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メルヘンがつまった不思議の国

 姉さんが『ひきこもり姫2』――不思議の国で生きることを決めて1年が経ち、先月ついに苺ソフトから『不思議の国の有栖』が配信された。

 『不思議の国の有栖』は、『ひきこもり姫』の続編――『ひきこもり姫2』の世界観を流用し制作されたVRMMORPGである。


 なぜ流用されたのか――元々『ひきこもり姫』は、苺ソフトが無印と続編を同時進行で制作し、無印の売り上げ次第で続編も世に送り出す予定だった。しかし、無印の発売以来、ひきこもりになる若者が急激に増加。それが理由で続編の販売はお蔵入りになった。

 その数年後、あたしは姉さんがひきこもりになった原因が『ひきこもり姫』にあること知り、苺ソフトの求人に応募。あたしはプロデューサーとしての将来性を買われ中学生ながら苺ソフトに入社した。入社後『不思議の国の有栖』の企画を押し通し、その結果『ひきこもり姫2』の世界観を流用することに成功した。


 その途中、実際のプレイデータが欲しいということで、姉さんをテストプレイヤーに選んだのが――なぜかウィルスとして転移し、リライトという世界を書き換える能力が使えて――。


 というのがこれまでの経緯。

 あたしが姉さんをテストプレイヤーに選択しておいてあれだけど、すっごい疲れた。デスネみたいな気持ち悪い口調で人類愛を語るピエロまで演じてさ。でも、ここまで作戦通り。

 姉さんに溜めてきた鬱憤を晴らすこともできたし、あたしとしては上々のできだ。


「なんだけど、はぁ……今日もいちゃいちゃしるなぁ。爆発しちゃえばいいのに」


 モニターに映し出されるウェディングケーキに象られた城――その一室。抱き合いながらベッドに寝転がる王子と王妃の姿があった。

 ラスボスである2人を倒しに訪れた男性プレイヤーもタジタジである。このプレイヤーもリア充爆発を願ったことは想像に難くない。


「あ、あの……イチャイチャしてるとこ悪いんだけどよ……」


「ボクたちを倒しにきてくれたんだよね? うん、大丈夫だよ。ボクは不思議の国の王子――シャルル・ルマール。よろしくね」


「私は不思議の国の王妃――アリス・H・ルマールよ。あなた、私とシャルルくんの愛の巣に無断で踏み込むってことは、データを消される覚悟はできるってことよね?」


「100人の精鋭たちを負かしてきたからなんだ! 俺が初めての全クリプレイヤーになってやる!」


「シャルルくんとの将来のためなら、どんなプレイヤーもバッドエンドに送ってあげる。――リライト」


 挑んできたプレイヤーを木っ端微塵に粉砕し、はじまりの町に転送する姉さん。ついでに彼のデータも初期化し、レベル1からの再スタートをプレゼントするなどやることがえげつない。


 姉さんは、ふふん、と鼻を鳴らし、シャルルくんの金髪を撫で上げた。シャルルくんは、碧い瞳を細めて、にこにこ顔ですごく嬉しそうに反応している。


「ありがとう、アリスお姉ちゃん。ボクを選んでくれて」


「あら、私の方こそ。ひきこもり姫だった私をあなたの王妃に選んでくれてありがと」


 姉さんが咲かせた満面の笑み。

 それを見れただけで――。


 姉さんをゲームに入れてあげてよかった。

 姉さんが"好き"の気持ちを理解してくれてよかった。

 姉さんをラスボスにしてよかった。

 姉さんがシャルルくんと幸せなゲームライフを送れそうでよかった。


 妹として、そう心から祝福することができた。



☆☆☆☆☆



 ――だれかを好きを教えて。


 ひきこもり姫がそう願い、動き出した物語。

 その物語は彼女が"好き"の気持ちを知って、"好き"を伝え合える相手を見つけたことで終わりを迎えることができました。


 そう、ひきこもり姫の(”好き”)は叶ったのです。

 それが例えゲームの世界にしかなかったとしても、ひきこもり姫が幸福でいられる場所であれば、(ゲーム)から覚める必要はありますか?

これにて物語は完結です。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました!

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