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魔性狩り【ニ章完結!】  作者: カーネルシトラス
デカデンティアの奇妙な事件簿①

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74/90

サイキッカー①

 もしも少し離れたところにあるものを取るときに君はどうするだろう?歩いて取りに行く?それとも手近な長いもので手繰り寄せる?僕も昔そうしていた。昨日までは。


 僕は昨日小学校の放課後1人廃墟にいた。自分で来たわけではない。下校中にクラスのいじめっ子に見つかりカバンを盗まれてしまった。そしてカバンを廃墟の二階に投げ捨てられてしまった。それを取りに行くため仕方なく廃病院に行ったのだ。僕をいじめるグループのリーダー熊谷五郎《くまがいごろう》は力が強くそれを理由にクラスの中心人物になっていた。そして、その力持ちな五郎に抵抗することなど僕には出来なかった。


 廃墟の中何とか僕はカバンを見つけた。建物の中はガラス片が散らばっているほど荒廃しており当然電気など通っているわけもなく、11月ということもあり外も暗く足元も見えなかった。スマホもカバンの中にあった。そんな中何とかカバンを見つけることができた。ここは心霊スポットとしても有名な場所だ。正直僕は怖かった。


 だからさっさと見つけて帰ろうと思っていた。そんな矢先である。


 天井が崩れてきた。


 何も不思議なことはない。ここは廃墟なのだ。僕は両手で頭をかばった。だがそれで守れるようなものではないだろう。ここで、僕の命は潰えた。


 そのはずだった。


 崩れてきた天井は空中で浮かんでいた。そして、僕はそれを受け止めている感覚があった。


 僕は自分の”3本目の手”を見つけた。何を言ってるのかと思うだろう。でも、存在するのだ。


 3本目の手は見えなかった。自分の部屋で色々試してみた。手は自分の見える範囲ならどこまでも伸ばせる気がした。実際は見えないところにあるものも掴めるのだがその手には感触がないため壁にぶつかって思うように動かせなかった。そして、その手は恐ろしいほど力強かった。台所にあった缶コーヒーの空き缶を部屋の外からいとも簡単に握りつぶせた。


 快感だった。


 まるで、漫画のヒーローになったような気持ちだった。


 僕はベッドに横たわりながら書棚の漫画を手に取った。少し離れたところにあるものを取るときに僕は自然と3本目の手を使うようになっていた。


 お母さんが呼ぶ声がする。朝ごはんが出来たようだ。お母さんからの話は聞き流す。勉強がどうだの、将来の受験がどうだと言っているが僕は聞く気がなかった。聞く必要がないと知っていたからだ。


 僕は他の人のような人生を送る必要がもうないと気づいたのだ。初めは誰でもこの能力を使えるものかと思ってたが昨夜両親にしつこく聞いたことでこの力が僕だけのものだと知ったのだ。(あまりにしつこく聞いてくるので漫画の見すぎではないかと怒られた)


 教室に入ると五郎が僕に話しかけてきた。


「よう鬼太郎。廃墟でいつも通り幽霊は見えたかよ」

「僕の名前は鬼太郎じゃない!」


 僕の名前は虎太郎だった。五郎は僕を見てけらけらと笑っていた。


 でも、こいつの天下は今日までだ。


 僕は3本目の手で五郎の首をつかみ持ち上げた。


 五郎が何もない空間に苦しそうな顔をしながら浮き始めた。


「あ、が──」


 苦しそうな顔を見て僕は愉快な気持ちになった。


「五郎君!!」


 教室のドアがばたんと大きな音を立てて開けられた。先生が飛び込んできた。


 それに驚いた僕は集中力を欠き3本目の手の操作を失った。


 ぼとりという音を立てて五郎は床に落ちた。先生の手で五郎は保健室に連れていかれた。五郎の仲間たちは僕の方を睨んだが何もしてこなかった。なんなら、今までうざいくらい絡んできていたものがすっかりと無視されるようになった。とても心地よかった。


 その日は下校まで五郎は教室に戻ってこなかった。


 帰り道で誰にも絡まれず一人で帰れるのはとても久しぶりの事だった。とてもすがすがしい気持ちであった。


 もう少しで家につくというとき足音が近づいてきた。いつものグループだろうかと思い振り返ったがそこには誰もいなかった。


 振り返った時には足音は止まっていた。


 前を向きなおしまた歩き始める。僕が歩き始めると足音がまたした。


 足を止めて振り返る。足音が止まる。また歩き始める。足音が聞こえるどんどんと近づいてくる。足を止めて振り返る。


 これを何度か繰り返す。


 もう足音は僕の真後ろまで来ていた。見えない何かは間違いなくそこにいた。


 僕は怖くなって走り出した。足音も走り出した。


 急に僕の足が宙に浮いた。ランドセルを誰かに掴まれそのまま持ち上げられたのだ。振り返るとそこには”何か”がいた。


 何かは分からなかった。真っ黒で足があって腕のあるおぼろげな何か。そうとしか言えなかった。僕は思いっきり殴りつけた。”3本目の手”で。するとその何かは消えてなくなってしまった。そして僕は3本目の手の触覚を手に入れた。急に何もないところで風を感じるようになったのだ。そしてこの手は痛みを感じなかった。とても扱いやすくなった。


 もしかしたら、ああいったオバケを倒すと僕の力は強くなるんじゃないか?そう思うとどこかワクワクしてきた。


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