サイキッカー②
僕はあのオバケを撃退して家に帰った。宿題をやってご飯を食べてお風呂に入っていた。
湯船に浸かってゆっくりとこの力のことを考えていた。この力があればいじめられることはなくなるだろう。もしかしたら、一生お金に困らないかもしれない!
お湯に肩まで入れながら僕はリラックスしていた。
ばたん!
窓を何かが叩く音がする。窓の方を見ると何かが張り付いていた。ヤモリみたいな見た目だった。でもそれは7本足で極彩色の体色をどんどん変えていた。
それは1ミリにも満たない窓と壁の間を抜けて浴室に入ってきた。
驚いた僕はお湯をかける。効いてる様子もひるんでいる気もしなかった。僕は下校中に起きたことを思い出して3本目の手で叩いてみた。”それ”はいとも簡単につぶれた。
なんだ簡単なことじゃないか。
何か違和感を感じた。
その違和感は3本目の手にあった。見えない手の指を動かし何がおかしいのか探ってみる。さっきの変なヤツをつぶしたのがいけなかったのだろうか?
いや、大丈夫そうだ。指6本はちゃんと動く。
指が6本に増えている!
僕の中で確信に変わった。オバケを倒すことで僕の3本目の手は強くなるのだ!!
ゲームのレベルアップみたいだなって思った。そう気づけばやることは1つしかなかった。そうレベリングだ。
夜、僕はスマホだけ持って家を抜け出した。とはいえ世の中はそんなに上手くいかないものだった。オバケに会うことがなく深夜零時を超えていた。これ以上遅くなると両親に家にいないことが見つかってしまうかもしれない。なので今日は帰ることにした。
翌日、学校に五郎は登校してきた。でも僕と目が合うなり逃げるように距離を取っていった。教室中のみんなが僕を避けているようだった。
でも別に気にならなかった。いじめられていたころと比べて何倍もましだったし、この力で僕はみんなのことを見返してやれる。そう確信していた。
学校から帰ると、それから毎日のようにオバケ探しに行くようになった。
でも全然見つけられないまま5日過ぎた。何度か父に家から抜け出す前に見つかったこともあり動きにくくなっていた。
だから考えを変えてみることにした。オバケを闇雲に探すのではなくいそうなところに向かうのだ。
近所で有名な心霊スポットに行くことにした。
そこはDトンネルと呼ばれるところだった。
この考えは間違いだった。
トンネルに着くやいなや真っ黒な塊がトンネルの天井から染み出して飛びかかってきた!
僕は何とか3本目の手で押さえ込んだが相手の方が力が強かった。
五郎に掴まれた時のように僕は抵抗出来なかった。このまま僕は死んでしまうのだろうか?
その時、トンネルの入り口に人影が見えた。僕はそこから7メートル程中に入った場所にいた。
その人は、ローブのようなものを着ており、懐から細長い紙のようなものを取り出した。
それを僕の方に投げると、たちまちその紙は燃え上がり、僕に襲い掛かる影を燃やし尽くした。
「大丈夫か?」
その人物は僕の方に歩いてきた。その左目に黒い眼帯をしており全体的に黒っぽい服装をしていた。
「はい、ありがとうございます。助かりました」
「どうしてこんなことをした」
男は静かに怒っているようだった。
「僕の力が強くなれば便利になるかなって」
「と言うとサイキックなのかお前」
「サイキック?」
「生まれながら超自然的な能力を使える奴らの事さ。祖先に魔性がいるなり突然変異なり理由は僕でもよくわからないけどな」
この人は僕の力のことを知っていそうだった。この人のそばにいるともっと強くなれる。僕はそう直感した。
「あの、僕を弟子にしてください」
「断る。僕は生粋の能力者の事はよくわからないからな」
ここで逃すわけにはいかなかった。
「絶対嫌です。お願いします!」
「ダメだね。そもそも君のような先天的能力者は特に狙われやすいんだよ。どういう理屈かはわからんが波形が合い易いとかなのかね?特に力を制御できないものほど惹かれやすい。君のようなことを続ければすぐに死ぬぞ?」
「そこをどうにか!」
僕は頭を下げた。土下座というものもした。
男は困った顔をしていた。
「子供なんだからさっさと家に帰った方がいい。あと近いうちに近くの大きめの神社に行くと良い。そこで事情について説明するんだ。連盟につないでもらえるだろう」
こいつをここで逃すわけにはいかなかった。
「嫌です。弟子にしてもらうまでここから離れません」
「そもそもそんな力。魔性と戦ったからとて強くなるとも思えん」
そんなことを言いながら男は眼帯を外して僕を見た。青い瞳が僕を見透かすように見ていた。
「お前、”なり替わられているな?”」
「何を?」
「一体何を言うんですか?」
「なるほど。それで魔性を襲っていたのか。自己成長のために。弟子になりたいというのも詭弁で僕を喰らいたいというのが本音か」
この男は何を言っているのか。僕は”ただ幽霊のようなものが見えるだけ”の小学4年生なのに。
男は普通のものより長い煙草に火をつけた。辺りに不快な匂いが立ち込める。その煙に当たる肌がぴりぴりと痛む。男は煙草をステッキのように振るい”ᛇ”の形をなぞる。
「Eihwaz《不浄なるもの燃えよ》」
男が何かを唱えると僕の体は燃えるように熱くなる。
僕の体には火などついてない。でも燃やされているようだ!!
僕自身が燃えているようだ!!!
「ごめんよ。助けられなくって」
男は優しい瞳で僕を見つめていた。
なんて喰いやすそうな優しいやつなんだ。そしてその形に騙された自らの単純さにあきれていた。こと切れる前に僕は思う。
ガキの脳ではやはりダメだ。




