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魔性狩り【一章完結!】  作者: カーネルシトラス
Dreamin' dream

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第39話 Live and Dead

 私が昨日目撃した正体不明の化け物、そしてその被害者についての動向を何も追うことが出来なかった。私は自分の無力感を覚えていた。それと共に少し安心していた。


 私はあのような化け物に襲われる人を可能な限り救いたいと思っている。これは本心からだ。偽善ではない。しかし一方でこれは、ただ個人的な願いであり、これを裏付けるだけの覚悟はない。


 私は自分でもそれをわかっていた。


 怖いのである。


 ああいったものには何度か出くわしたことがある。それでもやはり、死を濃密にまとった魔性というものに立ち向かう勇気は今の私にはなかった。


 そんなことを考えていると御茶ノ水にある自宅マンションに着く。


 リビングの机の上には夕食が用意されていた。父は帰ったときの挨拶からして自室で何かしているようだった。


 夕食を食べながら、スマホをいじる。マナーが悪いことはわかっている。ただ、食事をするだけというのが、どこか時間がもったいないような気がするようになってきたのだ。


 幼馴染から来週にでも遊ばないかというメッセージが来ていた。丁度私が講義の無い日、バイトのシフトも入れていない日であったため(そもそもどちらも事前に共有しているためわざわざその日を選んでくれたんだと思う)「遊ぼう!」と返信をする。


 食事を終え自室に戻るとあの黒い化け物と辺見という男についてネットで探りを入れてみた。だが、もちろん何も見つからなかった。それはそうだろう。もしそんな簡単に見つかるなら、浜野がもう何か痕跡を見つけられているものだろうから。


 動画サイトでよく見ている配信者がライブ配信をしていた。「角くんアンド雨ちゃん」という心霊スポットや怪談を取り扱うカップルチャンネルだ。(オカルト×カップルチャンネルは属性過多だと私は思う。)


 彼らはかなり人気の、言ってしまえばバズっているチャンネルだった。角くんがいわゆる霊能力を使えるという設定もあり見ていて私も楽しんでいた。私自身の研究に役に立つような情報を取り扱っていることもあった。


─────────────────────────────────────────────────


 はい、今日はね?ここ、A公園の幽霊の真偽を確かめていきたいと思います。もうね、雰囲気だけで怖いよね。

 ねー、怖いね。視聴者さんもこの雰囲気わかる?完全に真っ暗でさ?


 じゃあ挨拶と軽い解説もしたし進みましょう。


 それで、ここの曰く、伝えましょうか。ここに出る幽霊はDトンネルとかF街道に出てくる都市伝説的なものじゃなくてガチのもんだからね。僕も正直怖いね。呪文効くといいけど。ここA公園は東京の繁華街から少し離れたとこにあるそれなりの大きさのある公園なんだよ。


 懐中電灯しか明かりがないから暗いねえ。雨ちゃん離れないでね。


 で、ここは江戸時代に武家屋敷があったんだ。そこにいるお侍さんはまあそれなりにお金持ちだけど結婚していなくて、お金を舶来のもののコレクションに使ってはそのまま使わず蔵にためるみたいな生活をしていたんだと。

 でも、そろそろ結婚しろって藩のお偉いさんから言われて、いろいろお見合いとかしたんだけど全く気にいる相手がいなくて全員断っていたそうな。で、城下町を歩いていると、ある茶屋に偉い美人がいたと。それで結婚を申し込んだそうな。その女の人は、農村から逃げてきた、まあ逃亡者で江戸時代だと重罪人だな。士農工商って完全に身分が分かれていた時代だから。女はそのことを正直に話して、あなたとは結婚できないといったそうな。でも侍はそんな君でも構わない一生そばにいてくれだとかでプロポーズして結ばれたと。

 二人は幸せに暮らしていたそうな。でもある時から蔵の中のコレクションがなくなるようになった。それを不審に思った侍は妻に問い詰めた。故郷に送る金のために勝手に持ち出したんじゃないかと。妻は否定したが、それに激怒した侍は切り殺しちゃったそうだ。もうバッサリとね。でも実は使用人が盗んでいたんだよ。無実の罪で殺された妻は死後怨念となって、侍、使用人、そして彼らに関係ある人を片っ端から呪う怨霊になった。関係者がどんどん謎の病で倒れるようになったんだと。これはまずいと思った藩主はここに女を祀る神社を作ったらしい。それこそ京都の道真様みたいな感じでね。でも戦後の昭和中期に再開発で神社が取り壊されここにアパートができた。そこから怪奇現象が起こるようになり入居者がどんどんいなくなった。そして公園になったけどいまだに出るって噂が残ってるそれがここA公園ってわけ。


 雨ちゃんとしては本当に出るとこ、勘弁なんですけど。この前の祟りの時もお寺にいくまで大変だったじゃん。


 まあまあ、視聴者さんも喜んでるしさ、ホラ、コメント欄も盛り上がってるし。


 お、登録者が10万人いった?まじ????やった!!まじか。こんな場所で?


 雨ちゃん?


 ウヴグォ


 あ、雨ちゃん!!?!?


 雨ちゃんじゃあない! なんだお前!化け物、化け物め!!いつ入れ替わったんだ!! 雨ちゃんを返せ!!


 くそ!近づくな!


 マントラ、ポマード、エロイムエッサム、 マントラ、ポマード、エロイムエッサム、 マントラ、ポマード、エロイ


 グシャ


 ボリ


 バキ

─────────────────────────────────────────────────


この配信は終了しました。

─────────────────────────────────────────────────


再読み込み


このURLは存在しないチャンネルです。 ヘルプサポートはこちら。



─────────────────────────────────────────────────


 衝撃だった。

 

 現れたのだ。


 あの怪物が。


 渋谷のスクランブル交差点で起きたことと同じだった。雨ちゃんがあの化け物(暗かったので輪郭でしか見えなかったが)に変身して角くんを食い殺した。


 すぐに配信アーカイブを探そうとする。しかし、見つからない。


 何と言う事だ!「角くんアンド雨ちゃんチャンネル」というものの痕跡がネットから完全に消滅していた。


 チャンネルも、アカウントも、彼らについて投稿していたものもそのすべてが。


 浜野に連絡を取る。すぐに既読が付いた。事のあらましをすべて説明したが、浜野もその動画もチャンネルのことも見つけられなかった。


 私たちが追おうとしている存在は何なのだろうか?


 浜野はこの魔性が恐ろしく強力な可能性があるといった。そして私が個人で調べることをしないように忠告をした。


 私はほっとしてしまった。あの化け物に近づかなくていい免罪符を得たと、そう思ってしまった。


 だが、私は結局奴からは逃げられなかった。これはそういう運命だったのである。

 


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