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マァメイドォル・チェインドライヴ -姫肴喰らいの首輪使い-  作者: 琉璃宿命
17.切り札

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第85話 四者

 九号機から順に、当時の共鳴者を並べる。

 犬吠埼可音いぬぼうざきかのん、女

 浮島桃路うきまとうじ、男

 雉鞍団子きじくらだんご、男

 猿田彦真備さるたひこまきび、男


 犬桃雉猿――鬼が島討伐パーティーかなにかか?

 四人とも、翼の一個上だとのことだが……


『八号機?

 新しくなったのか、檸檬の弟くんか、なるほど』


 そう言ったのは犬吠埼さんだ。

 全員、鮫人越しに大仰なジェスチャーというか、身振りをしている。

 枸櫞からすれば、海中で顔を拝めるわけではないのでまぁ、そのほうが助かるまであるが。


『テルクにいた時間が長かったってことかなぁ、今は直感でこいつを扱えるよ。

 十三号機の子は、前よりよく話すようになったみたいだね』

「――、そうか、知り合いでしたね」


 まだ闢くんが海軍の被験体だった頃のことだから、向こうから作戦行動以外で不用意な接触を避けたいのは必然だったろう。


「とにかく、全員の意識が無事に戻られて、よかったです。

 これから皆さん、どうなさいます?

 すり合わせなければならないことも、多々あると想うんです。

 《《伏馬先輩》》」

『?』

「僕から話すよりは、あなたのがスムーズでしょう」

『いいのか、俺はあいつらを好きなように利用するかもしれないが』

「……異論や補足があったなら、こっちから口を挟むかもしれませんがね」


 そうそう、伏馬翼とはこういうやつだったな。

 元から全面的に信用しているつもりはないが。


『龍宮探査から数年が経ち、いろいろ厄介なことになっている。

 先に伝えておくぞ、泉客那戯が生きていた。

 いまは俺たち全員に共通の敵だ、昔のよしみで手を抜いてくれるほど、甘いやつじゃない』


 翼がそう言って、四人からの反応を窺うが――、不思議と驚いているようでもない。


『那戯が敵、か……』


 最初に口を開いたのはまたしても犬吠埼先輩だ。


「驚かれないんですね」

『あぁいや、彼の性格なら知っているけれど、すると壱号機がここにないのも、そういう理由?

 目的は、セドナか』

「わかるんですか、犬吠埼さん?」

『ことあるごとに言っていたからね。

 あれはあれで、正直な生き物なのよ。

 ネーレイスを屈服させるだけならまだしも、人を滅ぼすなんて絵空事に本気でいるやつだから――とはいえ、困ったな。

 それっていま、美岬ちゃんはどうしてる』

「……向こうで待っています。

 テルクに来ても、彼女の身柄が利用されかねない」

『そう。人形だと言っていたのは、本当だったわけね。

 ずっと冗談だと想っていたけれど。

 無事な共鳴者を確認させて、私たちのあんな目に遭ったあと、グループは後継を手配したはずでしょう、天充くんのように』

『メンツはそんなに変わらん、今からテルクへ派遣できる共鳴者は少ない、先日までの戦いで、弐号機四号機五号機が使い物にならない、それに双子の役割はわかっているはずだ』

『てことは、琉稀が?』

『死んだよ、ネーレイスとの戦いで』『――、そう』

「――」


 枸櫞はまだ、彼女を取り戻すことを諦めていないのだが。


『相変わらずね、翼くん。

 そういう大事なことを、さらっと流そうとする……一皮剥けたかと思ったんだけど、気のせいだったか』


(水子級はこの時間軸では生きてるんだもんなぁ。

 それがある限り、この人がテルクへの執着から逃れることもない。

 それにこっちで珊瑚くんは、この人に――)


 怨恨など、ひとたび因縁つけて考え始めるときりがなくなるものだが、そうした人としての義理人情より、時間軸を跨いで俺がなにを取り、なにを捨てるべきか……翼がかつての仲間たちを取り戻したいまになって、すこし戸惑ってしまう。

 やることは変わらないんだけど。


「まだ終わらせるわけにはいかないんです。

 ヤヲ因子とテルクの海原の力で、那戯は歴史や事象を書き換える。

 本来、僕は琉稀さんたちが生きてる時間からやってきているんです」

『彼の八号機はこれまで、特殊なネーレイスを宿していた。

 神社姫シュラインノーブルと名付けられた――人形の覚醒とともに、鮫人がそれを取り込んだんだ』

『なんですって!?』

「問題は那戯が、八号機と神社姫の接触をなかったことにしたんです。

 その手段すら、定かでない」

『八号機は従来我々が扱ってきた鮫人とは一線を画するものだ。

 ネーレイスの力をいとも容易く取り込んでしまう、天充枸櫞《搭乗者》の資質もあるんだろうけどな……いまは妖竜の力を扱っているようだが、肝心な時に那戯がなにを仕掛けてくるかわからない。この瞬間にさえ、俺たちを追い込むことを考えているだろうよ』


 九号機はこっちをじっと見ている。

 顎に指まであてて。


『言われてみると、八号機、覚醒したというには些か大仰よね。

 その片翼?

 ネーレイスの力を取り込んだって。

 さっきまでネーレイスに取り込まれてたうちらから言われても、まぁ困っちゃうか』

「いえ、たぶん先輩方の反応が当然だとおもいます」

『テルクの王、ね。

 いっそこの場で競い合ってみようか?

 とんだバトルロイアルになりそうだけど』

「マジすか。マジすか???」


 犬吠埼は軽口のつもりだったが、ほかの三人は勝手の違うようだった。


『いや、わりと妥当な提案だ』

『浮島くん?

 流石に冗談――』

『鮫人とは、テルクの王権を競うものだろう。

 俺は自分が誰の言葉を択び、信じるかぐらい、自分で決める。

 まだ八号機の少年が、信用に足ると決まったわけじゃあるまい』

『いくらなんでも、枸櫞くんに失礼でしょう!?』

『――』

『ちょっと、話聞いてるの浮――!』


 十号機が、思念武器を取り出す。

 死神のそれを彷彿させる、巨大な鎌だ。

 龍宮塔の内壁を削り、八号機へ向かって跳びかかる。


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