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魔性狩り【一章完結!】  作者: カーネルシトラス
Dreamin' dream

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第57話 告別

 葬儀の取り仕切りはほとんどボクがやることになった。母はずっとこんな経験がないだのわからないだのばかり言い、何もやらなかったからだ。そういう意味だとボクも何もわからないし調べながらやってるのだ。


 死因が交通事故であった事から警察から軽い聴取があったが家族関係などを聞かれただけであった。警察の話だと単独事故で,

それなりのスピードで中央分離帯に突っ込み横転する事故であったという。不幸中の幸いかほとんど即死だったという。あの子は苦しまずに済んだようだ。


 病院で見た露の体はそこまで傷ついていなかった。


 露の死んだ翌日、朝になると地元の葬儀屋に母を連れて行き担当者と会った。何もわからない僕らに対して担当者はよく教えてくれた。まあ、結局はサービス業だからというのはあるのだろうが。


 葬儀は一番簡単な家族葬にした。祖父母に連絡を入れると母方は泣き崩れているのが電話越しにわかった。父方は父の身勝手なふるまいを謝るばかりであった。


 葬儀屋に行った帰りに死亡届を提出しに行った。


 喪主というのは本当に大変だった。葬儀屋との手配や訃報の連絡とバタバタするうちにすぐに告別式の日になっていた。


 何人も露と生前仲良くしていたであろう友人も来てくれていた。


 あの子は本当にみんなに好かれていたのだ。あの子の元気な姿が写った遺影を見て泣きそうになる。


 だが、ボクは泣くのをこらえた。泣いたところで何も変わらないのだ。露はもういないのである。


 Mayaさんが言っていた事を思い出す。お葬式というのは生者のための儀式だといっていた。まさにその通りなのだろう。神原露はこの世にもういない。これは、ボク達が露がいなくなった現実を受け入れるための時間なのだ。


 あの子はきっとボクが自分の死で立ち止まることなんて絶対に望まない。だから、涙はこらえることにした。


「神原くん、その......。ごめんなさい。なんて声をかければいいか分からないわ」


 告別式に来た花田先輩がそう声をかけてくる。


「別に言葉なんていりませんよ。先輩もよく来てくれました。仕事忙しいでしょう?」

「いいのよ。露ちゃんとは何度も遊んだ仲だしね。それで、お母様は?」

「あそこだよ」


 ボクは棺の前で泣く母を指を指す。その母は祖母に慰められていた。なんて身勝手な人なんだろうか。見苦しい。


 告別式は何事もなく終わった。何か起こってしまったらボクは最期まで露に合せる顔がなくなってしまう。


 見る見るうちに葬儀は進み、気が付くと露は火葬されていた。これで、本当にあの子を見ることが出来なくなる。視界が涙で歪む中、ボクは声を押し殺した。


 結局父は葬儀にすら来なかった。いや、本当に来なかったのかはわからない。ボクは母に連絡するように言ったが、あの女が連絡をしなかっただけかもしれない。ボクはそう勘ぐっていた。


 骨壺に小さくなった露を入れる。丈夫な骨だ。あの子らしい。本当に元気な子だった。


 すべての葬儀が終わり、ボクと母だけが残された。外はすっかり暗くなっていた。


「どうして、露ちゃんは私より先に逝ってしまうのよ」


 母は涙を流しながらそう言っていた。お前は露に何をしてあげた?お前は娘を亡くした自分がかわいそうなだけではないのか?


「もう寂しくなるわね」

「そうだね」


 静かに言葉を返した。


「でも、」


 母は話を切り出した。


「拓狼はこれであの子の学費の負担が減るでしょ?」


 何と言った?


 この女、今何と言った?


「なに?」

「いや、自分の事に専念できるようになるじゃない。そう捉えれば前を向けると思えない?」


 は?


 お前がそれを言うのか?


 なんでボクはあの子の学費を払ってあげていたと思うんだ?


 そもそも、なぜボクらは自分達でここまで助け合っていたのか。


 気が付くと拳を振り上げていた。


 今まで経験したことがないほどの力で母の頬を殴りつけた。


 母をそのまま壁まで吹き飛ばすかのように力の限り腕を振りぬいた。


 母は1メートル程後ろに倒れこんだ。


 そこにいる女はしわがれた60代の女だった。そんな相手にボクは全力で拳をふるっていた。


「もう、これで終わりにしよう」

「拓狼?」

「ボクは家を出る!あんたは勝手に一人で生きてけよ!」


 思いっきり声を荒げた。


「待って、私ひとりじゃ生活なんて営むことができないわ。年金なんかあてにならないし」

「知らないよ。父にすがるなり生活保護を受けるなり、あるいは新しい男でも捕まえろよ」

 

 荒っぽく僕は言う。


「私を見捨てるの?」

「お前なんか母親じゃない!あの子の葬儀すらせずに泣くだけの奴が親であるものか!」


 もうこの女に対してボクは何も感じなくなっていた。彼女は血がつながっているだけの他人なんだ。これまでもこれからも。ボクはそれに気づくのが遅かった。気づいていればボク達はもっと別の道を選べたかもしれない。


 泣き叫ぶ、母と呼んでいた女を置いてボクは家に帰った。そう、引っ越しの準備をするためだ。


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