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魔性狩り【一章完結!】  作者: カーネルシトラス
Dreamin' dream

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第38話 Confused situation

「じゃあ、始めるか」


 浜野はそう言った。


「始めるって何を?」

「僕は探偵だぞ?捜査に決まってるじゃないか」


 彼はそういうとどこからともなくラップトップを取り出しパソコンの電源を入れ始めた。


「それで、そのバケモンが出たのは何時だったか?」

「えっと、確か16時半です」

「なるほどな」


 浜野はそう言ってパソコンのキーボードを叩く。


「ここってインターネット通ってたんですね」


 私は率直な感想を言った。


「酷い言われようだな」

「でも、いまだにテレビはブラウン管じゃないですか。あれどうやって見れるようにしてるんですか?」

「方法なんてものは色々あるんだよ。ほらこれを見ろ」


 浜野は私にパソコンの画面を見せてくる。そこには渋谷のスクランブル交差点の映像が映されていた。多分ライブカメラのアーカイブか何かだろう。


「こういうのはインターネットのどこかに残ってるものなのさ。明日香も世界に残したくないものは絶対にインターネットには載せないことだな。それで、よし時間はあってるな。あとはあんたをここから見つければ。いた。見つけやすくて助かるよ。」


 浜野が画面を指さした先に確かに私が映っていた。それにしても見つけやすいとは何事か。私のような格好はどこにでもいるようなものだと思うのだが。


 そう思いながら映像を見るとおかしなところがあった。あの男女が映っていないのだ。だが、あの男女がいた場所にはぽっかりと人の穴が開いていた。


「浜野さん!ここ、ここにいたんです!」

「ああ、明らかに人の流れがおかしい。誰かいたと見たほうが自然だ。どういうことだ?」


 そう言い浜野は映像アーカイブの時間を進める。そこには誰もいない空間に対して慌てて人を追い払っている私がいた。もしかして他人から見ると私はこう見えていたのだろうか?もしそうなら恥ずかしい。というよりもこの姿を浜野にみられることにも羞恥を感じた。なんせ画面には何もない空間で変なことをしている私が映されているのだから。


 浜野は眼帯を外して映像を見ていた。彼の左目は本来人には見えない何かが見えるという。彼にもあの怪物の姿が見れるといいのだが。


「ダメだ。僕にも何も見えない。だが間違いなくこの人の流れはおかしい」

「私のことを信じてくれますか?」

「ああ、だがここまで何も視えないとはね。まいったな」


 浜野はそう言い椅子に深く座り込んだ。そして煙草の煙を吐き出す。それと同時にお香のような匂いが部屋に充満する。前に聞いた話だが彼の煙草は自分でハーブ等をブレンドして作った特製品だという。


「その男女がどういう経路でスクランブル交差点に来たかわかるか?」


 浜野は目をつぶりながら聞いてきた。


「いや、わかりません」

「だろうな。じゃあ渋谷からこれ以上情報を探るのは得策じゃないだろうな」

「じゃあ、辺見銘太のことを調べるとかはどうですか?」

「それしかないだろう。マイナンバーカードの画像、僕に送れるか?」


 浜野に画像を送ると彼は部屋の端から上着を取り出した。まだ風は冷たい季節である。彼が取り出したそれはローブのようにも見えた。


「ついてくるか?」

「どこにです?」

「辺見の住み家さ」


 そう言いながら浜野は事務所から出ようとする。私は慌てて用意を整え彼の後を追った。


 辺見銘太の住所は町屋駅から徒歩10分ほどの隅田川沿いの古い街並みの残る区画。そこに位置する古臭いアパートであった。部屋の前に着いたが表札は無く、人の気配は一切しなかった。


「ここで合ってますよね?」


 私は心配になり聞いた。浜野は少し離れてアパートの名前を確認してから、間違いないとうなずいた。


「最近は防犯意識から表札をつけないことも多い。にしても人の生活している気配を感じないが」


 そう言いながら浜野はインターホンを鳴らす。反応はなかった。ドアノブもひねった。鍵がかかっていた。


「ここからの事は外に漏らすなよ?」


 浜野は手慣れたようにドアの解錠をする。前にも見たことがあるが慣れすぎていると思う。この男は本当は探偵ではなく泥棒で飯を食っているのではない。そういった疑問が浮かんでくるほどだ。ドアを開けたとたん浜野の動きが止まった。


「どうしたんですか?」


 私も部屋の中を覗き込む。


 そこには何もなかった。


 家電も、家具の一つも、ほこりの被った床と照明以外何もそこにはなかった。


「これは──」


 浜野は慌てたように眼帯を外す。


「どういうことだ?ここ5年誰かがここに暮らした痕跡がない!」


 驚愕の事実だった。この住所には前に住んでいたのだろうか?


 違うようだった。隣の住民に聞いたところ、5年前に女性が入居していたが老人ホームに入るために引き払って以来誰もここに住んでいないという事だった。画像を確認してマイナンバーカードの発行年度を見ると去年だった。住所が嘘だったのだろうか?


 この辺見という男には自分の居場所を偽らなくてはいけない理由があったのか?


 なんにせよ私たちの調査はここで手詰まりだった。あたりの空も暗くなってきている。

あの男は一体どこから来て、どこへに消えたのか?化け物だけでなく被害者まで謎に包まれていた。


「明日香、夜も遅い。今日は帰れ。何かわかったら連絡する。」


 浜野の言葉に従うことにした。何が起こっているのか明らかにするつもりが謎は深まるばかりだった。



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