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魔性狩り【ニ章完結!】  作者: カーネルシトラス
Dreamin' dream

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第69話 Awaken/目覚め

 私は葉山を連れて走る。出来る限り早く、出来るだけ遠くに。あの化け物を振り切れるように。


 ショッピングモールから出て私たちは船橋市街を走っていた。後ろからあの何とも言えない化け物が追いかけてくる。なんだか冷静に化け物の姿を観察してしまっていた。色々な生き物が混ざったような形であり、よく見ると足は人間のような形をしている。背中には蝙蝠の羽のようなものが生えている。蝙蝠の羽は前腕でもあるはずなので腕と別についてるのは変だなとか、あの体型だと体重があって飛べないだろうなとかを考えてしまっている。


 半分はやけになっているのだ。


 いくら視界から離れても追ってくる。逃げ切れるとは到底思えない。


 とはいえ、殺す方法も思いつかない。私としてはお手上げ状態だった。とはいえあきらめるのも性に合わなかった。


「ねえ葉山」

「なに明日香」

「もしここから無事に出れたらメジャーデビュー、本当に目指そうね」

「本当に?」

「本当!」

「やったぁ!夢みたい!」


 さっきまで疲れを見せていた葉山の表情が明るくなったような感じがした。


 目の前の信号が赤になってしまったため、疲れているが歩道橋を使う。逃げ続けているだけで何とかなるのだろうか?そんなわけは無いだろう。葉山と約束した手前私が先にあきらめるわけにはいかなかった。とはいえ、葉山もあとどれだけ逃げ続けられるのか。


「明日香、こっち!」


 歩道橋の下から私を呼ぶ声がした。


 祭だ!祭が助けに来たのだ。


 そんなわけはない。


 私は、歩道橋の下りの階段を数十段飛ばし祭の姿をした化け物にドロップキックを決めた。


 祭は私をかばって死んだんだ。私のために死んだんだ。私の命は祭がつないだもの。祭が生きているはずがない。私の大切な幼馴染は生きていてはいけないんだ。そんな祭の姿に化けて私の目の前に出てきたことに怒りを覚えていた。


 吹き飛ばされた祭の体はみるみる化け物の姿に変わっていった。もう化けの皮は必要ないらしい。


 形勢は依然として不利であった。


 相手の数が増えた分状況はかなり厳しい。私の身を守るだけならまだしも葉山も守らないといけないのだ。一瞬の油断も許されなかった。


 二体の化け物が同時に襲い掛かって来た。こいつら連携出来るのか!


 葉山を抱えて何とかとびかかりを躱す。葉山を追っていた大きい方がすぐに体を翻して爪を私たちに振りかざす。


 私は咄嗟にマンホール蓋を引き抜いて、盾のように使う。攻撃を防いだ時、間髪を入れずに嚙みつこうとしてくるため、マンホール蓋を口の奥に投げつける。化け物は少しのけぞったが金属でできた蓋をビスケットのようにかみ砕いた。


 大きい個体を飛び越えるように、祭に化けていた奴が襲い掛かる。1.5メートル程後ろに身を引き攻撃を躱す。追撃として腕を振り上げようとするのを見て私は素早く拳を叩きつける。攻撃を受け止められる体勢になかったため怪物は倒れこむ。


 だがその隙を消すように体が大きい方がトラックを投げてくる。避けるわけにはいかない。葉山に当たってしまう。


 私は踏ん張り体で受け止める。全身に痛みが走る。だが、トラックを止めることが出来た。


「凄い」


 葉山のつぶやきが聞こえる。


 トラックを突き破り小さいほうが襲い掛かってくる。初撃はかがんで躱す。私を飛び越した化け物は私の背後から突進をしてくる。私は近くにあったガードレールを引きはがし警察が規制線を引くように捻じ曲げる。化け物はそれにぶつかり動きを止める。


 反撃のチャンスではあったが私は追撃をしない。すでに葉山との距離が離れてしまった。すぐにカバーができる位置に移動しないと。


 その隙を相手も見逃さなかった。葉山に全力でとびかかる。止められない!


 私は葉山と化け物の間に飛び込む。その鋭い爪に私の背中は切り裂かれる。死ぬほど痛いとはこのことか!いや、実際に傷は深い。本当に死んでしまうかもしれない。


「明日香!」


 葉山の叫びが聞こえる。祭はこんな気持ちだったのかと思う。葉山だけでも何とか生きていてほしい。2体の化け物が私に襲い掛かろうとしていた。私は膝をつきもう動けなくなっていた。


 万事休すか。


 バキンッ!


 急に金属が折れるような音が世界に響いた。私は止めを刺されると思い目を閉じていた。


 攻撃はいつまでたっても来なかった。


 風も物音も痛みも何も感じなくなっていた。


 瞼を開けるとそこは暗闇だった。


 私は死んだのだろうか?


 目の前には光る菌糸類のようなアメーバのようなものが落ちていた。そこはさっきまで祭に化けていた怪物のいたところだった。


 私は本能で目の前の存在が弱っているのが分かった。


「何が起こったの?」


 何もわからないまま目の前の存在を拾い上げた。それは鼓動しているように思えた。


 私はそっとそれを握りつぶした。


 白い天井が見える。


 辺りには薬品のような匂いが漂っている。


 私は目を覚ましたのだった。


 帰ってきたのだ。


 現実に。


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