第21話 村の雰囲気
祭が消えた後、私はすっかり寝てしまっていた。多分無事な祭を見れて安心しきっていたからだと思う。次に目を覚ましたのは朝食の匂いが部屋に漂ってきたときだった。
すでに真夜は起きており、ご飯できたってという言葉を聞き私は急いで身支度を済ませ大広間に行った。
大広間ではすでに配膳されており、そこには私達3人のほかに12人集まっていた。
「おはよう明日香。これで村の全員や覚えとるか?」
おばあ様が言う。
おばあ様の横には私の家の隣に暮らして商店を経営していた十三郎おじいさんと、その娘かな恵とその旦那が座っていた。
「明日香ちゃん久しぶりやね。隣におるんが旦那の緑郎です」
「お久しぶりです。十三郎さんもお変わりなく」
十三郎は年を取りおじいちゃんという見た目になっていたが、かな恵は記憶と変わりない姿のままであった。
「夏樹さんもお久しぶりです奥さんの事は聞きました」
「明日香ちゃん久しぶり。僕のほうは二人の子供が出来て手がいっぱいだよ。かわいいもんだけどね。東京での暮らしはどう?」
「悪くないです」
「そうか。僕も子供が育ったら静岡にでも行こうかな」
と笑いながら子供をあやす夏樹さんは言っていた。
「幸三おじいさん!」
私は記憶よりも大分老けているが懐かしく思い駆け寄った。
「おうおう元気やのう。明日香や。今日山に行って鹿でも獲ってくるさかい楽しみにしちょれ」
「幸三おじいさんまだ狩りに言ってるの?」
「おうよ。もっぱら罠はわしがやっちょる。まあ、鉄砲はもっとるだけで息子の大吾にまかせておるがな」
大吾さんが私に目配せしてきた。妹の梨沙さんは右手を骨折しているようでギプスをしていた。
当然の事だが祭はその場にいなかった。真夜の隣に座り、みんながワイワイと食事を始める。
「ねえ、真夜さん。梨沙さんに睨まれているけど何かした?」
「うーん心当たりはないよ?でも、あのケガどうしたって?」
「聞いてないけど。何か転んだとかじゃないの?」
「ふーん?」
何か真夜には思うことがありげであった。
「この村には若い者が多いですね」
浜野がそう問いかけた。
「まあなあ。過疎化には負けてられんよ」
と幸三おじいさんががははと笑いながら言う。
「といっても若い者は結婚を機に戻ってきただけの人も多いじゃないですか。今後はどうなるものか」
夏樹さんがそう言う。
「違いないね」
と西おじさんが返した。
村のみんなは活気があるようだった。ここだけの空間を切り取ると愉快な集まりであった。
しかし、よく見ると笹見さんと緑郎さんは配偶者と話すだけで村になじめていないように思った。この雰囲気は感じたことがあった。私と祭の父も馴染めていなかった。そうだったのである。今ここに来て幼いころに感じた違和感というものを感じた。
血のつながり。
この村ではそれが必要なのだろう
そのままワイワイとグロテスクな関係性が見え隠れした食事の時間は過ぎていった。
食事の後、みんなはそれぞれの家に帰っていった。私はスマホのメッセージで祭に昨日会った旨を2人に伝えた。何か、事情がありそうでどこかに行ってしまったと伝えた。
昨日の夜山を調査して二人は遠くから何かを見つけたということを言っていた。それについては、また後ほど調査に行きたいとのことだった。
また、梨沙さんの腕の怪我について何か心当たりがあるようだった。
「それで今日はこの後どうしますか?」
私は二人に声をかける。聞かれたくないことは祭の事だけなので、声に出して確認をした。
「僕はおばあ様に蔵の中を見せてもらえることになってね。色々と村のことについて確認したいかな。時間があればお山についても調べたいと思う」
「私はちょっと渡辺本家に預けているものを回収しようと思うけど。明日香はどうするの?」
どうしようか私は悩んだ。浜野と蔵に行ってもきっと何の助けにもならないだろう。なにかこの村を覆う何かを暴くには何ができるのか。私は私のいたこの土地に対してしっかりと目を向けていこうとおもった。
「私は、私の目でここを見たい」
思うがままに私は答えた。
二人は私の意向を汲んでくれるようであった。大広間から出ると皆それぞれの行き先に進んでいった。私はああは言ったものの何をするべきかあまりわかっていなかった。
「あの、明日香さんでしたよね」
後ろから私に声をかけるものがいた。振り返ると笹見さんがいた。
「はい、どうしました?」
「私の部屋で少しよろしいですか?少しお話をしたいことがあって」
「話したい事?」
「明日香さんは昔この村で育ったんですよね。すると何かわかるかもしれないかと思って」
「というと?」
「この村、何かおかしくないですか?」
私はこれまでいやな雰囲気だけを感じていた村だったが、やはり何かあるらしい。私は彼女の話を聞くことにした。
大橋笹見の部屋は大橋本家の西側の端に位置していた。隣は西おじさんが使っているらしい。おばあ様にはそろそろ家を建てないかと言われたそうだ。もし建てるとするなら私か祭の家があった土地だろうか?
部屋に入ると中は整理されていた。部屋の端にはベッドがあり、その向かいにドレッサーがある。部屋の中心にある机に向かい合うように私たちが座ったところで、笹見さんは話し始めた。




