死んだ竜がいるPERT3

「まるで時限爆弾だな」

「どういうことです?」


 僕のつぶやきに宙理は問いかけてくる。


「これは不完全な封印だ。中にいる竜の意思というべきか? まあ、それが自分が死んでいることに気づくまでは害を封じることができる。だが、ひとたび自らの死に気づいたときこの封印を破り世界中に厄災を解き放つ。そんなところか?」


 僕は左目の力を封じる眼帯を外し、壺を観察しながらそう言う。僕の左目には13年前の事故以降不思議な力が宿っていた。言ってしまえばこの世界のすべてを見通す力だ。言ってしまえば視覚的な全知とでも言うべきか?

 とはいえ、そこまで便利なものでもなかった。いかんせん、人間の脳で処理できる情報量ではないのだ。そのため、僕は何でもわかるわけでは決してない。多分、左目側が僕が扱える程度に提示する情報量を制限している。そんな感じであった。それでもなお、眼帯をつけて普段はその力を封印していた。当たり前である、シャワーを浴びるたび、水滴1つ1つの来歴や落下までの軌道が常に頭の中に流し込まれるのだ。封印しないとまともに正気を保てる力ではなかった。


 その目で壺を観察する。壺には呪術、あるいは魔術(そこには大して違いはない。細かい分野みたいな物だ。例えば基礎物理学と量子力学みたいな)的な封印がされている。中と外界の情報を遮断するそんな感じの結界だ。師匠から学んだことを思い出すと非常に古典的な物である。やっていることはそれこそ家に扉をつけるのと大差はない。あくまでも中の竜が自らの死を観測するまでの時間を稼ぐためだろう。


 それで、そのタイムリミットが今年の8月なのだろう。だから時限爆弾なのだ。


「それで、浜野さん。いいアイディアはあるんですか?」


 宙理が聞いてくる。


「案外、単純な話かもしれない。肉体的に死んでいるがその意識が世界に残され続ける現象とは?」


 僕は宙理に問いかけてみる。


「幽霊ですか?」

「そうだ」


 幽霊、死者の魂が半透明な存在として現れる存在。ヨーロッパ圏でもゴーストとして似たような存在が語られている。実際に語られる幽霊が本物かはさておき、そういった存在はこの世界に確かに存在している。それが魔術的な観点だった。


 さて、そもそも魔術とはなにか。それを意識する必要がある。これは何度も師匠が念を押してきた考えだ。魔術とは、未だ科学的に証明されていないだけの実在する現象に対する総称である。それが魔女天野美佐の答えだった。


 そういった考えから見ると、幽霊とは死後の生物の意識、というより脳の電気信号が大気中に残る現象だという。つまり生前の人間の意思ではなく、意識のコピーであると。それが超自然的な現象を起こすのは知性の持つ未観測の素粒子への干渉力などまあいろいろなのだが、この際は置いておく。


「今回の件は幽霊ととても似ている。まあ、幽霊は生前の人間そのものではないな。今回の件は死んだ存在の意識が残っているということなのだし」

「浜野さんは幽霊は死者の魂と切り離しているみたいですけど、私の師匠的には死者の魂なんですけどね? まあ、つまり幽霊みたいに除霊すればいいということですね!」

「構造的にはそうなるな」


 僕はそう答える。


「なんか歯切れ、悪くないですか?私には隠し事、しないでくださいよ?なんか嫌われているみたいでとても悲しいです」


 それは、繊細過ぎないかと思う。


「除霊とはどうやる?」

「なんか相変わらず面倒くさい話し方ですね?」


 仕方ないだろう。師匠の話し方がうつったんだ。あの人と弟子として毎日過ごしていると嫌でもこうなる。


「えーと、除霊となると伝承的には死者の未練を断ち切ること、呪文とかでしょうか? でも私が師匠に教わったものは違いますね。幽霊の形をかき混ぜてバラバラにするみたいな? すみません感覚的な話で」

「いいや、かまわないさ。連盟の能力者も秘密主義で、秘術は隠すものさ。まあ、魔性に知られないためという目的もあるだろうがな。ただ、そうだな今回はそのどちらも有効じゃないだろうな」


 自分たちの術を隠すのは霊能者も魔法使いも同じなのだ。そしてどちらもその術を弟子にだけ継承させるという点も同じだ。でも、師匠は言っていた。いつか、すべての魔術は科学になると。潮の満ち引きや月食、雷が神の神秘であったものが科学現象になったように。


「有効じゃないというのはどうして?」


 宙理が首をかしげながら聞く。


「単純な話だ。こいつの力が強すぎるんだよ。幽霊ってのはせいぜい近くの人間に害をなす程度だがこいつは死後、カシュガルから西安まで影響を及ぼす力がある」

「じゃあ、どうするんですか? お手上げってことですか?私、一応勘はいい方です。中の奴が目覚めたらやばいってことはわかります。私が全力で押さえ込んで、なんとか押さえられるかどうかって感じです」


 これを準備や儀式を抜きに個人で押さえられるのもそれはそれでどうかと思うぞ宙理。


「まあ、見てろ」


 僕は言う。

 魔女天野美佐の弟子をあまりなめてもらっては困るのだ。


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