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魔性狩り【一章完結!】  作者: カーネルシトラス
Dreamin' dream

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第51話 Shaman's Plan

恵麻さんの指定で集合した場所は池袋の大衆レストランだった。集合時間に向かうと前と変わらず黒ずくめの服装をした恵麻さんと2人の男性がいた。片方は中年の男でもう一人は中学生くらいの男の子だった。


 そういえば、恵麻さんの事は浜野にも相談した。あまりあてにしすぎない程度で関わるといい。また、何か進展があれば情報を共有してくれると助かるとそう言われた。


 席に着くなり皆の自己紹介から始まった。恵麻さんはすでにみんなが知っているためスキップして私から紹介することにした。恵麻さんはネットで、自分の周りでおかしなことが起きていないか、特に気づかないうちに何か願望が実現していることはないか、そして、自分以外には見えない黒い化け物を見なかったかを聞いて回っていたらしい。そうして、この2人と会ったそうだ。


「えっと、清水明日香って言います。大学生で、この状況に気づいたのは渋谷で目の前で化け物が現れて。それで流れで恵麻さんに会ったみたいな感じです」


 個人情報を出しすぎないようにこの程度で済ませておく。次に中年の男が口を開いた。


「えっと、俺は大番忠則って言います。えーと、この状況っていうのはいまいちわかっていないんですけど、恵麻の姉さんが言う感じだと、何か身近な者に化けた怪物が俺らを狙ってるっていう話だったよな?」


 恵麻さんは静かにうなずく。


「俺はその化け物は見てなくて、どっちかというとあり得ないことが起きてるって気づいた感じです。なんていうのかな?恵まれすぎてるんですよ、俺。東京の一等地に家を構え、美人な嫁さんがいて、アニメ監督してるんですけど、そんなことはあり得ないっていうか。本能が現状を否定している気がするんです。俺はもっと底辺だったはずだって。説明できないんですけど、現状と乖離したなんだろうな、世の中に対する不満みたいなのがあって。そっちが本性な気がして。それで連絡させてもらいました」


 大番と名乗る男はそう紹介した。なんだろうか?ただの自慢のようにも聞こえてくる。この男は別にあの化け物を見ているわけでは無いようだ。社会的立場を自慢しに来たというか、存在するはずのない化け物の話をしている私たちを馬鹿にしに来た。そんなように私は感じた。


 次に少年が自己紹介を始めた。


「あー、僕は小林菖蒲こばやししょうぶと言います。中学二年です。えーと、僕が恵麻さんに連絡をしたのは急に母が優しくなったからです。母は本当は厳しくて、テストの点が悪かったときはもちろん特売の卵が売り切れていたとかで気に入らないことがあるとすぐに僕を殴るようなくそ親なんです。でも急に優しくなって。それだけでなく、多分別人になったんです。あの、信じられないと思うんですけどオーラの色が変わったっていうか」


 小林少年はそう言った。オーラ?雰囲気の事だろうか?そう思っていると、恵麻さんが補足を入れてくれた。


「菖蒲君は私と同じで不思議な力を持ってるみたいなの。私たちみたいに力がある人はお互いなんとなくわかるっていうか。多分彼の場合は人のオーラの色が見てわかるのよ。それで親が化け物に変わったことに気づいた。多分そういう事よ」


 そう言っていた。なるほどな、私が実際に浜野たちの他に霊能力のようなものを持つ人に会ったのは恵麻さんが初めてだった。きっとそういう事なのだろう。正直全部信じていないわけではなかった。だが、魔性と呼ぶ化け物はこの世界に実際にいるのである。そういう能力を持つ人もいる。そうやって自分の中で納得することにした。


「それで今後の方針なんだけど」


 恵麻さんがそう切り出した。


「明日香さん以外はなんとなく本来の姿と違う誰かが身の回りにいるって認識でいいわね。私の場合は旦那、大番さんは妻、菖蒲君はお母さん。多分明日香さんも気づいていないだけで誰かがいる。そう考えるほうが自然だと思うわ。それで今後の方針だけど、その存在から離れて生活するようにしましょう」


 恵麻さんはそう言った。それだけ?そんなことで何とかなるものなのか?


「えっと、それだけですか?」


 つい聞いてしまった。化け物退治は恵麻さんの方が専門家なのに。だがそんな対応なのかもわからない方法には苦言を呈するほかなかった。


「ええ、これまでの情報から何か状況を満たしたとき、多分私たちの願望が実現されたとき、身近な人になり替わった化け物に襲われる。そう、予測できるわ。だから距離を離すの。そうすれば多分条件が満たされなくなる」


 そう言った。あまりにも消極的な対応である。そもそもあの怪物の出現条件も仮定じゃないか。


「えっとその、追い払ったり、退治したりはしないんですか?」


 思わず聞いてしまった。


「ええ、そうよ。ああいう妖には無害化させるのが最優先なの。そもそも、妖を退治しようとするのが間違いなの。そういうのは、漫画やアニメの話。実際にはほとんどの場合私たち祓い師は追い払ったり無害化するだけよ。ああいう手合いに向かい合うのはあまりに危険だから」

「でも、もし恵麻さんの考察が外れていたら?それにこれから一生その化け物から逃げ続ける人生を送るんですか?」


 私には信じられなかった。一生化け物と追いかけっこをする?寿命が長くなっているこの時代で残り60年もそんな人生を送らないといけないのか?それに私の場合誰がその化け物になり替わっているのかがわからなかった。


 そう、それがあまりにも致命的だ。


 それに恵麻さんの仮説が正しかったとしよう。願望を実現させる化け物。願望がある程度実現すると食い殺される。つまり今後、自分の夢を叶えてはいけない。いや、夢を叶えないというのも願望になるのではないか?


「一応、封印とかターゲットから外れる方法がないかは私も考えるわ」


 恵麻さんはそう言う。


「俺はともかく、小林君はどうするんだ。親がその化け物なら帰れなくなるだろう」


 大番さんがそう言う。やはり私と同じで何か思うところがあるようだ。思ったより真剣に事を捉えてるのだな。そう思う。


「いったん私が保護するわ」


 恵麻さんは淡々とそう言う。


 現実味がない。こんな方法じゃあ何も解決しない。


 それが私の考えだった。


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